「ロマンスの兆しは見せても、突き進むのはそこじゃない。物語の中心はやはり竜巻!」ツイスターズ kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
ロマンスの兆しは見せても、突き進むのはそこじゃない。物語の中心はやはり竜巻!
本作の魅力は主演のデイジー・エドガー=ジョーンズに尽きる。
『ザリガニの鳴くところ』でもその演技に魅了されたが、今回は金髪で格段に美しくなったルックスに見惚れっぱなしの2時間だった。
彼女の本当の髪の色がどうなのかは知らないが、『ツイスター』(’96)のヘレン・ハントを踏襲しての金髪だろうか。
映画が始まって間もなく巨大竜巻が主人公たちに襲いかかる。
主人公の仲間たちがいきなり犠牲になっていく衝撃の幕開けだ。
この最初のシークェンスで、竜巻の脅威を表現するCGとSFXのクオリティを観客は体感する。
このときケイト(デイジー・エドガー=ジョーンズ)たちが竜巻を相手に実験しようとした〝竜巻を抑制する方法〟が、科学的にどうなのかは知らない。だが、ケイトは恋人と仲間を失った悲しみと自責の念を抱え、自身の理論を立証できなかった敗北感も抱えて生きていくことになる。
『ツイスター』のビル・パクストンも、自分が開発した計測機器を実用化できなかった心残りを抱えて竜巻研究から離脱していた。その計測機器「ドロシー」をケイトたちは活用していた。
5年後、失意のままニューヨークで気象予報の仕事に従事していたケイトだったが、助かったもう一人の仲間であるハビ(アンソニー・ラモス)の誘いで、再びオクラホマの巨大竜巻に対峙することになる。
ハビの研究チームと、竜巻追跡系人気YouTuberタイラー(グレン・パウエル)のグループという2組のストームチェイサーが、競い合って巨大竜巻を追う。
彼らが訪れる町がいつもお祭り騒ぎなのは、ストームチェイサーの“追っかけ”がいるからだろうか。
ハビたちの真実、タイラーたちの真実が徐々に明らかになり、対立の構図が逆転するストーリーの仕掛けは面白い。
ケイトとハビが恋に落ちることはないなと最初から感じてはいたが、ケイトとハビが仲違いしたままで終わらせなかったのも良心的だ。
アクションは段階的に激しさを増し、冒頭で見せられた迫力を凌駕していく。
巨大竜巻に襲われたとき、「車に乗ってはいけない」「地に這ったまま立ち上がってはいけない」など、普通にやりそうな行動の危険性を見せてくれる。
被災者から土地を安く買い叩く悪徳不動産業者が本当にいるとも思えないが、何でも金儲けに結びつける連中は存在するだろう。
2019年の房総半島台風(台風15号)の際、屋根点検詐欺が集団で各家庭を一斉に回って荒稼ぎした。
壊れていない煉瓦を補修する悪徳業者もいたらしい。
メイン・イベントで登場した町ごと破壊するスーパーヘビー級の竜巻がまた凄まじい。
人々が逃げ込んだ映画館では『フランケンシュタイン』が上映されているのだが、映写技師は仕事を続けていたのだろうか。
竜巻にスクリーンが吸い上げられてフレームだけが残ると、そこに竜巻吹きすさぶ建物の外の風景が見えるという演出が粋だ。
ストームチェイサーたちは竜巻に立ち向かうだけでなく、人々を救出することにも命をかける。
科学者であり冒険家でもある彼らの根底には、人道主義の精神が息づいているのだ。
それにしても、デイジー・エドガー=ジョーンズに惚れ惚れ。
アメリカの竜巻事情をレクチャーいただきありがとうございます。避難するしか術はないことは理解しましたが、それでもあんなに死人が出るのはやはり個人的に解せません。それとも、もう竜巻死は交通事故死と同じ感覚なんでしょうか、だとしたら納得なのですがね。