劇場公開日 2025年2月14日

聖なるイチジクの種のレビュー・感想・評価

全39件中、1~20件目を表示

4.0“妻と子を守るべき家長”が“異分子を抑圧する独裁者”に変わるとき。国家とのアナロジーを思う

2025年2月14日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

司法機関で勤勉に働く中年男性イマンが、昇進して調査官になる(さらに昇格すると判事になれる)。だが調査とは名ばかりで、反政府デモ逮捕者に不当な刑罰を下すための決裁を膨大に処理するのみ。市民から恨みを買う仕事のため、護身用の銃を支給されるが、これが自宅で行方不明になる。

イマンには妻と2人の娘がいる。家族を養い良い生活をさせることも、彼が働く動機になっていたはずだ。だが銃の紛失を契機に、家族の関係が大きく変わる。父は家族を疑い、猜疑心を募らせていく。娘たちがデモの現場で大けがをした友人を助けたことも、自身の愛国心と相容れない。紛失が発覚すれば出世がなくなるイマンは追い詰められ、犯人が誰かを白状させるため強硬手段に出る。

家族であれ国家であれ、“家”=共同体を構成する各個人は互いを尊重し、助け合い支え合うのが理想であり、リーダーはそうした理想の実現のため皆を導く存在のはず。だがいつしか、個々人を守ることよりも共同体の体制を維持することや体面を守ることが優先され、導くべき存在が独裁者に変貌する。イマンと家族たちの物語は、国民の自由を抑圧し異論を封殺する国家のアナロジーのように思えた。

各所で紹介、解説されているように、イランで反体制的な作品を作るのは文字通り命懸けの取り組みだ。167分という大長編ではあるが、イランの映画人たちの気概と願いを心して受け止めたい。

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高森 郁哉

4.0映画づくりの勇気と覚悟

2025年2月21日
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鑑賞方法:映画館

モハマド・ラスロフ監督が母国イランで秘密裏に撮影し、国外脱出後に完成させた作品とのこと。前半のほとんどが屋内シーン、後半は人里離れた荒れ地というのも、そうした事情からなのだろう。
現状のイラン社会に対する親子世代の意識の違いが大きなテーマだが、その間に位置する母親が前半の主役に見える。体制維持のため本意でない使命に苦悩する父親の姿も描いているが、影は薄い。
ヒジャブを発端とした抗議活動の実際の投稿動画と合わせて、姉の友人の顔の傷口から散弾を取り出すシーンは、痛ましく、胸が締め付けられる。銃が紛失して、疑われた母親と姉妹が、父の友人(おそらくこれまで多くの無辜に嘘の証言をさせてきた)の尋問を受けるシーンも、リアルで恐ろしい。
と、ここまでは傑作の雰囲気なのだが、テヘランを離れてからの後半は、トーンが変わって、父親の家族に対する狂気めいた行動が、まるでホラー(シャイニング?)のように描かれる。イランという国家と父親をダブらせる意図は理解できるが、ちょっと醒めてしまった。
監督はイランを脱出できたが、出演者やスタッフは国内に留め置かれて、取り調べを受けたとのこと。体制に異議申し立てする映画づくりが、いかに勇気と覚悟がいるものか、思いを寄せつつ、それは決して他人事ではないとも考える。

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山の手ロック

4.5マクガフィンとしての拳銃

2025年2月21日
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鑑賞方法:映画館

2024年。モハマド・ラスロフ監督。イランでまじめに宗教裁判所勤務の公務員を務めて来た真面目な男性と妻、その娘二人。男性はようやく調査員に昇進して判事への道も見えてきたが、ちょうどそのころ、イスラム教の女性蔑視に抗議していた若い女性が死亡したことをめぐり、警察の暴行を疑う市民たちの抗議運動が過激化。男性は司法の場で抑圧的な体制に従って働かざるをえなくなり、そのツケが家族の不和へとつながっていき、、、という話。
イスラム教独裁体制であるイランにおいて、もっとも抑圧されているのが女性。この物語では良識的だった男性もまた抑圧側に徐々に魂を売っていく姿が痛々しいが、その被害を家庭内の女性たちがもろにあびていく。後半ではお約束どおり一番若い少女をはじめとした女性たちの反乱がおこっていくのだが。
そこで、拳銃。自宅で拳銃を紛失した男性は出世に響く失態と考え、マッチョな家父長としての「本性」をあらわにしていく。その意味では拳銃は決定的に重要な意味を持つ。しかし、最終的に発射される銃弾は意味をなさないので、拳銃がなくなったこと、または、拳銃を持ち歩いていること自体で画面にみなぎるハラハラドキドキの緊張感のためのアイテムだ。まさにヒッチコックが言うところ「マクガフィン」。
実際の事件を元にしており、抗議運動の様子などはスマホで撮られたらしい実際の映像も多数引用しているようだ。イランの人々に光が指すことを祈りたい。

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文字読み

4.5ヒジャブと拳銃の象徴性。

2025年2月21日
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前半のヒジャブデモに伴う、家族に漂う不穏な空気感と、序盤に出てくる拳銃の悲劇が後半への繋ぎとなって一気に終盤に流れ込む展開。
前半はスマホで撮影された凄惨な動画の数々に緊張感ある展開。後半はテヘランからひとけの無い郊外にロケ場所が変わるあたりに諸般の事情が伺える。
イスラム法を下敷きに国や指導者と家長の相似関係を巧みに操りながらラストとデモ動画をセットにしたカタルシス。
気分としては映画2本分観た感じで、シナリオの旨さに感心してしまった。

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ラーメンは味噌。時々淡麗醤油。

3.0ラストは、観客は勿論、登場人物達も予測できない

2025年2月20日
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母国の弾圧に屈せず、映画を完成&上映にこぎつけたことには敬意を表します。
尺がもう少し短ければより説得力が増したと思います。

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sugar bread

4.5

2025年2月20日
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鑑賞方法:映画館

難しい

この監督は絶対観る!
と決めていたので、仕事帰りでも3時間耐えて観れました笑

イランの現状と
銃が無くなり
家族の仲の亀裂
父の本性、、、

3時間で最初の印象と最後の印象が変わる映画ですね

テーマは一貫してます

是非皆さん観てほしい

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アプソ

4.0なんとも苦しい映画

2025年2月20日
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素晴らしいの一言に尽きる。前半は国家の不条理を描きこんなにも大変な国家は嫌だな〜と思っていたが、後半からは家族のたった四人で国家のなぞりを見せている凄いメッセージ性の高い作品。
監督は国外追放されて遠隔で一部を演出したと聞いてそれも凄い。
生きるか死ぬかで映画を撮影して公開するのは、こんな国家ないだろう、自分の国ではないだろうと思わせといての家族が国家。
身に沁みて日頃から生きなければならない。

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るい

4.5衝撃的な面白さ。再び地獄に向かう世界を想う。

2025年2月20日
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鑑賞方法:映画館

イランの政体は単純な宗教的強権国家ではない。憲法はもちろんあるし直接選挙も実施されている。一応、三権分立も形作られている。ただ最高指導者(現在はハメネイ師)が君臨し、監督者評議会とか公益判別会議とかイスラム法に基づくジャッジメントを執行する機関が三権に常に介入する。
しかしながら世俗勢力と宗教勢力が常に妥協を図りつつ、わずかづつでも世俗化が進んでいくのがイランらしい現実主義ともいうべきものであってアフガニスタンのタリバン政権やサウジアラビアの王権主義とは異なる。
この映画も最近のヒジャブ闘争を下敷きにして(実際の映像もかなり使われている)イラン社会の分断を描く。ヒジャブ闘争では何人もの若い女性が命を落としておりマサ・アミニさんの名前は実際に映画でも取り上げられている。なお、イマンが隣の車線に停まった車中の欧米風身なりの若い女性をじっと眺めるシーンがあるが彼女はやはりヒジャブ闘争で命を落としたニカ・シャカラミさんによく似ている。監督からのメッセージというべきものだろう。
さて、イマンは検事局に勤めていて調査官に昇格した。「判事に昇格する」との翻訳は恐らく間違いであって予審制度があるのだから予審判事を目指しているということなのだろう。公開の裁判を経ることなく死刑まで宣告できる訳で(上訴は一応できるようだが)恨みを買ってもおかしくはない。一方でSNSが爆発的に拡散し、仮想敵を勝手に設定して何の権限もないのに私的制裁を加えようとする動きが世界的にものすごい勢いで増えてきている。(黒沢清の「クラウド」を連想した)
イマンはその対策として役所から銃を持たされるのだがこの銃が家の中で見当たらなくなることによってのっぴきならない立場に追い込まれる。
二重三重の板挟みとなった彼は家族を疑い目的も明確ではない支離滅裂の行動に出る。といったところで後半30分ほどは社会の分断が家族にまで及びまさしく地獄絵図が繰り広げられる。
我々はやはり地獄に向かっている。もはや逃げ道はないのかもしれない。民主主義国家ではこんなことは起こらない、と楽観的に考える愚を改めて考えさせられた。

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あんちゃん

5.0命がけの作品

2025年2月20日
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監督のモハマド・ラスロフは、本作制作後に禁固8年、むち打ち刑、財産没収の実刑判決を受けて、国外脱出をした。

ひとつの家族を通してイランにおける強権的なイスラム体制と、自由を求めて反発する若者という対立の構図が、ドキュメント映像を交えてとてもリアルに描かれている。

イラン社会の閉塞感がすごい。21世紀になっても未だに神による統治とかやってるの終わってる。500年前の中世かよ。
国民の思考停止振りと、神への依存と服従という脆弱なメンタリティが痛すぎる。ヘジャブかぶらされてる若者が反発するの分かる。一方で、無実の者を死刑台に送る体制側を象徴する父親の苦悩ぶりもちゃんと描かれてる。

政治宗教的な内容なんだけど、映画作品としても良く出来てて、切り裂くような台詞とかヒリヒリするような緊張感とか、エンタメとしても面白い。

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CR7

3.0前半と後半の急変についてはよくできてるが、最も印象に残ったのは恐ろしい場面かも。

2025年2月20日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

前半については、まあ、こういう系の映画によくあると言えばよくある、イスラムの政府の恐ろしい圧力に怯えてる恐怖、不自由さ、残虐さ、何が起きるか不安に緊張し続ける。
出世してもそんなに気分悪く過ごし、家族関係も悪くなるようなら、そんな仕事!続ける意味ある?!みたい思うがそれ続けることでどんどん病んでいくんだなあ・・・あんまり表情変わらないお父さんだから、内面は相当壊れていってたのか。
お母さんがイスラムらしく、凄い夫をサポートする真面目過ぎる妻で、娘についても頑固一徹かと思いきや、娘たちの言うことも何気に聞いていたり、黙ってサポートしてくれたりするところには表面には出さない(出せない)ものの、その社会の不条理や、何を優先すべきかわかっている強い母で感心した。イスラムの古い考えに縛られているだけなら、彼女のような行動はとれないはず。
押さえつけられていても、着実に、イランの変化は進んでいると思った。
途中の暴動がらみの場面、恐ろしすぎてめちゃくちゃ印象に残った。
散弾銃についてもよく知らなかったし。あんなの今でも警察やら政府が鎮圧用で人に向けてるなんて恐ろしすぎる。
後半、前半あっての流れではあるものの、だいぶ様子が変わってくるが、
前半の感じのままだとよくある映画のひとつになってしまうから、あえて、意外な展開にしたのか(つながりあるから意外ともいえないが)
もしかしたら、後半部分みたいな話も作ってみたくて、二つの感じを連結させたのか?ってくらい、タイプが違うのは、全体的に怖い話なのだが、ちょっと、おもしろ・・・
途中も、普段の自分たちの生活の中では想像できないような世界の話なので、先がどうなるのか怖がりながらも気になり、集中して見れた。
長くてトイレ行きたくなったがw
後半の展開のせいで、結構印象に残る映画になったような。しかしなんでそういう逃げ方するの?とか、娘の活躍がタフで賢過ぎてまるでアクションヒロインもののような感じに。
防寒のために透明フィルム被ってるシーンは、一見そこに放置されていた殺人死体かと思ってぎょっとした。
後で予告編見たが、予告編でよくある、つなぎ方がめちゃくちゃだし、この映画宣伝の説明で、この映画の内容はほとんどわからないので、気になる人は、迷わず見たらいいと思う。

映画の中でも、そんなことあり?ひどすぎる、ってことは写されているが、実際、この映画の関係者の自由が奪われているっていう、ありえないようなことも現実に起きているので、そういうのを知る人がひとりでも増えることは、意味あると思う。

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しゅま子

5.0決死の覚悟で作られた映画

2025年2月19日
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アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされ、日本でも先週から公開され(上映館がかなり少ないが)ジワジワと評判高まってるようなので鑑賞。かなりの長編でしたが前半はイランのちょっと豊かな家庭の情景とスマホ画面で差し込まれる実際のデモや暴動のシーンに引き込まれ、後半は拳銃紛失後の捻れた家族の関係が崩壊に向かうサスペンスに打ちのめされ、衝撃のラストで息が止まってしまいました。
夫のイマンは20年真面目に仕事し判事手前の調査官になり家族にも広い官舎に住まわせる事が出来たが、機械的に死刑を宣告するような仕事に神経をすり減らしてしまい、拳銃がなくなってからは家族の信頼を裏切る行為(友人に尋問させる等)がエスカレートする。妻のナジメは夫の体を心配し立場も尊重し娘たちに厳しくあたるが同時に母として彼女たちを守らなければいけないので葛藤に揺れる。長女レズワンは今起きていることに対し正しい意見が言える新しい考えの女性だ。次女のサナは子供だと思っていたが実は冷静に社会と両親を見ていた。彼女が拳銃を隠した理由は不明だがイマンが家族を疑い卑劣な行為を繰り返す中で自分自身の正義が芽生えてきたのだろう。結果、どうしようもない悲劇となるが、モハマド・ラスロフ監督が伝えたいイランの今の真実なのだと思う。
監督は国家安全保障関連の罪で実刑判決となるも命がけでイランを脱出し遠隔で映画を完成させたとのこと。又室内以外の街や車の中での撮影はロケなど組めないので全て盗み撮りとのこと。映画のスタッフや俳優も撮影終了後は逮捕リスクがあるのでイランから出たがナジメ役の女優は捕まってしまったらしいです(町山智浩氏のコラムより)。
決死の覚悟で作られた映画です。アカデミー賞獲って欲しいです。

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アベちゃん

5.0脚本が凄い

2025年2月19日
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ドイツに亡命し命懸けで撮った167分の大作
だが銃はどこにいったのかというサスペンスドラマとしても面白い。革命裁判所、過激なデモは遠い国のニュースの中の世界に思えるがスマホ映像の生々しさにどんどん引き込まれた。最初は親の立場で感じ、その後は娘の立場で思う。家族を養うためにメンタルやられながら父は頑張ってるんだぞという思いからの展開が凄い。男尊女卑な「昭和」を「女性」で過ごした人は共感部分も多そう

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木曜日

3.5ドイツ代表作品

2025年2月19日
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第97回アカデミー賞では“ドイツ代表作品”として国際長編映画賞にノミネートされた本作。監督の来歴をWikipediaなどで確認すれば判る通り、大変厳しい状況下でも諦めることなく「表現」し続け、いよいよ祖国を離れドイツへの亡命したニュースなどを聞いていたこともあり、非常に興味深く待っていた作品です。TOHOシネマズシャンテ、サービスデイ10時15分からの回はそこそこの客入り。
2022年にイランで起きたマフサ・アミニさんの不審死が発端となり、その後イラン全土に発展したイラン反政府デモが背景となる本作。作品内でも時より、当時SNS等で発信・拡散された動画を織り込みながらの映像は非常に生々しく、目を覆いたくなるシーンもありますが、作品を観終わればむしろ同国に対する「興味」がより深まること必然です。
良く練られた脚本はドラマ性が高い上に、当時のイランの状況や問題がよく解る内容で、リアリティーを強く感じさせるフィクションに仕上がっています。そして、作品内における女性、特に若い世代のセリフの一つ一つが芯を喰っているからこそ、旧態依然としたままのさばり続ける男性、権力、ひいてはイラン政府に対して「NO」を突きつける強い意志が感じられます。勿論、メッセージ性だけでなく物語りとしても非常に面白く、特に作品の中心となる一家それぞれのパーソナリティと、夫の「職業設定」が絶妙です。そして、夫・妻・娘たちそれぞれの群像劇で動き出すストーリーは、ある「事件」をきっかけに全方向に対して疑心暗鬼。中盤以降は「一体どこへ向かうのかと」とくらくらするほど予測不能な展開はスリル満点で、上映時間167分とやや長めの尺ですが、ダレることなく最後まで目が離せません。
勿論、イスラム教やヘジャーブ(ヒジャブ)のことなど、Wikipediaを斜めに読んだ程度のにわか仕込みで物は言えませんが、抗議デモにおけるスローガン「女性、命、自由」が強く印象に残る一方、どの世界にも共通する「ダメな男達」の存在に改めて、他山の石としなければ思う私は、モハマド・ラスロフ監督と同世代(正確には一つ年上)。。実に素晴らしい作品だと思います。

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TWDera

4.0「女性・命・自由」 2022年のマフサ・アミニの死(ヘジャブの着け...

2025年2月19日
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「女性・命・自由」
2022年のマフサ・アミニの死(ヘジャブの着け方を理由に道徳警察に拘束されて3日後に死亡した事件)をリアルに扱っているので「本物感」が強い。
公式の解説や予告編に「家の中で消えた銃をめぐって家庭内に疑心暗鬼が広がっていく様子をスリリングに描いたサスペンススリラー」とあるが、銃が紛失するのは伏せてた方が緊張感があって良かったような。
でも緊張感はしっかりあって終盤に向けて盛り上がる。
縦長のスマホ映像は本物だろうし、神が頂点の国イランだと私は死刑だろうから想像すると怖い。女性はさらに窮屈だろう。
この映画は、町山智浩さんの解説が参考になる。鑑賞前よりは鑑賞後に見るのが良いかも。"町山智浩 映画『聖なるイチジクの種』『TATAMI』2025.02.11"

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ナイン・わんわん

3.5現代に生きる、中東の人々の価値観

2025年2月18日
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怖い

知的

難しい

一昨年「聖地には蜘蛛が巣を張る」というイラン舞台の娼婦連続殺人をモチーフとする映画を見て以来、イスラム社会に興味が尽きないので、今回鑑賞

「蜘蛛が…」で違和感を感じたのは、イスラム社会での女性への圧倒的差別。職場でも家庭でも、女性は男性に従属することを求められる。どんなに能力がある女性であっても、である
そして「聖なる…」でも妻は夫に傅かんばかりに尽くす(途中、親父の身だしなみ&毛染め&シャワーシーンがあったけど、アレいる?)。大学生の長女と、高校生(?)の次女も、家庭では現代っ子らしく親に口ごたえするが、結局母親には逆らわない
ヒジャブをまとった姿は取っつきにくい感じがあるが、家で床に寝転び、喋りながら毛抜きで娘の眉を整える母の姿は何処の国も同じようで微笑ましい

ヒジャブを着用しなかったことで拘置所に連行直後に亡くなった女性(アフサ・アミニさん)に対する抗議デモが頻発し、国中が混乱しつつあるイラン
そんな時、裁判所の予審判事として昇進したイマン。その職務はでっち上げの起訴状を認めるだけの、警察組織の傀儡ともいえる仕事で、それへの不満を隠さない彼は上司には嫌われていて、ようやく認められた昇進であった

裁判所の廊下が画面の端によく映るのだが、引きずられていく収監者、警官に連行される人々、廊下のドアの前にじっと亡霊のように佇む女性(そこで待ってろ!とか言われたのか…?)、裁判所がちょっとしたホラー
裁判所のドアごとに謎の等身大の男性が佇むパネルがズラリと並んでいて、あれ何なの?中東の濃い顔がにこやかに笑っているが、お化け屋敷のよう…

昇進し広い官舎に移れると、妻(ナジメ)は素直に喜びを示すが、夫はこれからもっと意にそまない仕事をせねばならないストレスから逃れられない
反政府組織に狙われることを懸念し、親しい上司に護身用の銃を与えられるが、それを紛失してしまい…というのがメインの筋立て

そこに至るまでが意外と長い。長女(レズワン)が友だちを家に招く、和やかな談笑の居間で娘は密かにスマホで抗議デモをチェック、次女(サナ)学校の制服の注文に行く…日常のシーンが多くて、肝心の銃が出てくるまで1時間はかかったかな?
私達があまり見たことのない中東の人々の普通の生活なので飽きずに見られるが、さすがにちょっと尺長めかなぁ。途中少し眠気が…

銃の紛失が出世の汚点になりかねないので、夫は家族を問い詰め、妻は子ども達の持物を総ざらいさせてまで探す。そこから何故だか、親戚の尋問のプロの男性との面談させられ、それでも銃は出てこない……

作中のデモのシーンは全て本物だそうで、演出ではない民衆の怒りが空気感で伝わる。がんじがらめに縛る神権政治(神のご意思だ、で全て決められる政治体制)への抵抗運動と、アメリカのトランプ政権に象徴されるような大衆的民主主義が、この現代世界にそれぞれ同時に存在していることがまさしく驚異と感じる

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オパーリンブルー

4.0それぞれの言い分

2025年2月18日
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追い込まれていく様子が緊張感を持って続く
正常な感覚が壊れていくように
いとも簡単に愛ある普通の日々から遠ざかっていく家族

それが人ごとではない世界
その場所がある

実際の映像とあわせて受け止めるこの息苦しさも
まだまだ気楽なものなのだ

家庭、世代、宗教、国家
生まれた場所のやり方
生きていく運命と自由

小さな単位の崩壊も地続きで
取り返しのつかない狂気の派生は簡単だ

モスクで祈りをささげていた父の姿をふりかえる
いちばん大切なものはなんだったのだろうか

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hum

3.577点ぐらい。良かった。

2025年2月18日
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緊張感が続いて引き込まれて観てたけど、少ーしだけダレた167分。

体感的には、そこまで長さは感じなかったけど。

終わったあと調べて分かったのが、実際の事件がベースになっていること。

2022年イランにて、マフサ・アミニさんがヒジャブの付け方が悪いと逮捕されたあと死亡し、イラン政府へのデモに発展、このデモは海外にまで広がった。

全然、知らなかったです。

実際のデモの映像やマフサ・アミニさん本人の写真も使われてます。

イラン政府とデモ隊の衝突は、韓国の光州事件や中国の天安門事件を思い出しました。

監督はイラン政府を批判したとして実刑判決を受け、他国へ亡命し、カンヌ国際映画祭では12分間に及ぶスタンディングオベーションを受けたらしい。

評価は厳しめで、75~80点の間で77点ぐらい、星だと3.5~4の間で3.5で。

もう1回観ようかな…

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RAIN DOG

3.0政治的映画とみるかサスペンス映画とみるか。

2025年2月17日
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怖い

167分の長尺だが展開が読めずに最後まで緊張感をもって観ることが出来た。
その緊張感は最初と最後ではまったく違うもので違和感は大きい。
政治的メッセージを家族に落し込み女性の勝利とするにはチープ過ぎる結末だし、政治的背景をモチーフにしたサスペンス映画とするならば日本人にとっては政治的部分が強すぎてしまう。
最後の追っかけっことデモの映像の落差の大きさが違和感の正体だろう。
そのアンバランスがもったいない。

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ケージ

4.0身近な場所からの権威主義の崩壊

2025年2月16日
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悲しい

怖い

難しい

預言者『ムハンマド』が、
その下で啓示を受けたと伝えられていることから、
イスラム教では、無花果は聖なる木とされているらしい。

とは言え、本作の冒頭で示される一節は、
聖なる無花果の種が発芽し、
主となる木を巻き込んで成長
やがては主木を滅すというもの。

これはなんの寓意を示しているのだろうか。

2022年9月にクルド人女性の『マフサ・アミニ』が
へジャブの着け方を理由にテヘランで道徳警察に逮捕され、
まもなく勾留施設で意識不明に陥り、
三日後に病院で死亡した事件がコトの発端。

その後、イラン全土で、主に女性による
大規模な反政府デモが発生。
彼女たちはスカーフに火をつけて抗議の意を示した。

この一連の抗議と政府による弾圧の映像は
SNSにアップされ拡散、
本作でも使われている。

そこに映っているのは、
市民に対し散弾銃を水平射する治安部隊。

たとえ暴徒相手でも、
同胞に銃口を向けるのは躊躇いがあるものではないか。
それを何の迷いも無く行うことに戦慄を覚える。

テヘランで妻娘と暮らす『イマン』は長年の貢献が認められ
裁判所の調査官へ昇進。
給与も増え官舎も与えられ、
ゆくゆくは判事への昇格も見えて来た。

その一方、官に属することで
市民からは怨嗟の目を向けられ、
いつ報復を受けてもおかしくはない。

護身用にと支給された拳銃が、
ある日家の中で消えてしまう。

家探しをしても見つからず、
彼は妻と二人の娘に疑いの目を向ける。

貞淑な妻は二十年以上も献身的に夫に尽くしている。
一方の娘たちは女性が抑圧される国の情勢を不満に思っている。
三人とも、銃の行方は知らないと頑なに否定する。

そんな中、『イマン』の個人情報がネット上にアップされたことで、
彼は家族ともども身を隠す決断をするのだが、
次第に精神的に追い詰められていく。

〔シャイニング(1980年)〕を思わせる
「狂気に囚われた夫/父親」の構図がここでも現出する。

霊に取り憑かれた訳でもないに、
家族に対しての執拗な行為は
傍目でも異常な上に、目的すら判然としない。

やがて悲劇的な結末を迎えるも、
これは最小単位である家族に仮託し、
国の行く末を描いて見せたのではないか。

身内に刃を向けることの
普遍的な帰結を提示したものと受け取る。

三時間近い長尺も、序破急の流れが巧みで
冗長さは感じない。

制作上の制約もあろう、
登場人物も過少、
舞台となる場所も少ないことが
却って濃密な空気を生み、
観ていて息苦しくなるほど。

銃が消えた理由付けは
やや弱い気もするが、
この国に住まう女性の代弁としては成立する。

三界に家無しの状態を目の当たりにし、
国家とは宗教とはを
改めて考えずにはいられない。

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ジュン一

3.5抑圧

2025年2月16日
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難しい

イランの富裕層の家族だが、娘の反抗レベルが理解できない。夫の家族への抑圧はイランのイメージからは意外と低い。福祉関係の仕事経験があると日本でもこのレベルはあるかなとしか思えない。他人事ではないのかな。

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ショカタロウ