「猫好きならOKで、さらにポストや電柱が会話しても良いなら大丈夫」チャチャ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
猫好きならOKで、さらにポストや電柱が会話しても良いなら大丈夫
2024.10.17 MOVIX京都
2024年の日本映画(108分、G)
気ままに生きているデザイナーに興味を持つ青年を描いた恋愛映画
監督&脚本は酒井麻衣
物語の舞台は、都内某所
デザイン事務所「Edge」の社長(藤井隆)に気に入られて採用されたチャチャ(伊藤万理華)は、先輩社員たちから妬まれるものの、凛(藤間爽子)だけは「社長との関係」を気にしていた
凛は密かに社長のことを想っているのだが、人付き合いに苦手な凛は思い切ったことはできない
ある日、仕事の合間にビルの屋上で休憩していたチャチャは、同じビルの一階のレストランの店員・樂(中川大志)と鉢合わせてしまう
樂はその店の上司らしき人(福山翔太)に連れ戻されたものの、その際に店の鍵をその場に落としてしまった
それを見つけたチャチャは店に返しに行くものの、樂との距離を縮めるには至らなかった
その後、チャチャはわざわざ「自分が拾った」と言うために樂を待ち伏せし、さらに「お礼」をねだり始める
チャチャには「お礼シミュレーション」というものがあったのだが、儚くもその夢は潰えてしまい、距離が縮まる気配はなかった
そんな樂は、向かいのビルにある語学教室のピオニー(ステファニー・アリアン)に恋をしていて、チャチャのことには興味がなかった
だが、押してくるチャチャを拒絶することもなく、樂は都合の良い女とばかりに一緒に暮らし始めてしまうのである
映画は、チャチャの奔放さに憧れる樂がいて、彼はチャチャに感化されるように生きたいように生き始める
それが、想い人ピオニーの恋人・護(塩野英久)を拉致監禁することに繋がっていく
このようなトンチンカンな物語の流れがあって、このテイストは後半になって「押し花と写真の会話」とか、「電柱とポストの会話」などに発展していく
護を逃すために樂を傷つけるチャチャだったが、樂はその報復などはせずに、普通の生活に戻っていったりするので、あくまでも「童話のような世界」だったのではないだろうか
この不思議な世界を受け入れられればOKだが、意味不明な感じにも思えるので、何を見せられたのかわからない部分も多いように思えた
いずれにせよ、自由気ままに生きるチャチャはほぼ他人の迷惑にはならないのだが、樂の自由気ままは人の自由気ままを奪うことでしか成立していない
その歪さがテーマではあるものの、罪に対する罰というものもないので、チャチャが樂を許す(実際にはどうかわからないが)ように見えるシーンなどは意図が不明瞭に思えた
チャチャの中で樂への想いというものは消えたと思うものの、最後にはどこかに旅に出てしまうし、本当に捉え所のないような物語だったのではないだろうか
伊藤万理華のファンなら見応え十分だと思うものの、そうでない人にはあまりオススメしようがないかな、と感じた