劇場公開日 2025年2月14日

「ご都合主義で強引な展開。でもいわば現代のおとぎ話。夢に向かって挑戦していく躍動感を伝えてくれる話なのです。」劇場版 トリリオンゲーム 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

ご都合主義で強引な展開。でもいわば現代のおとぎ話。夢に向かって挑戦していく躍動感を伝えてくれる話なのです。

2025年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

 原作・稲垣理一郎、作画・池上遼一による人気漫画を映像化した2023年放送のTBS金曜ドラマ「トリリオンゲーム」の劇場版。テレビドラマ版に続いて原作者・稲垣理一郎が監修を手がけました。
 ワガママで人たらしの“世界を覆すハッタリ男”【通称:ハル】と、気弱で心優しい“凄腕エンジニア”の【通称:ガク】という正反対の二人がタッグを組んでゼロから起業し、予測不能な作戦で、世界的企業の時価総額である1兆ドル(トリリオンダラー)を稼ぎ、この世のすべてを手に入れようと成り上がる前代未聞のノンストップ・エンターテインメント。ふたりが日本初のカジノリゾート開発に挑む姿を劇場版オリジナルストーリーで描かれます。

●連続ドラマ版のおさらい
 連続ドラマでは、まだ何者でもないハルとガクが、資金ゼロ・事業計画ゼロの状態から起業し、ハッカー大会、ECサイト、花ビジネス、ホストクラブ、スマホゲーム、動画配信サービス、キャッシュレス決済と、あらゆる事業に挑戦。予想の斜め上を行く方法で成功を重ねていく姿が、毎回テンポ良く爽快感たっぷりに描かれました。
 全話を通して繰り広げられた巨大企業「ドラゴンバンク」と覇権を奪い合う攻防戦は、最後まで目が離せないスリリングな展開となり、ついに最終回ではハルとガクが「ドラゴンバンク」買収まで辿り着いたのです。そのラスト、ハルとガクが2年後に再会するシーンでは、ハルが「俺らのロードマップの続きを始める!」と高らかに宣言。事業内容は明かされぬままドラマは幕を下ろしたのです。

●ストーリー
 世界No.1企業の時価総額と同等の資産、1兆ドルを稼いでこの世のすべてを手に入れるべく、さまざまな事業に挑戦しては予測不能な作戦で成功を重ねてきた天王寺陽(ハル・目黒蓮)と平学(ガク・佐野勇斗)。「トリリオンゲーム社」を日本トップクラスの大企業にまで成長させた二人が次に挑む事業は、日本初のカジノリゾート開発です。世界一のカジノ王・ウルフを次なるターゲットに定める彼らだったが、裏では2人の友情を引き裂く巨大な陰謀がうごめいていました。
 ドラマから引き続き、ドラゴンバンクの社長令嬢・ハルの元婚約者黒龍キリカ(今田美桜)、トリリオンゲーム社長の高橋凜々 / リンリン(福本莉子)、投資家で二人を影で支える祁答院一輝(けどういん かずき・吉川晃司)も登場。
 いまだかつてない危険と隣り合わせの世界に飛び込むハルとガクを待ち受けるのは、駆け引き、騙し合い、甘い誘惑など、これまで以上に難解な強敵に立ち向かうことになります。誰が味方で誰が敵か、日本社会を揺るがす巨額マネーゲームを制することはできるのでしょうか。トリリオンゲーム史上最大の“ハッタリ”に大注目です。

●解説・感想
 ドラマ版で、宿敵「ドラゴンバンク」を買収した時点で、話は完結したように感じていました。新たな劇場版と聞いて、もうネタはないだろうと思っていたら、そうきたかという感じです。
 ドラマ版時代から、話はぶっ飛んでいて、ツッコミどころ満載でしたが、それが劇場版になってパワーアップしました。
 まずカジノ事業において、1番課題は、国の許認可をどう取り付けるかです。そして現在候補地が5ヶ所あるなかで、どうライバルを押しのけて、選定地に選ばれるかという大きなハードルを越えなければいけません。それがセリフひとつでクリアーされてしまうのです。本当はそんな簡単なものではありません。
 またカジノの候補地が、岡山沖の瀬戸内海に浮かぶ小さな島になることも問題です。カジノとしてアクセスが悪すぎます。ハルがプレゼンしたように国際空港など小さな島に作れるのでしょうか。ハルの計画では島民が暮らす島の平地は避けて、岩場に建設するプランを挙げますが、空港・港湾など巨大インフラインフラ整備を必要とするなら、どうしても島の平地に手をつけざるをえず、島民の移転が不可欠になったはずです。それなのに島民は、絶対反対からハルの懐柔に乗ってしまいウェルカム状態にすぐ翻ってしまうところも疑問なのです。

 実は、今回の展開はカジノ事業の立ち上げが主ではなくそのあとの、カジノ事業の経営権を狙う外資とトリリオンゲーム側の攻防戦に主眼が置かれているのです。そのためカジノ事業の立ち上げのシークエンスは、かなり飛ばし気味になってしまいました。
 但しそんなご都合主義で強引な展開は、ドラマ版から本作の“お約束事”として軽く受け流す必要があるのです。本作で綴られるのは、いわば現代のおとぎ話ともいえる内容なので、いちいち現実味に乏しいと目くじら立てる必要はありません。
 むしろ本作に教えられることは、“THINK BIG”夢を持つことの大切さです。ハル一流のハッタリによって、次々成功を収めていくお話しは、この世知辛い世の中で徘徊しているわれわれに夢に向かって挑戦していく躍動感を伝えてくれるのです。

 それにしてもハルを演じている目黒蓮の演技は素晴らしく。ハルと一体化しています。ドラマ開始当初は、まだアイドル臭さも残っていたのですが、今回はハッタリのかましかたが堂に入っていて、誰もがそのハッタリに飲み込まれてしまいそうになる勢いなのです。今飛ぶ鳥を落とす勢いのSnow Manのファンなら必見でしょう。

流山の小地蔵