まるのレビュー・感想・評価
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あなたの人生に突然訪れるかもしれない「幸運?」とそれに群がるクセ強な人たちのお話
大好きな「かもめ食堂」「川っぺりムコリッタ」の荻上直子監督の作品とあって、本日は映画「まる」を鑑賞。
主演は堂本剛くん、久しぶりのスクリーンで少し謎なキャスティングに思えましたが、映画を観終わってなるほど納得なキャスティングでございました。音楽も担当してたんやね。エンドロールの「街」いい歌ですよね。また脇を固めた個性豊かな隣人たちは、みなさん流石の演技でした。主人公沢田の淡々とした性格との対比が際立って映画を生き生きとさせていました。
私の気になったオススメ
クセキャラベスト3は、
1.やっぱり、片桐はいりさん
そこにいるだけで、もう面白い。抜群の存在感でクセキャラNo.1。
2.綾野剛さん
こういうすごく嫌だけど、なぜか憎めないヤツやらせたらNo.1。穴の向こうの演技で魅せる天才。
3.甲乙つけ難いほどみな同率だけど、久しぶりに観れて嬉しかったよNo.1で、小林聡美さんかな。
ストーリーはすごく好きで、本当は星4.5とか5にしたかった。星マイナス0.5したのは、ラストの沢田の見せ場に私の気持ちが残念ながら乗らなかった…。みんなは、あそこで感動できたのかな?私は、穴の奥から見える綾野剛さんの演技にばかり気を取られてしまいました。あれだけの可視部分で魅せられるって、すごい役者さんだなぁと感心しました。
私のグッとポイントは、
クセの強い、サブキャラたちの中でひときわ普通のいい人で際立っていた森崎ウィンくん演じるベトナム人のコンビニ定員の終盤のひと言。沢田が、「おまえほんまポジティブやな。」の答えに注目です。いい人あるあるで切ない。応援したくなる。いつか沢田の書いてあげた色紙がめちゃくちゃ価値があがったとしても、彼は売ったりしない、根っからいい人なんでしょう。
久しぶりにスクリーンで観た、片桐はいりさんや小林聡美さんもグッとポイントですな。帰って「めがね」や「やっぱり猫が好き」が見返したくなりました。
荻上直子監督が描く、少し奇妙でクセのある人たちが織りなすとびきりシュールで不思議な世界観が私は大好きです。誰もが簡単にアーティストを名乗り情報を発信できる昨今だからこそ、何が?いつ?どこでバズるか分からない。ひとバズりで人生変わっちゃう人だって少なからずいるでしょう。
そう思うと、まだこれからの人生、全く関係のない話ではない、かもしれない…🙄
もし、この先の人生
自分が主人公の立場になったなら?
あなたはどう立ち振る舞いますか?
もし、この先の人生
自分の周りに沢田が登場したら?
あなたはどのクセキャラに扮したいですか?
帰りの電車を待ちながら、
ふとそんなことを思いました。
消費と承認欲求
あっというまにもちあげられて、あっというまに飽きられる。
ものすごいスピードで消費されることの空虚さと、それでもその一瞬でもいいからだれかに認められたい飢餓感と。そういう話なのかなあと思いました。
堂本さんのふんわりとしたまるみと、綾野さんの痛々しいくらいの尖りかげんの対比がよかったです。
世界は、『まる』で満ちている。
なんともほっこりするような、ふしぎな味わいの映画でした。前衛画家のブラックなアトリエでこき使われている美大出の男が事故で利き腕を骨折したやけで、左手で描いたただの丸の絵が全世界で評価され、一躍有名人になってしまうお話しです。ただの丸の絵に美術館のお墨付きがついたことから、もっともらしい勝手な解釈や誤解が爆発的に広がり社会的ムーブメントになるのは、いまの社会への強烈なアイロニーです。今まで主人公を見下していた連中が一斉に手のひら返しをするのは滑稽で定石的だけど、彼を異世界に引き入れようとするアートディーラーや画廊の女主人は、メフィストのような不気味さがあります。そんな混沌とした世界の中でも、禅問答のような問いかけに対しても、自分を見失いそうで見失わない主人公のニュートラルな佇まいは、とても魅力的で好感が持てます。自分の才能のなさへの焦燥感に身悶えする隣人や格差への怒りを訴える元同僚も、丸の世界に閉じ込められあがいているアリのようで、監督の荻上直子の登場人物に対する温かい視線がとても心地よかったです。役者では、堂本剛が当て書きのようなハマり具合で、肩の力の抜けた受けの演技がよかったです。隣人役の綾野剛も、不愉快なキャラ一歩手前の絶妙の間合いが上手く、居酒屋のカウンターでの長回しのシーンでの感情の爆発はすごかったです。同僚役の吉岡里帆は、ちょっとダークで妖艶な雰囲気がゾクっとします。ひょっとしたら、マクベス夫人なんかやったらピッタリかも。
クリエイターなら痛く胸に突き刺さる作品
映画全体のテンポとしては非常に鈍重で、堂本剛演じる主人公“さわだ”も役柄なのか病んでいて歯痒さを感じた。
しかし、今の事象を所々に盛り込みながら様々なクリエイターの苦悩をうまく表現し優しくエールをくれる作品であった。
現代アートを事業と捉えているアーティスト(村上隆がモチーフ?)のもとで悩みながらアルバイトをしている若手、売れず世間のせいにして足掻いている売れない漫画家、自分で描いた作品の魅力がわからないままに世間に評価され、描けなくなる作家…自分の描きたいモノと世間が求めるモノとの違いに苦悩するところなど、どれもどこかにクリエイターなら痛く胸に突き刺さるものではないだろうか。
個人的にはエンドロールでアカペラではいってくる堂本剛の歌が良かった。悲しい物語ならば泣いていただろう。また綾野剛など俳優陣はみんな良かった。
油断する事無かれ!
監督を気にせず見てしまいエンドロールで荻上監督だと気付き納得、真面目で美しい映画です。
主人公演じる堂本剛も良いが脇役陣が良い、綾野剛の行き場を失い掛けた隣人の漫画家、行き場を失った同僚の吉岡里帆それぞれの人生が息苦しくも目が離せなかった、主人公がもがく芸術を越えた人生の真理を感じた、ターニングポイントに現れる柄本明演じる「先生」はもしかしてアートの神(死神?)なのかな。
◯
なんだそれ、と思いつつ、なんかいいなとも思ってしまった、◯、笑。芸術って怖い、笑。
変なお話だったーいつのまにか自分が自分でなくなっていく感じこわーでもまぁ改めて好きなことに向き合っていく感じいいですね。自分らしく生きよう。久しぶりに街聴いたけどイイ曲だった。
吉岡里帆は相変わらず好きだけど、あんな変な見た目にしないで欲しかったなーもっと普通にかわいいほうがいい、笑
大変面白く観ました!
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと今作を大変面白く観ました。
特に、主人公・沢田(堂本剛さん)の周りの、アパートの隣人で漫画家志望の横山(綾野剛さん)やアパートの大家(濱田マリさん)や沢田の高校の同級生で今は現代美術に投資している吉村(おいでやす小田さん)など、多くの人物がイラ立っているのが、現在の日本社会の空気を正確に現わしているようで良かったです。
主人公・沢田は自転車の事故で右手を骨折し、働いていた現代美術家の秋元洋治(吉田鋼太郎さん)のアトリエをクビになるのですが、その後に部屋で描いた円の描画が「円相」のアートとして世界的に認められます。
その後の、世間だけでなく、隣人の横山やアパートの大家や高校の同級生の吉村や現代美術家の秋元洋治といった周りの人々の主人公・沢田に対して手の平を返す評価の一変も、人間のいやらしさを表現していてとても良かったと思われました。
そして、沢田に対する手の平を返しながら、周りの人物の本質的なイラ立ちは内心で変わっていない表現も秀逸だったと思われます。
特にアパートの隣人で漫画家志望の横山の、アパートの壁を蹴破るなどの狂気的な危険性の描写は、現在社会のイラ立ちの象徴とも思える素晴らしさだったと思います。
ところで、(世間の周りのほとんどが沢田に対する評価を一変させるのに対して)沢田の「円相」が世間に認められてからも沢田に対して態度が変わらない人物が4人いたと思われます。
沢田に対して態度を変えなかった4人の内の2人である、公園の池でエサをやっていた先生(柄本明さん)と、沢田の円の描写をはじめに引き取った古道具屋の店主(片桐はいりさん)は、イラ立ちに満ちた他の登場人物たちの社会の中で、映画の中に主人公・沢田を含めた心の基盤を形成していた存在とも思われました。
沢田に対して態度を変えなかったもう1人に、沢田と秋元洋治のアトリエで同僚だった矢島(吉岡里帆さん)がいたと思われます。
矢島は、現代美術家の秋元洋治の搾取を沢田に訴え、立ち上がらない沢田に抗議の怒りをぶつけます。
そして矢島の世の中の搾取に対する怒りは、沢田が「円相」の作家として認められた後も留まらず、ついには沢田の「円相」の個展にグループで押し入り、沢田の「円相」にペンキをぶちまけ、世間に搾取の抗議のアピールを広めようとします。
個人的に矢島の言動は、理念に取りつかれ現実を見ないからこその沢田に対する(搾取の抗議という)態度の変えなさの一貫性だったと思われましたが、「円相」が独り歩きして浮かない感情を持っていた沢田にとっては、どこか救いの面もあったかもしれません。
沢田に対して態度を変えなかった最後の1人に、ミャンマー出身のコンビニ店員のモー(森崎ウィンさん)がいました。
ミャンマー出身のコンビニ店員のモーは、拙い日本語を小馬鹿にする日本人の客に対しても怒りを現わさず、いつも笑顔で前向きに振舞っています。
しかし映画の終盤で、いつも笑顔で前向きに振舞っているのは、そうでもしないとやって行けない本音が、モーからは吐露されます。
この映画『まる』は、現在の日本社会の人々のイラ立ちを正確に浮かび上がらせていると思われました。
だからこそ、そのイラ立ちを融和するために、沢田の「円相」が人々に評価されたのだとも思われます。
しかし沢田の「円相」は、一方で、沢田自身の実存的な創作とは関係ないところで評価されたのだと言えます。
沢田の「円相」は、イラ立つ人々を治める解決策にすっぽりとハマったから評価されただけで、沢田が創作したから評価された訳ではなかったのです。
なので、沢田が映画の最後に自ら創作した青い地平線の絵は、アートディーラーの土屋(早乙女太一さん)や画廊店主の若草萌子(小林聡美さん)には評価されず、あくまで沢田には「円相」が求められます。
そして、沢田は青い地平線の絵の上に「円相」を描き足し、そのキャンバスに拳で穴を開けて立ち去ります。
(その穴の開いた「円相」すら、90度角度を変えて評価されるという皮肉が加わりながら‥)
ところで、終盤の主人公・沢田の涙は私には唐突に思われ、そこは無くても良かったのではと思われました。
しかし一方で、沢田自身も自身の実存が認められない存在との想いの涙と理解はしました。
この映画『まる』は、実存的なそれぞれの実際の人間性が無視されている、現在社会の日本の人々のイラ立ちにまつわる映画だったと思われます。
そして私は、その現在の日本社会の正確で深さある捕まえ方の描写に、大変共感し面白く観ました。
やや内向的でもう少し展開あればとも思われながら、一方で今作は優れた秀作だったと、僭越ながら思わされました。
背中を優しくさすってくれる映画
劇的な展開があるわけではなく淡々と進んでいくので盛り上がりに欠けるかもしれません。
しかしキャスト陣の深みのある演技でいつの間にかずぶずぶと物語に浸ることが出来、
好きなことを、夢を諦めきれない葛藤が心に刺さり、それでいて背中を押すというよりさすって寄り添ってくれるような映画でした。
アップダウンのない作品だけど悪くない
気になっててやっと行けました☺️。
中弛みするような雰囲気もありましたが、個人的には面白かったですよ😁。
クスッと笑えるシーンもあり飽きもこなかったから良かったですよ👍。
表題にも書きましたが全体を通して一定の温度な主人公なので映画自体もココっ❗️みたいな盛り上がりはなかった、しかし主人公の沢田の知らない所で何気なく描いたマルが評価されて勝手に有名になっていくが本人はそんな事はうっすら情報は入るものの実感は中々わかないし現実味がすぐには来ない感じ(笑)、そのへんの表現かなシーンが前半にあたるのだろうか?物語は常にゆっくりベースでした。
後半に自覚も湧いたが騒ぐ周りには拒否感的な雰囲気あるし、最初に描いたやつ以外は受け入れてもらえないし(まだマルを描く時の気持ちが乱れていた❓ため)、その辺は上下したかもだけど、ここもゆっくりだからその感じはなかったな(笑)。
でもなんかこの雰囲気は好きだし、眠くもならずに鑑賞できました(笑)。
堂本剛さんが出てたからもあるかもしれませんが😆。
おいでやす小田さんも出演は知ってましたが、思ってたよりシーンが少なくて残念だった💧、絡みは面白かったし、演技も悪くなかったからまた俳優さんとしての小田さんも見て見たいです😁。
エンディングもMovie versionの「街」も良かった😆カッコいい歌声が劇場で聴けて、オリジナルもまた聴きたくなりました(好きな曲だし👍)。
終わった後にメイキング映像も今回はついてて、5分ぐらいでしたが撮影中の表情は監督さんの顔も見れて良かったです。
奇妙な話かもしれない…話 75点
予告からこれは不思議なストーリーだな気になるなぁとやっと観れました!いやー不思議な話!出てくる登場人物クセが強すぎて笑っちゃう!吉岡里帆さん目当てで見たぞ!!ちょっと闇を抱えている役もいいなぁ…でももうちょい見たかったぞ…!
【ストーリー】
堂本剛さん売れない絵描きのアシスタント、ある日交通事故にあってしまう。ふと○(まる)を描き、質屋に売りに行くと…怪しげなディーラーが家に来る…そこから主人公の人生が変わっていく…という話。
【感想】
芸能人と一緒のような気がしますね。売れたら周りが目を変えて寿司奢ってくれや!とか急に馴れ馴れしくなるとか。面白い。人間の欲望が見えてくるところが自分は1番面白いなぁと感じた。
主人公も100万円…200万円…とブツブツ呟く。仕事中なのに…それほど欲が出てきているのだろう。
周りを固める俳優陣も豪華で癖が強くいや面白い!柄本さん(池で鳥にパンをやっている先生)、綾野剛さん(隣に住んでいる迷惑住民漫画家)、森崎ウィンさん(コンビニバイトのミャンマー人)、地味においでやす小田(絡んでくるB組の同級生)、片桐はいりさん(質屋の店長)、小林さん(アートのオーナー、ぴったり役)、吉田さん(パワハラ美術家)とここまでスラスラ出てくるキャラの強さには驚いた!
テンポはゆったりでオチも無いので(オチ求めないで)すっと終わります。
サワダなのかツヨシなのか分からなくなる
テレビで見ていたツヨシくんと
映画の中のサワダのキャラクターが
違和感なさすぎて、
最初はドキュメンタリーのように映った。
芸術への才能が
素のツヨシ君にある(と思っている)ので
劇中のサワダが絵を描くことや、
物語の起点になる
まる(円相)を描くシーンにも
本物かも、と思わせる説得力もあった。
有名になり、
お金も得ていく過程での
周りのざわつきや、
当人の戸惑い、
知り合いが起こす変化など、
生々しいシーンの多くが、
サワダの体験なのか
ツヨシ君の体験と戸惑いなのか
これも良くわからなくなってくる。
今という時代を切り取った
映画だと思います。
皆、何者かに
一角(ひとかど)の人になりたいという欲はある。
ただその過程において、
どういうことがあるのかを
ある意味リアルに見せてくれる。
自分で「俺にはこんな能力がある!」
と叫んだところで、無理筋で、
見出してくれる人、
後押ししてくれる人、
応援してくれるファン、
等がいないと、
実は一角の人にはなれない。
そして大半の人は
一角の人にはなれない。
別にそれが当たり前なのだけれど。
鑑賞後の後味はとてもよかったです。
20%の蟻でも有り
予想していたよりも深く良い映画でした。
そして、監督が是非、堂本剛さんにと望んだのがよく分かります。Kinkiの特にファンというわけではないのだけど、堂本剛の飄々として、でも、物事の核心を捉えた日頃の発言が、この「さわだ」という男にぴったり。演技も自然で、久しぶりの演技の仕事とのことですが、良い役者さんですねー。これを機にもっと演技のお仕事して欲しいです。
さわだは、ひどく真っ当で、純粋で、でも、前面に出て行くこともせず、もしかしたらやる気のない人と思われてしまうかもしれず、それは秋元(吉田鋼太郎)のような人間からは取るに足らない奴、搾取して当然な奴に映るのかもしれない。そして、彼が変わった、秋元のようになったと見られたなら、矢島(吉岡里帆)のように、それを攻撃する人もいる。
意味などなくてもただ存在する、好きなことを名誉とか金とか関係なく(人に迷惑かけずに淡々と)する、それでいいではないかと心に訴えてくる映画でした。
本編後にメイキング映像もあり、役者さんてあんな環境で演じるの大変だな、と再認識。しかし、有名になった沢田が陥る状況って、異常に見えるけれど、アイドルの堂本剛は、実生活で経験済みなんだよなあ。それって凄いことだ。
キャストも堂本剛を筆頭にはまり役で、チンピラっぽい綾野剛、良い人すぎるミャンマー人の同僚モーさん(森崎ウィン)怪しすぎるキュレーターの早乙女太一(ほんとこういう役ハマる)、やり手の美術商(小林聡美)、謎の茶人(柄本明)、そして、古物商(片桐はいり)、全員最高でした。片桐はいりがエンドロールで流れて、え?どこに?って思ったら古物商!この古物商やってる男優さん、誰だっけ、絶対知ってると思ったのに、全然分からなかったよー
有る始まりを有る終わりで消す丸
この作品を、ある逸話を思い浮かべながら観てました。
小学生が夏の、海、空、入道雲、太陽、砂浜を赤一色で描いた絵。批評家、「彼は凄い。真夏を赤一色の表現。恐ろしい感性だ」小学生に「君は何故赤一色で?」彼「あっ、ごめんなさい、赤クレオンしか無かったんです」
主人公何かブツブツ言いながら丸を描いてましたが、古物商に高額で売れたと聞いた表情から、さほど意味も無く描きやすいから丸を描いていたんでは。結局、アーティストの才能は評論家の才能では、我々の評価は。古物商、あの世から、かまやつひろしさんが降りてきて演じてると思っていました。
今だに柄本明の先生、何者か分かりません。
淡々と始まって終わる「まる」
時間が出来たので鑑賞しました。
淡々と始まって、淡々と終わる。
ストーリー的にすごく盛り上がるとか感情が強く揺さぶられるとか、そういった類の映画ではなく、見る人にかなり解釈を委ねられているのかなと感じました。それこそ、現代アートのようです。ところどころ、くすっと笑えるところがありました。
不思議要素があるのですが、今一つどういうことか理解できていません…『世にも奇妙な物語』に近いものを感じました。
さわだはローテンションで、頭の中で考えていることと実際に表出される感情の少なさが、演じられている堂本剛さんの雰囲気と相まって不思議な魅力になっていたなと思います。ひさしぶりに見た堂本さんの演技、良かったです。
綾野剛演じる横山がかなりそばにいてほしくないタイプのヤバい人で笑いました。
今の日本の時勢をまるっと収めた荻上直子作品
社会的生物と言われるアリでも働きアリの2割は働かないらしい。よく働くアリが2割、普通が6割。しかし、よく働く2割のアリは短命だそうだ。わたしがはたらいている組織のレベルはまぁよく見積って下の中ぐらいなので、わたしを含めてよく働くアリはほんの一握りで、2割が普通、残りは働かない。それでもなんとかなってしまうから下から抜け出せないのだが、リーダーシップを取ろうとするものがいないばかりか、他の会社のスパイではないかと思うものが孤軍奮闘しているふりをして、上に媚びているアリ様。ミツバチの巣に偵察に来たキイロスズメバチに後継ぎの御曹司君は気が付かない。アリやハチの場合は女王を頂点とする家族社会で人間の会社組織とは異なるので、当てはめること自体がナンセンスともいえる。
芸術家とそれにぶら下がる美術商、画廊オーナーたちなどはもともと異なる種で寄生や共生関係ともいえよう。そうだ、人間の歴史はもともと搾取と寄生の歴史。よくて共生。家族間でもそんなことはいくらでもある。
売れっ子イラストレーターのアシスタントを首になった沢田。部屋に大きな水槽を置いてチョウザメみたいな動かない魚を飼っている。アリが部屋の隅で行列を作っている。列から外れて不織布の上を歩き回る一匹のアリの周りに刷毛で円を描く。アリが元の列に戻れないように通せんぼしていたのかもしれない。
怪しげな骨董屋(片桐はいり)に持ち込むと、店主にマジックを渡されてサインを入れろと。「さわだ」と書いたら、いつの間にか100万の値がつき、国立近代美術館に所蔵されるまでに。覆面アーティストの書いた円相図としてネットで騒ぎになり、バイトのコンビニ店が特定され、ファンが押し寄せる。まぁ、女子高生のひとりやふたりなら歓迎だ。
自分の絵が展示された美術館に行き、円の縁の絵の具に足を捕られ埋没したアリを助けようとして、作品に触るな💢と怒られる沢田。
大家のオバサンも滞った家賃なんかいいから、ずっと居てくれて良いのよ。その代わりに、ここに◯を書いて頂戴と手のひらを返してくる。
漫画家志望のアブナイ隣の住人(綾野剛)にとっては羨ましすぎる事態。隣同志の友達だから寿司奢れよとなる。アシスタントをやめて労働運動に目覚めた吉岡里帆(住宅公団の賃貸物件のコマーシャルにでてる)も駅前で「あたしだって寿司が食べたーい」と叫ぶ。
そういえば、廻らない寿司屋には30年ぐらい行ってないな。行くとしても有楽町角川シネマの上の階のス◯ローとかMOVIXさいたまの向いのがっ◯ん寿司ぐらいだ。
コンビニの先輩店員の役の森崎ウィンがとてもよい。しばらく見ないうちに(蜜蜂と遠雷ぶり)立派な大人になっていた。さすが、仏教国の旧ビルマ、ミャンマー出身。人間が出来てる。バイトをやめると決めた沢田に店の色紙にサインを貰う時もバーコードをスキャンして、自腹で買っていた。エラい❗
それにしてもコンビニも回転寿司もタコ焼きチェーン店も外国人の店員が多くなった。盆栽も茶の湯も外国で大会が開かれるまでになってしまった。
まるという作品に日本の時勢をまるっと収めた荻上直子の作品であった。
大阪城つくったの誰?
宇宙にも団子にも見える「まる」は、優れた作品が多様に解釈できる事を思い出させるが、凡庸な鑑賞者は自分の解釈が唯一無二だと思い込んで他の鑑賞者だけでなく制作者にすらそれを押し付けようとする。また、出資者は往々にして金で創造性まで買い取ったと思い込み、あわよくば自分も名声を得たいと願う。ペットとは言い得て妙だ。
主人公はどうやら名声には無関心で自分の創作意欲が満たされれば良しとする素朴なアーティスト気質の持ち主だが、芸術表現を極めると作品自体が語り始めて作者は匿名となるらしいから、アートの王道を歩んでいるのかも知れない。
…などという事を監督が言いたい訳では無いと思うものの、「表現」というものについて色々考えるきっかけになった。
【とても日本を感じる】
劇場に人が入っていないのも納得だ。TV放映を優先しているのか、制作自体がTVメディア産業全体を捉えて描写されているように感じる。映画で映えるとは思えない剛ちゃんを、芸術と消費の境目を彷徨う主役に据え、綾野や吉岡が単純化された役を演じることで、映画的な体験よりも芸能プロ的なキャスティングと演技が目につく。
物語は、アリとの戯れから生まれた○が社会に流通し、「円相図」という意図しない形で社会的価値に置き換わり、やがて自身が○に囚われていく過程を描く。シンプルな円形がその形ゆえに人々の共感を呼び、一過性の流行として広がり、世界中の人々が便乗して消費していく様が印象的だ。
メディアが個人の小さな行為を過剰に記号化し、消費していく様子は、綾野が街中に○を貼り付ける場面でピークに達する。アート作品が流通する過程で本来の意図や個人性が失われ、まるで道端のしょんべん封じの護符のように、街全体が記号で覆われていく...
コンビニ店員のモーや剛ちゃんが仏教用語を日々の精神安定のために口にする場面も印象的だが、どこか空虚さが漂う。『波紋』のように、精神安定としての宗教が顔を見せるものの、ただの口癖や表面的な記号として用いられ、深みがない。宗教を通じた積極的な行動も見られず、「やってられない」と言わんばかりに「諸行無常」を口ずさみ、その無力さが強調されている。
劇中のアリと開けられた穴は、『アンダルシアの犬』の歴史的な重要なモチーフだが、展開が限定的で冗長に感じた。アリや部屋間に開けた穴も、いつもの荻上ならもっと違う処理をしたのではないかしら。制作、物語からテーマまで一貫してTV向けに感じる。そういう意味でとても納得できる。
前作「波紋」かぁ、
不快モードに振れてるんですか、荻上監督。エンディングも、えっここでエンドリケリ? 哀れなる者たちのイタダキ? と一瞬むかっと来ちゃいました。序盤からコンビニ客とか綾野剛とかおいでやすとか不快さに身悶えする位でしたが、バンクシー揶揄ぽい所や蟻みたいなエンドリケリとか興味深い場面も多かった。
ちょっと上手く畳めなかった印象、本編後流れたメイキング映像はいい雰囲気そうな現場でした。
剛くんの妙
気まぐれに書いた○が知らないうちに社会現象に……という奇想天外な物語。
○はあまりに単純すぎるかもしれないが、現実でも似たような事例は多々ありそうなのが面白い。
主人公が良く言えば朴訥とした、悪く言えば無気力な青年である点がリアリティに拍車をかけている。
剛くんの独特で絶妙な空気感がこの世界観には必要不可欠だと思わせる名演でした。
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