「素晴らしい脚本」ブリーディング・ラブ はじまりの旅 shironさんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい脚本
説明しすぎないけど伝わる。
全く無駄がない脚本!
観客は、なんだか気まずそうな親子のドライブ旅行に同行することになります。
ちょっとした会話やエピソードから、徐々に二人の関係や旅の目的が明らかになっていく過程が素晴らしい。
旅の途中で出会う人たちも素敵。
とくに美しいダンスシーンは、それだけも観る価値あり!
失敗したからこそわかる、似ているからこそわかりすぎる。
途中、運転席と助手席をワンショットで撮らずに、わざわざ交互に見せるシーンがあるのですが、まさか終盤にのこ手法が活きてくるとは!!!
登場人物の心情を表現する見事な演出に興奮しました。
同じく二人の車内での会話を、運転席と助手席の間からカットを割らずに撮るシーンは、何度も映り込むフロントガラスに目が回りそうでした。
愛を伝えるのは難しい。
そもそも不在では伝えられないけれど、一緒に居たからといって上手に伝えられるとは限らない。
親子って似てほしくないところが似ちゃって同族嫌悪になりがちだし。
ただでさえ、父親と年頃の娘って難しいですよね。
一説には、同じ遺伝子が混じり合うのを避ける為に、似たフェロモンに嫌悪感を抱くようにできているそうな。
ところどころで差し込まれる回想シーンが伏線になっています。
過去の誤ちは消えないけれど、過去の誤ちがあったからこそ、今の娘の状況がわかる。
居てほしい時にいてくれなかった父親が実は一番の理解者で、居てほしい瞬間にいてくれる人だった。
親は、自分に責任があるのだから、娘を救えるのは自分しかいない…と
自分の経験から子供の為に先回りしがちだけれども、自分のことを決めるのはあくまでも本人。
ずっと囚われていた親から巣立つ旅であり
親にとっては子離れする旅でした。