HOW TO HAVE SEXのレビュー・感想・評価
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同意/不同意/翻意
リゾート地での卒業旅行の喧騒を通じて、ティーンの摩擦と背伸びの結末を描いた作品。
リゾートと若者と初体験という昔のおバカ系コメディを連想しそうな設定やタイトルではあるが、実際の内容には温度差があり、それを承知の上で観た方が良い作品である。
序盤から、16歳の少女たちが乱痴気騒ぎに飛び込む様を延々と見せられる。生きて翌朝を迎えられているのが不思議なくらいの彼女たちの過ごし方に、正直辟易した。
彼女たちの目的が進展していく様子もなく、物語の縦軸を探しながら鑑賞を続けていると、徐々に主人公タラが周囲のノリや旅先での解放感、そして「16歳ならこのくらい」的な根拠のないキラキラ願望に流される時に浮かない表情を見せるようになり、作品の本筋が見えて来た。
タラと友人とのやり取りと、タラと男性達のやり取りには、様々な拒否と同意の間のグラデーションが示されている。人間関係においてリードする側・される側の間で悪意の有無に関わらず生じる摩擦や行き違いと、それが心に傷を作る瞬間が様々なシチュエーションで描かれていた。
自分がすぐに連想したのは、MeTooブームと不同意性交罪の話題だった。
MeToo運動で過去の被害に対する告発が相次いだ時、告発者に対して「なぜその場で拒絶しなかったのか」という糾弾が頻出した。相手と上下関係があったり仕事の斡旋等の利害関係を理由に「嫌だけれど我慢したのだ」という答えに、納得しない人はいた。そういう人には様々なハラスメントや被害に対して後から声を上げる人の気持ちや、それがケアされるものであるという考え方、また本作のタラのように事前にも事後にも白黒つけきれないタイプの気持ちはわからないかもしれない。
また不同意性交に関する法整備がされた時、どうしたら合意を確信できるか、事後の翻意にどう対応すればいいか、とネット上で大喜利の様に交わされる投稿からは、後から「不同意だった」と言われる恐怖が見て取れ、本作の登場人物達の困惑と重なった。
本作は、これらの問題に共通する意思表示の難しさや認識の温度差を当事者の視点で描いた作品として、また心身の痛みを激しい嘆きや怒りで表現しないという点で目新しかった。
題材の着眼点や切り口が新鮮かつタイムリーなところは良いのだが、表現が尖り気味で勿体ない気がした。
騒音と酔客と肌色だらけの画面づくりは、観客の不快感をコントロールするための演出なのだとはわかっていても苦しい時間だった。また、タラ=被害者として問題提起をしているが、昼夜を問わない無軌道な泥酔ぶりや最初からワンナイト上等の姿勢を何度も見せられて、同情が失せる人もいそうである。
タラ役に小柄でハスキーな少女の記号そのものの俳優を起用していたり、タラが大人ぶる割にモラトリアムを終え社会に出ることを拒む素振りを描いたり、タラを年齢や自覚よりも未成熟に描きたかったのだろうか。そうであれば作り手はタラを通じて、大人の間際にいる子供の責任能力についても問うているのかもしれない。
ともすれば誰かのトラウマを抉りかねない内容でもあり、正直何かしらの警告が必要な気がする。封切されれば、コラムや制作者のインタビュー等で制作意図が語られる機会も増えるだろう。それらで準備をすることをおすすめする。
あの頃の焦燥と孤独を想起させる傑作
シネマ映画.comで鑑賞(字幕)。
共感しかない。青春時代の「苦さ」を思い出した。あの頃は確かにセックスの経験の有る無しが人の価値を測るひとつのものさしだった。当時未経験の私の心には焦燥があった。
そして究極的には孤独だった。だが観終わって、あの頃の自分に一言言ってやりたくなった。そんなの気にしなくていいんだよ、と…。決してひとりなんかじゃないんだよ、と…
経験するまでは、あんなにもキラキラして見えていたのに、実際経験すると自らの期待との乖離に戸惑ってしまう。それはセックスに限らず、他のことにも当て嵌まるように思う。
経験の有無が全てではない。それが人の価値を定義するなんてあり得ない。自分らしく生きていけば良いのだと肯定している作風が勇気をくれる傑作。ラスト・シーンも良い。
自分が孤独なのだと知る
大人になるって?
しっかり自分が孤独なのだと理解することなのかも。
テンションが上がりっぱなしで、何を見ても笑える。
はるか昔に身に覚えが…
もちろんこんなに派手なパーティーに参加したことは無いですが。笑
女子旅のローカル線のホームで、フトしたことから笑いが止まらず、
「ほら電車に乗るから、もう笑わないの!」と言いながら、笑いを止めようとすればするほど笑えてきて、自分がコントロールできない。
もはや何が面白いのかもわからないのに笑えてくる。
まさに「箸が転がっても笑う年頃」
そんな楽しい旅行で少女たちは大人になってゆく。
仲良し。いつも一緒。同じ気持ち。それが友達だと思っていたけれど、
“バージンはヤバイ”って誰が決めたの?
嫌われたくない。仲間外れにされたくない一心で無理して合わせていたのかも?
この先はいつも一緒ではいられない、それぞれ別々の未来が待っているし
共通の価値観にもズレが出てくる。
あなたと私は別の人間なのだ。
どの登場人物にも多かれ少なかれ心当たりがあると思わせる、心理の切り取り方が素晴らしい。
当事者だったころ、いわゆる“青春映画”が嫌いでした。
どれもこれも大人目線で、バカ騒ぎを“若気の至り”的にコミカルに描いたり、ノスタルジックに美化してんじゃねーよ!なんてムカついてました。
今ではすっかり大人になってしまって、
挫折、悩み、成長、どれも尊くてキラキラして見える…まんまと自分が嫌っていた大人に仕上がってしまった。
今から思うと、当時の私は映画から“何者でもない自分”を突きつけられるようで嫌だったのかも?
この映画で描かれる痛みと孤独は、決してそんなノスタルジーで片付けられるものではなく、とても生々しく新鮮でした。
この映画を見て当事者の年代はどう感じるのだろうか?
飲みすぎ
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