劇場公開日 2024年11月22日

「キマジメな公務員と天才詐欺師チームと脱税王がくりひろげるだましあいのテンポがよく、目が離せませんでした。全編とにかく楽しくて気持ちがいいのです。」アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0キマジメな公務員と天才詐欺師チームと脱税王がくりひろげるだましあいのテンポがよく、目が離せませんでした。全編とにかく楽しくて気持ちがいいのです。

2024年11月25日
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鑑賞方法:映画館

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 ゾンビ映画かと思いきや、その撮影隊の奮闘を描くコメディー映画で、観客を裏切るどんでん返しの連続で社会現象になるほどヒットした「カメラを止めるな!」や、最後に衝撃の種明かしが待っている「スペシャルアクターズ」など、奇抜な発想と巧みな脚本で観客を驚かせてきた上田慎一郎監督の最新作。
 2016年の韓国ドラマ「元カレは天才詐欺師 38師機動隊」を原作に、真面目な公務員と天才詐欺師が手を組んで脱税王から10億円を奪い取るべく奮闘する姿を活写したクライムドラマです。
 有名俳優の起用など、これまでと異なる点ももちろんありますが、その魅力は健在でした。今作も実に気持ちよく、我々をだましてくれます。

●ストーリー
 税務署に勤める真面目な公務員・熊沢二郎(内野聖陽)はある日、天才詐欺師・氷室マコト(岡田将生)の巧妙な詐欺に引っかかり大金を騙し取られてしまいます。刑事である親友の八木晋平(皆川猿時)の助けで氷室を探し出す熊沢でしたが、観念した氷室から「おじさんが追ってる10億円もの脱税が疑われる大企業の社長・橘大和(小渾征悦)を詐欺にかけ、脱税した10億円を徴収してあげる。だから見逃して」という驚きの提案を受けます。犯罪の片棒は担げないと葛藤する熊沢でしたが、自らが抱える”ある復讐”のためにも氷室と手を組むことを決意します。
 タッグを組んだ2人は、クセ者ぞろいのアウトロー達“どんな役にもなれる元役者”“強靭な肉体の当たり屋”“特殊な偽造のプロ”“母と娘の闇金親子”たちを集め、詐欺師集団《アングリースクワッド》を結成。綿密&大胆な計画を練り上げ、チームは壮大な税金徴収ミッションに挑むます。脱税王から大金を騙し取る方法として選んだのは、所有者に成りすまして土地を売る地面師詐欺。けれども相手は百戦錬磨の脱税王です。あと一歩で土地契約というところで、詐欺だと見抜かれてチームは大ビンチを迎えるのです。

●解説
 橘に大がかりな詐欺を仕掛けるため、熊沢が氷室の仲間だちと詐欺師チームを結成して計画を準備する様子は、さながら舞台の本番に向けて稽古を重ねる劇団のようです。
 実際に熊沢がチームの面々と会っているところを娘に目撃されてしまったとき、これは劇団の打ち合わせなんだとごまかすシーンがありました。
 詐欺師チームの内情は、監督自身も好きだという「オーシャンズ」シリーズのようなパラパラ感と、これまでも描いてきた、劇中で演じること自体の楽しさが融合して、実にワクワクする展開です。
 ところで内野も岡田も、この2人以外にいないほど役にはまっています。特に、ある復讐のために橘をだます計画に乗った熊沢が、忘れていた怒りを思い出すシーンは痛快です。チームが大ビンチを迎えて、予想外の方法で乗り越える展開は、まさに上田監督の真骨頂が発揮されています。

●感想
 上田監督が「カメラを止めるな」以前から温めていたという本作は、キマジメな公務員と天才詐欺師チームと脱税王がくりひろげるだましあいのテンポがよく、目が離せませんでした。全編とにかく楽しくて気持ちがいいのです。
 ピンチやアクシデントに負けず、相次ぐどんでん返しがいかにも上田監督らしいところ。詐欺が底なしの努力とチームワークで成り立っているのがよくわかりました。
 それにしても今回主役を務めた内野の役作りが素晴らしかったです。主人公の冴えない税務署員が登場したとき、この役者は誰なんだと全く内野だと気付きませんでした。『ブラックペアン』など恰幅のいい役柄のイメージが強かった内野だけに、本作での小市民ぶりに余りにイメージギャップが大きすぎて、段々演じているのが内野だとわかって、ビックリしました。
 それだけに小物な主人公が、大それた詐欺をやってのける展開は、落差が激しく感じられたのです。そのギャップのクローズアップさせたのが内野の演技の賜物といっていいでしょう。

流山の小地蔵