「設定のおもしろさをもっと生かしてほしかった」アビゲイル おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
設定のおもしろさをもっと生かしてほしかった
予告に興味をひかれて公開初日に鑑賞してきました。鑑賞直前に見たレビュー評価がメッチャ低くて心配しましたが、思いのほか楽しめました。
ストーリーは、互いの素性を隠して集められたフランク、ジョーイ、ディーン、リックルズ、サミー、ピーター、サミーの6人が、指示役ランパートの計画のもと富豪の娘アビゲイルを誘拐して、郊外の館で翌朝まで監視すれば報酬を得られるはずだったが、アビゲイルが実はヴァンパイアだったため、誘拐犯たちの恐怖の一夜が幕を開けるというもの。
本作の紹介文ではアクションスリラーということでしたが、これはもう完全にホラーですね。ただでさえホラーは苦手なのに、さらに本作では何度も派手に血が飛び散りまくり、けっこうグロいです。でも、誘拐犯VSヴァンパイアの息詰まる攻防がおもしろく、おかげで最後まで興味深く鑑賞できます。
アビゲイルの正体、誘拐のために集められた6人の素性や共通点、指示役ランパートとアビゲイルの父親の正体、誘拐の目的、誘拐犯が閉じ込められた館の役割など、さまざまな謎をめぐる二転三転の展開がおもしろいです。これにジョーイと息子、アビゲイルと父親という二つの親子関係を絡める展開が、ちょっとだけ心に響きます。なんなら、こっちに力点を置いて、親子の深い愛を描くような物語に仕上げれば、もっと深みのある作品に仕上がったのではないかと思うと、ちょっともったいない気もします。
ただ、あまりにも血みどろのグロ描写が多くて、ちょっと気分が悪くなります。フランクの大量吐血マーライオン、ヴァンパイアの最期のスプラッター爆裂などは眼を覆いたくなり、鑑賞後は軽く疲労感を覚えます。あと、終盤で収束に向かって一気に話をたたみ始めるので、ちょっと感情が追いつかなくなってしまったのも残念です。ここは設定のおもしろさと結びつく重要なファクターだったと思うので、もう少し丁寧に描いてほしかったです。
それにしても、アビゲイル役のアリーシャ・ウィアーの演技が秀逸です。いたいけな少女と凶暴なヴァンパイアを見事に演じ分けて、血みどろの狂気を体現しています。中でも、首なし死体とのダンスシーンは、シュールすぎて笑えません。こんな演技と演出をさせて、この子の将来が心配になるほどです。
主演はメリッサ・バレラで、過去に傷をもつジョーイを好演しています。脇を固めるのは、アリーシャ・ウィアー、ダン・スティーブンス、キャスリン・ニュートン、ウィル・キャトレット、ケビン・デュランド、アンガス・クラウド、シャンカルロ・エスポジート、マシュー・グードら。
ゆたぼーさん、コメントありがとうございます。
本作のレビューを上げておられないようなので、こちらに返信いたします。
アリーシャ・ウィアーは、撮影当時は13歳で中学2年生ぐらいだったようですが、トラウマになりそうなアビゲイル役を見事に演じ切っていますよね。
プロ意識の高さは感じますが、情操教育を考えると心配になります。