「エイミー・ワインハウスの歌とライブを楽しむというよりも、彼女の曲の背景を理解するための一作」Back to Black エイミーのすべて yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
エイミー・ワインハウスの歌とライブを楽しむというよりも、彼女の曲の背景を理解するための一作
2枚のアルバムを遺し27歳で急逝したエイミー・ワインハウスの半生を描いた一作。
もちろん主演のマリサ・アベラの渾身の歌は十分聴きごたえがあるんだけど、本作は音楽とライブの臨場感を体感するよりも、彼女が遺した曲の背景を明らかにしていくことに重点を置いています。
作中でもエイミーが明言しているとおり、彼女の綴る歌詞は自らの体験を色濃く反映しており、どんな体験が彼女にこの詞を書かせたのかを知ることは、同時に彼女がどう生きたのか、を知ることにも繋がっています。裏返していくと、有名になるにしたがってより良い曲を求めるファンの期待に応えようとすると、曲作りに見合った経験に迫られることになり、実際彼女は活動の場をイギリス・カムデンから米国へと発展させるにつれ、心身の均衡が取れなくなっていきます。
彼女は身体中にタトゥーを刻んでいますが、作中でたびたび登場するタトゥーの施術場面は、音楽アーティストとしての外観に自らの記憶を埋め込んでいく作業を半ば儀式的に行っていたことを示唆しているようです。
映像的には、カムデンの終始曇天気味だけど柔らかい光、どことなく暖かさを感じる暗がりの描写は素晴らしく、エイミーが度々舞い戻りたくなる気持ちもよくわかりました!
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