「ドライなユーモアと右往左往する物語」インスティゲイターズ 強盗ふたりとセラピスト 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ドライなユーモアと右往左往する物語
圧倒的に面白い!みたいな映画ではまったくないんだが、全然ヒロイックじゃない主人公たちと、愚かでカッコ悪い小悪党どもが織りなす珍騒動が、無愛想ですらある低温のトーンで描かれていく。本筋もあるんだかないんだか、寄り道したり弛緩したり。話を転がすよりも、キャラクターたちの皮肉なユーモアが漂うセリフのやりとりにこそ価値があるような作品であって、脚本も手掛けたケイシー・アフレックは『ミッドナイト・ラン』を引き合いに出していたが、ライトで軽妙な犯罪小説にも似たこのテイストはかつては映画の世界で一つのジャンルとして成立していたはずで、ケイシー&マット・デイモンコンビによる温故知新的なプロジェクトとしてかなり好印象を抱いた一本。定石をさらっと外してくるひねり具合は、ケイシーもマットも関わりの深いソダーバーグのっぽい趣きもある。
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