劇場公開日 2024年7月12日

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「恐らくコメディと思うが、他人事として笑えない(長文)」お母さんが一緒 やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5恐らくコメディと思うが、他人事として笑えない(長文)

2024年7月15日
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笑える

興奮

演出、設定、シナリオ、俳優さんの演技・・・どれもがなかなか秀逸で高純度の作品と思いました。演劇ベースのものを実写映画化したということで、リアル感がかなりアップしてますよね。

ただ正直言って、あまりにリアルを正確に投影しすぎてコメディなのに笑えません!

私は中高年の男性ですが、自分の半生と照らし合わせても思い当たる節が多すぎて、これらを受け入れば自虐的になるしかありません。終始笑いどころと思われるところを他の観客のタイミングに合わせ、顔を引き攣らせながら苦笑するのがやっとでした。

この作品を腹の底から笑えるのは、幼少期から家庭環境に恵まれて両親は健在、兄弟は居ない、または居ても仲良しさんで争いごとなんて皆無。ついでに言うと適齢期に順当に結婚し子宝にも恵まれ、その子供も経済的に独立して人生順風満帆な方じゃないでしょうか。後ろの席の同世代の中年夫婦がまさにそんな感じですよ(苦笑)

・・・なんて、まるで劇中の長女みたいな嫌味をいってしまい見ず知らずのご夫妻様に対しても偏見の目で見てしまい申し訳ないのですが、こんな気持ちになってしまう理由を整理してみました。

まず思ったことは姉妹3人(+婿候補)のキャラ設定に奇抜さがあまりなく、経歴、姿形、思考回路を含めて「善良で常識的な日本人の範疇」に余裕を持って当てはまってしまう、というところです。

つまり人として笑いどころである「ダメなところ」がまるで誇張されてないので逆に一人の苦労してきた人間として深い共感、シンパシーを感じざるをえません。そしてそれらが姉妹の喧嘩の中で「相互に否定されてしまうこと」を他人事として笑い飛ばすことができなくなります。

逆にこの人物の姿形、エピソード、演技などを極端に誇張、デフォルメし「他人事として笑わせること」に成功してるのが、「吉本新喜劇」だったり「サンドウィッチマンのコント」だったりします。
また誇張されたキャラや大胆な行動(新喜劇の人物なんてすべてこれ)に対してそれらを批評する辛辣な毒舌があったとしても、もはや、「言われても仕方ないやろ、こんなでは」と市民権を得ていて全く嫌味に聞こえません。サンドの伊達さんの毒舌で傷つく人、ゼロ%理論をここに提唱したいくらいです(笑)。

その点、この作品は俳優さんの能力が高く外見も演技も自然で違和感が皆無。しかも純粋な笑いに必要な演劇的なオーバーアクションは撮影の際、狭い室内メインだから大幅にスポイルされます。

その結果、現実度が増し共感は誘うが笑いにつながらず、口喧嘩の際の毒舌は時に関係ない観客に対しても牙を剥いてしまうことにもなるのです。

何作か演劇ベースの実写映画を観てきましたが、正直、評価は佳作止まりです。ことコメディ作品においては演劇→実写の変換作業において演劇独自の雰囲気を壊さないのは非常に困難なんだろうな、というのが実感です。

長文失礼いたしました。

やまちょう