「大変面白く観ました!」アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
大変面白く観ました!
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
今作を大変面白く観ました。
この映画『アングリースクワッド』は、主人公・熊沢二郎(内野聖陽さん)が、多額の10億円の脱税をしている橘(小澤征悦さん)から、詐欺師の氷室マコト(岡田将生さん)らと協力しながら納税のためのお金を奪い取るという物語です。
その橘からお金を奪い取るやり方や、主人公・熊沢二郎と詐欺師・氷室マコトとの出会いやビリヤードのトリックなど、今作は作品全体でどこかコミカルでポップな仕上がりになっていたと思われます。
その上で、主人公・熊沢二郎は、橘の脱税に関して元同僚で同期の岡本(矢柴俊博さん)を自殺で失っており、また詐欺師・氷室マコトは、父親が橘の捜査で逆に罪を着せられて逮捕されており、この映画には一方でシビアな根底が流れています。
このことは、今作の上田慎一郎 監督が、経験からも来る現実のシビアさを十分に体感的に知っている一方で、それでもそれだからこそ周りの人を信じている(信じたい)前向きな想いを持っている、ところから来ていると思われ、今作がコミカルとシビアさがしっかりと構成された映画になっている理由だと思われました。
そして、これまでの作品での重厚さを無くして気弱な主人公・熊沢二郎を演じた内野聖陽さんや、特に怪しい人物を演じさせたら光る詐欺師・氷室マコトを演じた岡田将生さんや、今回、本当は巨悪なのに作品に合ったどこか幅と軽快さと深みある人物造形として橘を演じた小澤征悦さんを初めとして、コミカルとシビアさの上田慎一郎 監督に応えた、それぞれの俳優陣の優れた演技があったと思われます。
そんな優れた俳優陣の演技の中で、特に(主人公・熊沢二郎の部下の)税務署職員・望月さくらを演じた川栄李奈さんが素晴らしいと、思われました。
川栄李奈さんが演じた税務署職員・望月さくらは、(主人公・熊沢二郎の家族を除けば)唯一と言って良い作中の私達に近い(少し勝気の面もありますが)普通の人物だったと思われます。
その普通の人物である税務署職員・望月さくらの、特に屋上での国税への移動が無くなった想いの吐露のリアリティある川栄李奈さんの演技は、今作の全体のリアリティを深める素晴らしさだったと思われました。
映画作品としての惜しむらくは、最後の地面師的な展開で、多くの私含めた観客がNetflixのドラマ「地面師たち」を見ているだろうで、リアリティの点でほんの少しだけの物足りなさを感じたのと、「コンフィデンスマンJP」的なラストの切り抜け方の既視感は、マイナスとしてはあったと思われます。
ただ、詐欺師・氷室マコトと父親との映画最後の面会場面や、主人公・熊沢二郎と橘との妄想含めた最後のやり取りの着地の納得感含めて、マイナス面を差し引いたとしても、俳優陣の演技の確かさと物語構成の分厚さ含めて十分面白く、上田慎一郎 監督のメジャー作品として次回も期待させる素晴らしさある作品になっていると、僭越思われました。