「純粋なるティーンズへ」僕らは人生で一回だけ魔法が使える R41さんの映画レビュー(感想・評価)
純粋なるティーンズへ
どこかのアイドルグループのための作品かと思ったら、端然とキャスティングされたものだった。
この部分が頭から離れず、見ながらも見たのを後悔していたが、そこにそんな意図がないのであればしっかりレビューできる。
この作品はティーンズに向けたメッセージだろうか?
若者たちの思考に、普遍的な考え方を与えるような言葉が散りばめられている。
放送作家の鈴木おさむさんの作品であれば、当然何かを仕掛けている。
それはおそらく「人の本心」だったのかもしれない。
自然に囲まれた美しい村 人口も少ないので18歳を迎える若者はたった4人という設定
彼らの名前に四季を忍ばせ、春を「殺した」
日本に昔からある考え方のひとつが、幸福と不幸のバランス
誰かの不幸の上に自分の幸福が成り立っているという考え方。
映画「みなに幸あれ」で表現されていたことを思い出す。
さて、
魔法とはいったい何だったのだろう?
実際、アキトを送り出した際にハルヒが魔法を使った。
それは「空」 送り出すにふさわしい笑顔溢れる空
こんなことに魔法を使うなんて、とても信じられない。
しかしこれは伏線で、生まれつき心臓病のハルヒを友達にしてくれたのがアキトだった。
アキトの門出 もう自分の寿命がほとんどないことを知っているハルヒの精一杯のことが、アキトを祝福することだったのだろう。
魔法とは本当にあるのだということをこのシーンで明確にしている。
一生で1回だけ使える魔法 しかも18歳から20歳になるまでの間しか使えない。
魔法会議を開く4人
「自分の欲のために魔法を使って何が悪い」
「魔法はズルか?」
「魔法は純粋な力か?」
魔法の使い道を真剣に考えるものの、自分の「本心」がうまくわからない。
「命にまつわることには使ってはいけない」
ナツキの父が使った魔法 お腹の中の赤ちゃんの健康回復
この命にまつわる魔法によって、心臓病で生まれてきたハルヒ ダム建設の再開 そしてアキトの母の病死
この不幸と健康に生まれてきたナツキのバランスが作られた。
誰もが憧れる「魔法」
彼らは大自然の中で生まれ育ったために純粋だ。
それ故、使えるという魔法の遣い方に悩むのだろう。
ここが割とポイントで、彼らの人間性が腹黒ければこの物語は成り立たない。
この純粋さは若者にあるものだとしてしまうことに是非は残るが、これは物語。
そもそも魔法は純粋な心がなければ遣えないというのが「定説」なのだろう。
さて、、
人の死 特に友人の死というのは、人の心の黒さを削り取って純粋さが浮き彫りになるのだろう。
この「死」についてアキトの父は「すべてのことに意味がある」と言った。
ハルヒの死によって、仲間はみんな純粋さを取り戻したのだろう。
純粋な願い でも人の命にまつわることに使えない魔法
3人は、曲をハルヒに届けたい ハルヒが一瞬でも目を覚ますように 桜の花びらを降らせてほしいと魔法を使った。
そしてジイの言いつけ通り、何に魔法を使ったのか「魔法文書」に記入した。
そこに見たかつての魔法は、どれも美しい村の自然を守るような願いだったというのが「オチ」となっている。
心の本心
わかっているようでまったくわかっていないこと。
失われる時初めてわかるもの。
余命いくばくもないハルヒの願いが、アキトの門出への祝福
ハルヒの死の直前に3人がしたハルヒのための願い。
本心とは、本心だけに心そのもので、何かが失われてしまう時初めて感じることができるものなのかもしれない。
つまり、その本心が何か知らずに生きている我々すべては欲の方がよく見える。
でもそれこそ、とても幸せなのだろう。