「この歴史、心揺さぶられる」ボストン1947 Qooさんの映画レビュー(感想・評価)
この歴史、心揺さぶられる
1936年のベルリンオリンピックのマラソン競技で、金メダルを獲得したソン・ギジョンと銅メダルを獲得したナム・スンニョン。2人は朝鮮半島が日本の植民地統治下にあったがゆえ、日本代表選手として日本名で参加せざるを得なかった。
表彰台でユニフォームの日章旗を隠したことでソン・ギジョンは選手の引退を余儀なくされ、第二次世界大戦が終わり日本から独立しても、メダルの記録は日本のままだった。
そんな身を切られるような思いをしたソン・ギジョンはその後、祖国で英雄となったが、無気力で物臭な日々を過ごしていた。
英雄ソン・ギジョンの名前の付いたマラソン競技で、1位獲得した若者のソ・ユンボクは、幼い頃からソン・ギジョンに憧れていたが、表彰式に現れたソン・ギジョンの酒臭く興味のない様に失望してしまう。
若者達にマラソンの指導をしていたスンニョンはユンボクの才能を目の当たりにして、ボストンマラソンに出場させようとユンボクを誘うが、ユンボクは病気の母親の為に金を稼ぐ必要があり、賞金がないと分かった以上とにかく金を稼がなければならなかった。
ギジョンと同じようにベルリンオリンピックで苦い思いしたスンニョンは、朝鮮から若いランナーを輩出すべく、若者達にマラソンの指導をしていた。
ボストンマラソンに若者を出場させようと奮闘するスンニョンに説得され、ギジョンは動きだす。そしてギジョンが監督をすることを条件に何とか道筋を見出す。
ユンボクに病気の母親がいることを知ったスンニョンは、その手助けをすることでユンボクをチームに迎え入れることができ、ユンボクも母親の為に一生懸命練習に励んだ。
だが、ユンボクの母親が病気とは知らないギジョンは、ユンボクが金の為に走っていると疑わず辛く当たってしまい、ユンボクはチームを出てしまう。
ギジョンはスンニョンに連れられ、ユンボクの母親の入院している病院へ。そこでユンボクの母親の深刻な病状を知る。
そんな中ユンボクの病気の母親が亡くなってしまい、母親のユンボクに走らせてあげたかったという思いを胸に、ギジョンたちはまたユンボクをチームに参加させる。
ここからが本格的にチームの奮闘がはじまる
ギジョンもスンニョンも指導に力がはいり、ユンボクも過酷な練習に励んだ。そして実力はギジョン以上と言われるまで成長した。
ギジョンはボストン行きの道筋を何とか見出すが、朝鮮は難民国とされ米国に入国するのに保証金を求められる。その保証金の問題を解消できずボストン行きは難しいとされたが、ユンボク達に期待し応援する人たちの心を動かし、その募金で保証金を解決することができた。
そしてギジョン、スンニョン、ユンボクはようやくボストン行きが叶いいざ!
だがまたボストンでも、アメリカに保証されるからにはユニフォームは星条旗でなければならなかった。またも同じ屈辱を繰り返すのか、いや、何としてでも朝鮮の太極旗を胸に走らなければ!
ボストンでの保証人としてあつらえられたペク・ナムヒョンは、この国は何でも金だといい、いい加減で本当に保証人が務まるのか不安だが、太極旗を勝ち取る会見での通訳はいい仕事をしてくれた。
頑として星条旗を条件と譲らないアメリカ側に、3人の熱意が伝わり、会見に来ていた人達をも巻き込んで太極旗を勝ち取ったのだから。
もうあとはボストンマラソン。
出場はユンボクとスンニョン。
ユンボクのペースを守り、誘導しながら走るスンニョン。
様々な苦い思いを胸に走るユンボクの顔は、凛として揺るぎなく、冷静で、芯の強さを感じさせた。
認知度の低い朝鮮を、実況でも侮っていたが、淡々と走り他国の強者を抜かしていくユンボクに注目し始める。
もうあとは見守るしかない!
1位に躍り出たユンボクだったが、犬を連れていたギャラリーの手からリードが外れてしまい、その犬がコースに飛びだしユンボクと衝突‼️
そんなことあるか⁉️
そして倒れるユンボク。たちまちペースを崩して体が言うことを聞かず立ち上がれない。それでも何とか立ち上がろうと頑張るユンボク。
さっき抜いた強者達にどんどん抜かれてしまう。
マラソンがスタートして間もなく、いてもたってもいられなくなったギジョンは自転車でユンボクの先を追う。そこで倒れたユンボクを見つけて駆け寄る。そしてユンボクが立て直せるよう懸命に声をかけサポートする。
あぁ、何とか立てた。ユンボク 頑張れ!もう涙が止まらない。
そして徐々にペースが戻って再び走り出す。
あぁ。なんだ。もう。本当に涙が止まらない。
そしてもう、凛として揺るぎない、芯の強さを感じさせるユンボク再び。
ここからのユンボクが強かった。強くて素晴らしかった。
なんとまた追い上げ1位でゴール!
そして世界記録まで更新!
あぁ。本当に良かった。
子供の頃、病気の母親の為にお供えを盗みに行ったあのきつい坂道。
母親への思いがユンボクを強くしたのだ。
第二次世界大戦の時代がもたらす背景が如何なるものだったのか、この映画を通してすごく大事なことを学んだ。すごくいい映画だった。
そしてギジョン、スンニョン、ユンボク皆90歳を超えて長生きされたと。感服させられた。