WALK UPのレビュー・感想・評価
全3件を表示
【今作は、いつものホン・サンス監督の自身の姿を反映させたかの如きモノクロ会話劇と思いきや、そのスタイルは踏襲しつつ、一捻りさせた不思議な作品構成に驚く作品である。】
■有名な映画監督ビョンス(クオン・ヘヒョ)は、5年振りに戻って来た娘のジョンス(パク・ミソ)と旧知のインテリアデザイナー、ヘオク(イ・ヘヨン)を訪ねる。
ヘオクが家主のアパートは、地下がヘオクの作業場、1Fがレストラン、2Fが料理教室とレストランの個室、3Fが賃貸住宅、4Fがアトリエになっている。
そして、物語は各階ごとに独自の展開をして行く。
◆感想
・序盤は、いつものホン・サンス監督の自身の姿を反映させたかの如きモノクロ会話劇で始まる。
有名な映画監督ビョンス(クオン・ヘヒョ:ホン・サンス監督の超常連)は、娘のジョンスの願いでと旧知のインテリアデザイナー、ヘオクを紹介し、娘をヘオクの元で勉強させることが決まる。
ー このシーンは、いつものように登場人物達が、酒と食事を摂りながら会話を交わす姿を固定アングルで撮影している。だが、ここから物語進行はねじれて行くのである。-
・ビョンスが”ちょっと、知り合いの映画監督から呼ばれたから。”と言って姿を消す所から、シーンはビョンスが2Fで知り合ったレストランの店主ソニ(ソン・ソンミ)と3Fの賃貸住宅でちゃっかり同居しているシーンに移る。
そこでも、二人は会話しながら菜食の食事をしている。
・次は4Fのアトリエで、不動産業のジヨン(チョ・ヨニ)が通い妻の如く、テラスでビョンスと肉を焼いて食べている。そして、ジヨンは、彼のために朝鮮人参の蜂蜜漬けなどを健気に持って来るのである。
そこに、ヘオクが序盤とは打って変わったかのように、遣って来て1Fで喋っていた”4Fの人は良い人なんだけど・・。”と言う言葉の如く、呆れた顔でやって来るのである。
<今作は、序盤のいつもの会話パターンから、ホン・サンス監督が縦長のアパートメントの各階ごとに、微妙に連関した物語を構成した作品である。>
<2024年8月11日 刈谷日劇にて鑑賞>
ホン・サンスの会話劇炸裂!
主人公の映画監督のいい加減さ&ダメな感じを
会話劇で終始描き切っているのがが面白いです。
主人公がフロアを上がると付き合っている女性が変わっているのですが、
その時間軸とかよくわからないですし、
ラストの娘がコンビニから帰ってくるシーンには驚きました。
最初のシーンでいなくなったと思ったら、そうくるか!と。
ホン・サンス作品は『小説家の映画』で面喰いましたが、
それ以来気になる監督として、今回2本目にチャレンジしました。
観るたびに中毒になりそうな気がしております。
次作もきっと観ると思います。
「過去に出会った女たちを列挙してみた」みたいな、モテる男は辛いよにも見えてくる不思議
2024.7.1 字幕 アップリンク京都
2022年の韓国映画(97分、G)
娘のために旧友のアトリエに来た映画監督を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本はホン・サンス
原題は『탑』で「タワー(塔)」という意味、英題は『WALK UP』で「歩いて昇る」という意味
物語の舞台は韓国のどこか
映画監督のビョンス(クォン・ヘヒョ)は、娘ジュンス(パク・ミソ)とともに、インテリアデザイナーの旧友へオク(イ・へヨン)の自宅を訪れていた
ジュンスはインテリアデザイナー志望だったため、ビョンスは何かの参考になるのではないかと考えていた
へオクはアトリエ兼住宅に住んでいて、地下が作業場、1、2階は料理人のソニ(ソン・ソンミ)に貸し出していて、彼女は1階をレストラン、2階を料理教室として使用していた
3階は住居部分で、近々住人は出ていく模様で、4階がへオクのアトリエとなっていた
一通り建物を案内してもらった二人は、地下の作業場に降りる
そこから本編が始まり、階を上がるごとに「ビョンスの相手が変わる」という流れになっていた
章立てとまではいかないが、ドアを開ける暗証番号の音で場面が変わる感じになっていて、時間の流れもそこで動いている
地下で娘と話していたところで、ジュンスがへオクに弟子入りを志願するという流れがあったと思えば、次のシーンではジュンスはすでにどこかに行っていて、済州島で民宿の手伝いをしていたりする
いつの間にかビョンスはその建物に住み着いていて、ソニと恋人関係になったかと思えば、へオクの影響でベジタリアンにさせられていたり、最後には不動産屋のジヨン(チョ・ユニ)と同棲していたりする
この時点でソニとどうなったのかはわからないが、ラストではソニの店のウェイター・ジュール(シン・ソクホ)がいるのでまだ開いているように思える
だが、このシーンは時系列的に過去(起点)に戻っているように感じた
このあたりの説明はほぼないのだが、単純に見れば、女性を通じてビョンスがどんな人物がを知るという物語でもあり、さらに女性に影響を受けまくるのが男性という見方もある
これらが現実なのか、それぞれの住人と会ったことでビョンスが勝手に妄想しているのかはわからないが、ちょっと変わった作風になっているなあ、と感じた
いずれにせよ、モノクロ映像なのでカラーで見分けをつけることができず、しっかりと人物の顔と話し方(訳し方)を覚えておかないと、場面が変わった瞬間に「誰?」と混乱するかもしれない
展開はあってないようなもので、ほぼ会話劇なので眠気に誘われるのだが、一瞬でも気を抜くとついていけなくなるので、意外と集中力がいる映画なのかなと思った
パンフレットは超充実していて、話の流れはラスト以外書かれているので、おさらいをするにはちょうど良いのではないだろうか
あくまでも、ホン・サンス監督作が好きな人向けだとは思いますが
全3件を表示