「怒りを糧に成り上がる者ほど、その栄華は短命に終わるのかもしれません」アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
怒りを糧に成り上がる者ほど、その栄華は短命に終わるのかもしれません
2024.11.22 イオンシネマ久御山
2024年の日本映画(120分、G)
原作は韓国ドラマ「元カレは詐欺師〜38師団機動隊〜」
脱税王から金を奪うために詐欺師と手を組む税務署員を描いたミステリー映画
監督は上田慎一郎
脚本は上田慎一郎&𠮷田悠子
物語の舞台は、都内某所(設定は東京都中野区の中野北)
税務署員の熊沢(内野聖陽)は、妻・佳子(金谷真由美)の頭が上がらず、娘・夏美(河村花)に揶揄されながらも地道に生きてきた
ある日、妻から中古車を買いたいと言われた熊沢は、妻の指定するサイトにて個人売買を行うことになった
電話の指示通りにそこに向かうと売主代理(重岡漠)が待っていて、一通り車のチェックを済ますと、電話の主に購入する旨を知らせた
訳あって姿を表せない売主のようで、現場に来たのは病気持ちの兄だと言う
熊沢は疑うこともなく、指定の口座に金を振り込んで車の元に向かうと、車も売主の代行者も姿をくらましていた
その後、熊沢は刑事の友人・八木(皆川猿時)に相談し、詐欺犯が出所したばかりの氷室ヒロト(岡田将生)だと判明する
金を取り戻すために彼を待ち伏せすることになったが、八木のいない隙に氷室の方から接触してきた
彼は、脱税王・橘(小澤征悦)をターゲットにしていると言い、脱税額を徴収しようと持ちかける
橘は熊沢の同期・岡本(矢柴俊博)と関わっていた経緯があり、署長の安西(吹越満)が黙認している男だった
そこで熊沢は氷室の提案に乗って、地面師詐欺の片棒を担ぐことになったのである
氷室は仲間集めを始め、変装師・白石(森川葵)、当たり屋・村井(後藤剛範)、道具屋・丸(上川周作)に声をかける
そして、軍資金のためにかつて騙した闇金の五十嵐ルリ子(真矢ミキ)を引き入れ、その娘・薫(鈴木聖奈)も加わることになった
彼らは、八王子にある邸宅に目をつけ、その売主になりすまして橘への接近を試みる
彼はクラブにあるVIP用のビリヤード場で賭けをすることが趣味で、そこに面識のある熊沢が「知人の紹介で来た」と言う設定で入り込むことになった
そして、勝負に勝って悔しがっているところで餌を撒こうと考えたのである
映画は、どこまで原作に沿っているのかはわからないが、今流行りの地面師詐欺に挑む熊沢たちを描いていく
映画のタイトルコールは2回登場するが、最後にそれを見た時にその意味が違って見えるようになっていた
このあたりはネタバレに直結するので書かないが、うまくミスリードしていたなあと思った
この詐欺が成立するとは思えないところにコメディっぽさがあるのだが、ネタバレしてから観ると、この事件の前日譚(ドラマではないよ)を観たくなってしまう
岡本がどのように散ったのかとか、安西とどのように関係を持つことになったのかとか、後輩・望月(川栄李奈)がどのような指導を受けて育ったのかなどに興味が湧く
どこまで用意して、誰と誰が首謀者なのかを知った上で観る2回目は、意外な伏線が張られていることがわかる
氷室が電話をしていた相手が誰で、写真テストの正否は誰が知っていてとか、ライダーのシルエットと意味深なキーホルダーなどが意外なアクセントになっている
また、殴られる氷室を庇うのは誰かとか、自然に見えるものと咄嗟に出てしまう行動もうまくシナリオに落とし込んでいたのではないだろうか
ともかく、嫌な奴がコテンパンにやられる映画で、しかも「底辺は怒りを持たないことです」みたいなセリフがブーメランっぽく使われているのは面白いと思った
いずれにせよ、できるだけネタバレなしで鑑賞した方が良くて、さらに知った上で2度目を楽しめる作品になっている
詐欺師の面々もキャラが立っていて面白いし、癖のある人物がうまく機能して立ち回っているのでストレスなく鑑賞できると思う
そして、最後にタイトルの意味を回収することができれば、至福の時間が味わえるのではないだろうか