「正体がつかめない「内野聖陽」という役者。」アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 ガバチョさんの映画レビュー(感想・評価)
正体がつかめない「内野聖陽」という役者。
なんて面白い映画なんだろう。監督が上田慎一郎と知って、なるほどこういう映画を作る人なんだと納得した。実に単純なストーリーなのだが、面白さをとことん追求している感じが心地よい。真面目な税務署員が詐欺集団と協力して詐欺を働くというギャップのある設定がいい。ど素人の公務員が、なれない詐欺を一所懸命する姿がおかしい。なかなかやるじゃないかと応援したくなる。なぜそんな悪事に加担することになったのかの背景も分かりやすい。「怒り」や「罪悪感」というのは、世界共通の芸能テーマである。騙す相手が脱税王という悪者であるのも、「正義感」みたいなものが満たされて心地いい。最後のどんでん返しは、「カメ止め」で大きな効果があったように、上田監督の得意技なのかもしれない。
そして何よりも、役者がそれぞれの役割を活き活きと演じているのがいい。キャラクターが一人一人こんなに明確に立っている映画も珍しい。脚本の筋立てがしっかりしているのだと思う。内野聖陽の、日頃は冴えないけどやる時はやる公務員や、その部下で正義感が強くて上司にもきつく当たるが憎めない川栄李奈など、皆が役にはまっている。
上田監督は、「カメ止め」で注目を集めたが、アイデア勝負の作品であり、低予算をそのまま反映した安っぽさがあった。しかし今回は予算をしっかり使い、どこに出しても恥ずかしくない作品に仕上がった。今後の作品にも期待したい。
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