劇場公開日 2024年6月28日

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「ホン・サンス的マルチバース?」WALK UP TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ホン・サンス的マルチバース?

2024年7月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今週公開作品で唯一、劇場鑑賞を決めたホン・サンス作品。サービスデイのヒューマントラストシネマ有楽町12時10分からの回の客入りはさほど多くはありませんが、割合的には若い方も結構いらしていた印象です。
いわゆるエンタメ作品とは対極と言えるホン・サンス作品。全般会話劇で構成されており、画面上で起こることは多くなく、物語りの展開の大半はその中の会話の内容から想像するだけ。また、その内容もよくありそうな話が殆どだし、どの作品も酒が入るとボヤキや愚痴が止まらなかったり、その場にいない人間を否定的に評したり。ただそれだけの内容なのについつい聞き続けてしまいます。
今作も裏切らない感じで進んでいく中、シーンが変わった「2章」、交わされる会話の内容から間もなく、時間の経過と共に「新しく登場した人」と「そこにいない人」について把握しつつ、徐々にこの後の大きな展開を予想させる雰囲気はオールドスクールな感じかと思いきや…
終演後も「これで終わり?」と戸惑いを感じて劇場を後にしながら、一体この作品をどう理解すれば良いのかと考えた私の結論は「これ、もしかしたらマルチバースということか?」。
こぢんまりとした4階建てのアパートメントという構造物を使い、章ごとに舞台となるフロアが変わった世界線は特に「3章」以降の展開におけるビョンス(クォン・ヘヒョ)周りの状況に対する「この世界観にしてはダイナミックで想像が追いつかないほどの変化」も、実はマルチバースだったということなら納得がいくかも?
なんて、冒頭で「エンタメ作品とは対極」と書き出した私をいい意味で裏切ったホン・サンス。この無理やりな解釈は間違っているかもしれませんが、それでも今回もこれだけ私を楽しませて頂いたわけで、これだからやめられないホン・サンス。次作も楽しみにしています。

TWDera