劇場公開日 2024年9月6日

「劇場で体験したい新しい感性」ナミビアの砂漠 パンダさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5劇場で体験したい新しい感性

2024年10月7日
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鑑賞方法:映画館、VOD

笑える

知的

新鮮な会話劇と感性を存分に味わえた傑作だった。硬派な社会派作品であり、先鋭的なアート映画でもあるが、随所のユーモアは誰もが楽しめる。

正直、前半はダルい面もある。でも、後半はどんどん面白くなってきて、前半のダルさが意味を持ってくる。

主人公のカナは正直で奔放で、ときに恋人を叩き、物を投げつけ、粗暴な言葉を吐く。ぱっと見はヤバい女だが、考えてみれば多くの男性がやっていることと同じだ。男性なら「しょうがねえなあ」と大目に見られるのに、女性だとメンヘラのレッテルを貼られてしまう。

本作の背景やセリフで描かれる、風俗、エステ、容姿の評価、整形、中絶、DV。全て男性優位社会を基盤として出来上がっている。そんな世間と自分をカナは透徹した視点で見つめている。恋人を叩きまくっている最中も、もう一人の自分が冷静にそれを見ている。

反抗と諦観の狭間で苦しむカナは、普遍的な女性像ではないか。彼女に共感する観客は世代を問わず多いと思う。

パンダ