「スカーの闇堕ちの理由を描く作品なので、ちょっと違うという声もわからなくはないかも」ライオン・キング ムファサ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
スカーの闇堕ちの理由を描く作品なので、ちょっと違うという声もわからなくはないかも
2024.12.31 字幕 TOHOシネマズ二条 IMAX
2024年のアメリカ映画(120分、G)
超実写『ライオン・キング』の続編にて、前日譚を描いた動物映画
監督はバリー・ジェンキンス
脚本はジェフ・ナサンソン
原題は『Mufasa:The Lion King』で、「Mufasa」はケニアのマンサ語で「王」「リーダー」という意味
物語の舞台は、タンザニアにあるプライド・ランド
そこには、かつてはぐれライオンの子どもだったムファサ(アーロン・ピエール、幼少期:ブレイキン・ランキンス&ブレイリー・ランキンス)がいて、ある事故によって両親と逸れてしまっていた
そんな彼を助けたのがのちにスカーと呼ばれるようになるタカ(ケルヴィン・ハリソン、幼少期:セオ・ソモル)で、ムファサはタカの両親に育てられることになった
映画は、このムファサの幼少期の物語を、のちに友人となるマンドリルのラフィキ(ジョン・カニ、若年期:カギソ・レディガ)が、ムファサの孫キアラ(ブルー・アイヴィー・カーター)に聞かせる、という構成になっている
ムファサは父マセゴ(キース・デヴィッド)と母アフィア(アニカ・ノニ・ローズ)に育てられ、「ミレーレ」と呼ばれる楽園を目指していた
その道中で増水した川で生き別れになり、タカに助けられることになった
タカは一族の王オバシ(レニー・ジェームズ)の息子で、母エシェ(タンディ・ニュートン)は博愛の女性だった
ムファサはタカと競走して勝てばメスの群れに入れてもらえるという条件で戦うが、タカはムファサを助けるためにわざと負ける
オバシはそんなタカの優しさを危ういと思っていて、リーダーの素養を語り続けていく
だが、血筋だけでリーダーにさせようというオバシの目論見は、やがてタカを歪な成人へと育ててしまうことになった
そんな彼らを付け狙う存在がいて、それはホワイトライオンのキロス(マッツ・ミケルセン)が率いる一団だった
キロスは血筋だけで群れのトップに君臨するオバシを嘲笑い、彼の知らぬ間に大規模な軍隊を結成していた
オバシは一族存亡のためにタカとムファサを逃すものの、キロス一派の執拗な追跡に遭ってしまう
その後、雪山に入ってキロス軍団を撒くことに成功する様子が描かれるのだが、その過程ではぐれのメスライオン・サラビ(ティファニー・ブーン)と彼女の偵察隊ザズー(プレストン・ナイマン)と出会うことになった
タカはサラビに惚れ込むものの、サラビは自分よりも強く優秀なオスにしか興味を示さず、彼の恋愛はあっさりと破綻してしまう
だが、ムファサはタカの気持ちを優先して一歩引いていて、それが決定的な諍いの種になってしまう
双方の気持ちを確認し合うところをタカが見てしまい、それによって、タカは闇堕ちして、キロスの配下になってしまうのである
と、こんな感じの物語になっていて、スカー(タカ)はどうして悪者になったのかを描いていると言える
なので、映画の主人公はムファサだが、実質的な主人公はタカに思える
ムファサは優秀で能力があるので王になれるが、血筋だけで何も持っていないタカは何者にもなれない
この構図を好意的に受け止められるかどうかで、映画の評価は変わるように思えた
個人的には字幕一択の人なので、IMAX字幕版を鑑賞したが、本作は吹替版でも良いような気がした
あのビジュアルで人間の声が当てられているというだけで違和感が満載なので、それが英語か日本語かはさほど関係がない
字幕(英語版)にするかどうかは、誰の歌唱を聞きたいかという一点にあると思うので、その辺りを加味して選択しても良いのではないだろうか
いずれにせよ、映像はとても綺麗なので、それに集中するなら字幕のない吹替の方が良いと思う
実写だけどフルCGなので、リアルなアニメを観ているのと変わりはない
動きの多い作品でもあるので、アトラクション系でもOKだろうか
物語としては、三角関係が拗れて友情が破綻したというものなのだが、弱肉強食の世界だとムファサが勝つのは当たり前なので、せめて「戦って負けた」方が良かったのではないだろうか