「誰でもファミリーヒストリーやナイトスクープが作れる現状」パドレ・プロジェクト 父の影を追って regencyさんの映画レビュー(感想・評価)
誰でもファミリーヒストリーやナイトスクープが作れる現状
不惑を超えたハーフのお笑い芸人武内剛が、幼い頃に生き別れたカメルーン人の父を捜しにイタリアへ向かう旅を自ら記録。当初はCXの番組で密着予定もあったというだけあって、彼のバックボーンや売れない芸人という境遇も相まって、実にドキュメンタリー向きの題材だ。
被写体自身も知らない生い立ちを辿る番組だと『ファミリーヒストリー』や、時おり『探偵!ナイトスクープ』でもそうした依頼案件がある。いずれもテレビというメディアの強さがあるから顛末(「オチ」とも言い換えられる)に結びつきやすい。しかし本作はクラウドファンディングと武内の自腹で製作費を作り、いわばぶっつけ本番状態で捜索しているのがポイント。
ネタバレこそしないが、捜索の顛末はアッサリしている。ただ本作は、クラウドファンディングというシステムと目的を果たすという執念があれば、誰でもファミリーヒストリーやナイトスクープが作れるというお手本にもなっている。もっとも、被写体が観る者の興味を惹くほどのバックボーンの持ち主でないと成立しづらい、というのもあるが。
2つの番組のマンネリ化が顕著となっているのも、YouTubeやSNSで誰でも発信者=表現者になれる現状の裏返しなのかもしれない。
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