「アメリカのたくましさのルーツを知る」ツイスターズ sumichiyoさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカのたくましさのルーツを知る
ディザスター作品も好きなジャンルなので鑑賞しました。
本作は竜巻の脅威や被害に立ち向かう物語でありながら、竜巻と共生するアメリカ人の精神も描いた作品でした。また、96年のツイスターのリブート作品として、登場人物設定や物語が大きく違ったけど、本筋や製作意図はしっかりと受け継がれていました。
物語はある大学生研究チームの竜巻追跡から始まる。チームリーダーのケイトは独学で巨大竜巻を消滅させようと試みるが、凄惨な結果に終わってしまう。5年後、ケイトはチームメンバーだったハビに誘われ、苦い記憶を胸に再び竜巻を追いかけるのだった。
作中に登場したケイトやハビは竜巻の内部構造を分析し、竜巻のエネルギーを霧散させる方法で竜巻被害を根本から無くそうと考えていた。これだと竜巻発生前の不確実な予報や竜巻発生後の不正確な進路予想より確実に被害を最小限にできます。でも、ちょっとした気温や湿度の変化で進路を変える竜巻の前に分析が難航、ケイト自身も過去のトラウマから抜け出せずにいた。そんな時、ケイトはタイラーと出会う。
作中に登場したタイラーは竜巻カウボーイと呼ばれ、クルーと共に改造車で竜巻を追う命知らずなチェイサーでした。目的はユーチューブ配信で稼ぐため。でも、「恐怖を消すために乗りこなす」という独自のチェイサー精神が印象的でした。ありきたりだけど、何度も竜巻が来ようとも土地に住み続ける住民を代弁した言葉だと思います。実際、タイラーは配信で得た収入やグッズ販売の収益を竜巻被害地域の生活物資支援に充てたり、家を失った被災者につけ込む地主を軽蔑したり、二次被害を防ぐ活動もしていた。ケイトはタイラーと過ごすことでトラウマを克服していき、竜巻研究を進めていく。
ディザスター作品として、被災後や車内カメラだけのメタファーシーンで無く、実際に竜巻が街を剝がしていく細かなシーンが映像化されていました。作中、イベント会場が竜巻発生から数分で襲われるのだけれど、ケイトの眼前で人や車や建物が吸い込まれていくシーンがありました。ほんの数m先の竜巻のテリトリーに入っただけで吸い込まれてしまうブラックホールみたいな感覚でしたね。それが時速100kmほどで移動しているからすごい。一瞬の判断ミスでなく、数十秒の判断ミスで確実に命を落としてしまうという恐怖がありました。
ケイト演じるデイジー・エドガー=ジョーンズは、映画『ザリガニの鳴くところ』で拝見しました。はしゃいだり、落ち込んだり、感情を露にするシーンが相変わらず印象的。ツイスターで同じ立ち位置だったヘレン・ハントと違った印象だけど、若々しさの中に十分なワイルドを秘めた女優でした。でも、美人。タイラー演じるグレン・パウエルは映画『トップガン マーベリック』くらいか。少し皮肉屋だけど、女性に優しいところがカウボーイに合っていた。遠くの竜巻を見据える鋭い眼差しがカッコよかった。
近年、アメリカで年間1,300もの竜巻が発生し、最大で年間100人もの犠牲者が出ているようです。一日に4つも竜巻が発生しているとなると、ケイトのように根本から竜巻を抑えようと考える人が当然だと思います。でも、タイラーのように竜巻を自然の一部として受け入れ、竜巻多発地域から逃げずに共生する道を選ぶ精神性も間違いではない。竜巻を追うチェイサーを見ているとアメリカ人のたくましさのルーツが分かったような気がしますね。