劇場公開日 2024年11月22日

「名も無い市民の怒れる復讐劇」アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 ヤスリンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5名も無い市民の怒れる復讐劇

2024年11月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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 カメラを止めるな!の上田慎一郎監督による久しぶりの劇場長編ということで、初日一回目から観てきました。物語の概要は、とある税務署の名も無き気弱な一職員が権力と癒着した脱税王から屈辱を受け、丁度その時自分を騙した詐欺師と知り合ってその仲間達と共に脱税王から大金を巻き上げるというお話です。雑な言い方をすれば、映画スティングやドラマのシロサギ、地面師などをごっちゃにしたお話といったところでしょうか。

 全体に流れるのは、真面目に生きている小市民が損をして、権力に癒着している特権階級ばかりが得をしているのはおかしいだろ?という怒りの感情です。アングリースクワッドとは、「怒れる部隊」てめえら許せねえ!って怒っている奴等って事。税務署長と結託して脱税をして、好き勝手している奴に仕置きするという現代の必殺仕置人が彼らなのです。

 もちろんやっていることは詐欺=犯罪です。だから褒められたことではないのだけれど、警察や検察が動かない以上、これしか方法が無いと税務署員の熊沢(内野聖陽)は覚悟を決めます。そこには過去に自ら命を絶った同僚の無念もありました。そして天才詐欺師氷室(岡田将生)にも同様な過去が…。

 ここから先はあまり詳しくは語れません。上田慎一郎作品の困ったところは、どの作品も全て大どんでん返しがあるので詳しく語るとネタバレになってしまうこと。なのでどうかその内容は劇場にてお確かめください。とにかくシナリオが非常に巧緻で、これでもか!と伏線が張ってあって、後からあれはそういう意味だったのかと驚くことが何度も。これは僕もまた見に行かなくてはいけないなと思いました。

 役者では内野聖陽が素晴らしい演技でした。いつもはちょい悪なイケオジが定番の内野さんですが、今回は気弱な一公務員という役柄を見事に演じきっていました。その気弱さが凄く良い!そして最後もしっかり税務署員として仕事を全うしますが、そこが最高に気持ちいいのです。この映画のカタルシスは、騙すこと以上に真面目な人間が職務を全うすることなんだと感じました。

 ここ数年、日本は某政党の裏金問題で、それを取り締まらない検察&国税局に国民の怒りが爆発しています。どうかこの映画を観て、そのストレスを少しでも発散してくれれば良いな、と思いました。

ヤスリン