劇場公開日 2024年9月6日

「大共感」ナミビアの砂漠 maduさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5大共感

2024年10月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

カナと同種の人間すぎて、前半の壊れる前のカナのシーンは、なんだか自分も落ちうる地獄を観ているようなしんどさがあったが
一度壊れてしまった方が、映画の世界にぐんぐん入っていけてある種の心地よさと、笑ってしまう感じでこの映画のことが愛おしくってしかたない。ってなりカナとどこまでも落ちていけるような気持ちになった。
映画はカナとゆうどこにでもいる女の子が緩やかな放物線を描きながら落ちる、そして緩やかな回復の間口に立ったところで終わる回復の映画だと思った。
タイトルにあるナミビアの砂漠の様に(映画のタイトルで私もずっと観てたあのライブ配信チャンネルじゃんって思っていたけど、そのものずばりだった。このチョイスもなんだがすごく現代的だなと思った)傷つき、動けなくなった人も、砂漠の水溜りに集まって休んで癒される野生動物の様に逞しさをもって生きていけるよ。と背中を押してくれる作品だ。

カナは暴力も振るうし、口も悪いし、無気力だし、優しい彼氏も大事にできないし、ほんとうに褒められた人間じゃないけど
だからこそめちゃくちゃに共感してしまった。
河合優実ちゃんは主演3本目かなと思うけど、彼女の歩き方、ものの食べ方まで作りこむようなその人にしか見えない演技力の高さが遺憾無く発揮されてるのもファンとしては嬉しい。

ハヤシの何喋ってもムカつく感じとかも、なんかいそう〜こんなやつ〜〜〜って思ってすごかった。
他人から見ると絶対優しくて大事にしてくれて、浮気もしない(?)ホンダの方が絶対に良いんだけど

自分を大事にできていない人間は、自分を大事にしてくれる人とは付き合えなくって、だからこそハヤシに対しては感情をぶつけられるし、喧嘩ができるのも分かる気がした。

ホンダの風俗行っちゃったくだりも、子供を降ろした嘘(ここもほんと酷い)のとこもホンダの純粋さゆえのおかしみがあって好きなシーン。

カナのキャッチに罵られてキレるのも、会ったこともない女性が降ろしたかもしれない子供について怒りを爆発させるのも、私としてはめちゃくちゃわかる〜
知らない女だとしても、自分もなりうる最悪なことを目の前の男が原因の一旦を担ってて、忘れてたわとか言ってたらね、最悪じゃんね。
ぶん殴りたいよ分かる。何がクリエイティブだよ?悪影響振り撒くなよな。
その怒りもカナ自体が破綻してるから、説教くさくない純粋な怒りとして映画に存在するのがいい。

濱口監督組の俳優がいっぱい出ていたけど
どの役者さんも、最高の働きをしていてめちゃくちゃ良かったなぁ

特にクズ界の新生だと思ってる(もちろん役として)中島歩のとこは声出して笑いそうだった…何?あのエジプト背景。

カウンセリングのシーンも良かったし、唐田さんの理解してくれる他者としての存在感とかよかったなぁ…
焚き火のシーンは邦画界に残る名シーンだと思った。

ハヤシと取っ組み合いしても、普通に買い物言ったり、でもそのあとボコボコに殴ったり
そんで脳内世界に飛んで、あーなんか疲れたな〜ってなんなの、この映画はすごい最高だった。
エンディングも良い。

madu