「堂本剛の泣きの演技」まる あたりさんの映画レビュー(感想・評価)
堂本剛の泣きの演技
当て書きされたという沢田を見ていると、堂本剛さんにハマり役でもはや沢田って剛さん自身では?と思うくらいの自然な演技。感情を露にしない役柄は表現が難しいと思うのだけど、周りの個性豊かなキャラクターとの対比もあって物語の主軸としてブレずに存在している感じ。
唯一感情を吐露するシーンで泣く場面があるのだけど、上手いなと感じた。感情が込み上げ、顔を赤らめながら涙がこぼれ、目の縁まで赤くなって感情が溢れた後、表情がぼんやりする……あぁ実際泣く時ってこうなるよなというのを演技で持ってくる。かつて上戸彩さんが絶賛した泣き演技を見れたのが嬉しい。
綾野剛さん演じる横山は、登場から奇天烈で面倒くさく絶対絡みたくない人物。売れた沢田への嫉妬も隠さないし、今日から俺が沢田、丸なら俺も書けるよ、と絡んでくる。
ただ嫌な気持ちにならないのは、横山の気持ちって誰しも多かれ少なかれある認められたいという気持ちの表れだから。ネチネチした嫌味ではなくストレートに嫉妬をぶつけているのが印象深い。
アドリブのシーンもあるとの事で、綾野剛さんのキャラクターへの理解度が横山という人物を憎めないキャラにしている気がする。
本意ではない形で作品(ただ丸なら書いただけ)が評価され、勝手に意味をこじつけられ、大衆から求められる沢田。「売れるためには求められるものを書くべきだ」と丸を描くよう迫る世間に悩み葛藤する姿は、芸術分野で生きる人に対して刺さる内容なのかもしれない。
荻上監督の以前のインタビュー(波紋)で、かもめ食堂が売れてあの作風が得意な監督だと思われているがそれは違うというような事を話されていたと思う。
舞台挨拶で監督自身は、自分自身は横山なんだと話されていたが、沢田でもあるんだろうと感じた。
見る人によって捉え方が変わる映画で、好き苦手がハッキリ分かれる映画だと思う。