「素晴らしかった」Back to Black エイミーのすべて 吉泉知彦さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしかった
エイミー・ワインハウスは亡くなってから聴いてあまりによくて今でもたまに聴く。冒頭、アコギで作曲している描写がある。独特の節回しは、作っている様子から話し言葉に節をつけただけのような作為があまりない感じがうかがえる。また、声が楽器のようで、本当に素晴らしくて天賦の才だ。これまで歌詞の内容は全く気にしていなかったのだけど、あまりにえげつなくて驚いた。エネルギッシュでポジティブでポップな印象の楽曲でも内容は被害者意識と自己正当化みたいな歌詞がけっこうある。
特にひどいのが、ブレイクの元彼女をクソみそに歌っているところで、好きだった女をあんなふうに歌われたらブレイクが出ていくのも当然だ。性についても歌うし、子どもに聴かせられない。ただ、本当に正直で素直な気持ちを歌っている。歌詞にもそれほど見事な表現をしてやろうというような気張りがなく、思いを丁寧に言葉にしているだけのような作為のなさがある。
感情の起伏が激しく暴れん坊だ。吉田豪さんの奥さんの関係のようで、ブレイクも持て余す。
才能がすごくて自信にゆるぎがない。半面、思い上がりがはなはだしい。しかし、それは才能を開花させるためには必要だ。ある程度思い上がりがあって、勘違いしていないと才能は花開かない。性格がいい必要もないし、孤独なのが当たり前だ。そして特に努力している風でもないのがかっこいい。抜群なセンスがあるからなのだが、奔放に生きて生活しているありのままで作品となり輝きを放つなんて、天才にしか許されない。
本当に子どもを欲しがっていたし、恋人を大切に思っていた。感情のコントロールができずぶち壊しにしてしまうのが悲しい。
吹き替えなのか、本当の音声なのか不明なのだけど、違和感が全くない。本当のエイミーが思い出せない。音楽が素晴らしかったし、たっぷり聴けた。