シビル・ウォー アメリカ最後の日のレビュー・感想・評価
全220件中、121~140件目を表示
何を訴えたかったのかな
ヒトコワ~人間が一番怖い~。こんな世の中になってしまったけど、結局人が一番怖い…という事ならば、ウォーキング・デッドであんな静まり帰ったアメリカの風景や殺し合いは既に見たな。それとも、女カメラマンの成長を描きたかった?だとしたら、憧れの先輩のあの最後…トラウマでカメラマン続けていけるか?!オー凄いね、頑張ったね、とはならない脚本。説得力は弱い作品。
またもやA24 アメリカの様々な問題をブチ込んできた怪作
報道スチルカメラマンを主人公にした作品だけに、カメラや写真の観点から感想を書いてみたい。
まずジェシーが持つカメラは、なぜNikon FE2だったのか?
FE2は1983年に発売されたフィルムカメラ
映画の中では祖父が持っていたカメラとのことだった
ハイエンドではないので写真を趣味とする人などが一般的に買う機種だったはず
1983年当時で考えても、おおよそ報道のプロを目指すような人間が手にするカメラではない。
話はちょっとズレるが、今フィルムカメラは静かなブームになっていて、現代のデジタルカメラのシャープで全てを写してしまう高分解能に対して、気分を写し込むような、あいまいさや鈍いフォーカスなどの雰囲気がレトロ感も相まって人気がある。
映画に戻ると、このNikonFE2というアイテムは、ジェシーのあどけなさやひ弱さ、薄っぺらいTシャツなどと相まって、彼女がその辺りにいる普通の子で、思いつきでしか行動していない危なっかしい無知な女の子であるということを補強している。
映画の中でジェシーがフィルムを自家現像しているシーンが出てくるが、水道もない場所で現像→停止→定着→水洗の工程を行うことはできない。
フィルムなので多くて36枚しか撮影できないが、フィルムを詰め替えるシーンはひとつもない
ホワイトハウスに侵入するシーンでは、兵士の機関銃の弾切れのシーンはやたら出てきたが、ジェシーの弾切れは一度も無かった
ここまで矛盾点が多い中、FE2にしたかった理由とは何なのか?
監督に聞いてみたい
またジェシーが使っているのはモノクロフィルムだった
これについてはアメリカの過去の内戦「南北戦争」を想起させたかったという気もする
この南北戦争との関連も映画の中にはたくさん詰まっていそうで、その観点から読み解くのも面白そうだ
最後に、大統領が射殺されて兵士たちがその前で笑っているモノクロ写真は、よくハンターが獲物を前にポーズしている写真のようだった。
大統領をハントした兵士たち、その写真をハンターのように激写したジェシー。
Shootという英単語が「銃を撃つ」という意味に加え、「写真を撮る」という意味もあるように、快感さえ覚えながら本能のように連射したジェシーと、頂点(絶頂)をすでに迎えたリーとの世代交代がこの銃撃シーンで行われたのは暗喩的な気がする。
アメリカ内戦
予告では派手さが目立ったがストーリーはジャーナリスト一行が大統領取材の為に陥落間近のワシントンへ向かうロードムービー。平和な日常中に突然、残酷なシーンが現れる。確たる内戦の発端は描かれず、ロメロのゾンビ映画を思わせる異様な不気味さが漂う怖さ。ウクライナ、ガザ、ミャンマー、様々な紛争地域で起きている戦闘、虐殺、理不尽さをアメリカ内戦に置換え分断され内戦下のアメリカを描くのが主題。ジャーナリストとは何か?を描くのかと思いきや、あれだけ最前線にいたらそりゃ死ぬ!?悲観的にならない潔さ。
アメリカには武装組織や民兵がいて政府が人民の自由や権利を抑圧するなら武器を持ち戦うと普段から備えている人間がかなりいるので、内戦になれば狂信的な人間が率先して一般市民を交戦規定などガン無視し喜び虐殺に加担する。まあ、いざとなれば日本にもいるけど。
パンフレットはよくできてる
鑑賞後に友人と内戦のことを描きたいのか、ジェシーのカメラマンとしての成長を描きたいのかよくわからないって議論に。パンフレットを見ていると、表紙の値札が剥がれないし、よくみると縁が緑色だけどTIMEに似てる…となり、ページをめくっていくと最後の方に載っていた白黒の写真がジェシーの撮ったものだけで、リーの撮った写真が1枚も無いことに気づく。つまり、このパンフレットは大統領の死後、映画の中の世界で実際に出版された雑誌で、ジェシーの写真が評価されたということになってるのか?
これが「アメリカの最後」でもいいのか?!
米国で発生した架空の内戦をジャーナリストの視点から描いた問題作。
政治的な主張の違いから深刻な対立が激化する現代のアメリカ。そんな状況に着想を得て本作が作られたことは容易に想像できるが、一方で現実の政治的対立を反映しないよう、慎重な配慮がなされていることにも注目。
そのひとつが設定上のリアリティの欠如。
3期目の任期に突入した合衆国大統領は、FBIを解体した以外にどんな施策を行ったか、作品上まったく示されない。
従って、いかなる理由で19もの州が連邦離脱に至ったのかも、WF(西部勢力)との間で内戦にまで発展したのかも最後まで不明のまま。
そんな中、唯一具体的といっていいのが、WFを構成しているのがテキサスとカリフォルニアの二州だという点。
政治的に保守的な地盤のテキサス州と、リベラルな政治風土のカリフォルニア州が連合して政府に反旗を翻すことなど有り得ないのは、合衆国憲法で大統領の任期が二期までに制限されていることと同じく、アメリカ人にとって常識。
当然、これらの非現実的な設定が恣意的なものであることも明白。
さらなる対立を煽るような政治的題材を引用して、公開後に暴動を誘発することを危惧しているからで、それが杞憂ですまされない可能性があることは、2020年に起きた連邦議会占拠事件が証明している。
NYでの暴動を取材後、メディアに沈黙を続ける大統領から独占インタビューを取るべくワシントンDC入りを計画するベテランジャーナリスト3人。
その中のひとり女性カメラマンのリーに憧れ、フォト・ジャーナリストを志す若いジェシーがさらに加わった一行は自動車で首都を目指す。
作品は一貫してジャーナリストの主観で綴られ、民間人の犠牲を声高に非難したり、兵士との心の交流などの戦争映画にありがちな、お涙頂戴の場面や感動的な演出を排除することで、製作者が観る側にも画面から目を背けず中立な立場で鑑賞するよう求めていることが伝わってくる。
戦争がなぜいけないのか─。
殺人の肯定もだが、戦争が人間を簡単に狂わせるからだと自分は思う。
一行は首都までの道中、幾度も戦闘に遭遇し、戦争の狂気を目の当たりにする。
拷問した捕虜との記念撮影をリーらに求める若い兵士、相手が誰かも分からぬままライフルを乱射する狙撃兵、ホワイトハウスで交渉中の報道官を文字通りの問答無用で射殺するWFの突撃兵。
そして、極めつけは顔見知りのジャーナリストと合流後の一行を待ち受ける所属不明の武装グループ。
一行に「どんな種類のアメリカ人なんだ」と訊問し、異質と判断すれば即座に射殺する彼らの正体は明確には示されないが、おそらくは内戦に便乗して人間狩りを繰り返す差別的な自警団。
これらのエピソードは戦時下での実際の出来事をモチーフに「再現」され、非現実的な設定とは裏腹に、リアルな戦争の狂気と恐怖を観る者に突きつける。
ジェシーを演じたのは、『エイリアン・ロムルス』でヒロインの少女を熱演したケイリー・スピーニー。
撮影時の実年齢が25歳で設定上は23歳だが、メンバー中とりわけ若い彼女の見た目の印象はもっと若く10代にもみえる。
自警団に捕らわれて自らも殺されそうになった挙げ句、合流した報道仲間と一行の知恵袋的存在だったサミーの命を奪われ、激しく動揺したジェシーはその後の行動に変化が生じる。
それまでは若さゆえか、拙さや戸惑いが目立ったが、首都制圧を目指す現地のWFに合流後、飛び交う銃弾をものともせず、率先して被写体にカメラを向ける。
つらい経験を越えて報道カメラマンとしてひと皮剥けた姿にもみえる一方、自暴自棄にも映る彼女の行動をリーたちは心配する。
クライマックスの首都攻防戦のシーンは圧巻の一言。
火力にものを言わせ、殲滅作戦で政府軍を圧倒していくWFは脱出を図る大統領の車列にも、容赦なく砲弾を浴びせる。
そんな中、リーは長年の経験から大統領がホワイトハウスにとどまっていると判断、ジョエルやジェシーとともに邸内へ進入し、WFの突撃兵も追随する。
数度の銃撃戦ののち、突撃隊はついに大統領執務室に肉薄し、世紀の一瞬を逃すまいとジェシーは不用意にも一歩前へ。シークレットサービスの照準に捉えられた彼女の命を救ったのは、みずから盾となったリーだった。
自身の憧れで道中の庇護者だった彼女が代わりに銃弾を浴びて斃れるのを目の当たりにしながらも、ジェシーはスクープを優先して執務室へと向かう。
その姿をジャーナリストとしての成長と捉えるべきか、人間性の喪失と感じるべきなのか─。
作品中の大統領をトランプ前大統領に比定する人も多いと思うが、本作の大統領は出番も極めて少なく、ほぼ無個性で名前すら判らぬまま。
最後でジョエルに促されて命乞いするが、WFの兵士に躊躇なく「処刑」される。
このシーンを観て溜飲を下げる人もいれば、やり過ぎと感じる人も多い筈。
だが、内紛や内戦下で敗者が正式な手続きなしで処刑されるケースはルーマニアのチャウシェスクやリビアのカダフィらの例にあるとおり、珍しいことではない。
製作側は鑑賞者の中にこれらの例を想起する人がいることを期待し、同時に「アメリカの最後も同じでいいのか」と問い掛けているのかもしれない。
映画はジェシーが撮影したと思しき、処刑された大統領を取り囲む誇らしげな突撃兵の写真にエンドロールが重なる映像で終了する。
このラストに強い違和感や嫌悪を感じた人は、やはり「戦争はいけない」と分かっているからだと思う。
作品の最後で一人前の戦場カメラマンとして、スクープをものにしたジェシー。
彼女の将来を待ち受けるのは、ピュリッツァー賞などの名誉や富か。
それとも目標だったリーや、26歳で戦地に散ったゲルダ・タローと同じ末路なのか。
そんなことは、世界中で戦争が続く限り誰にも分からない。
ないようがないよう
アメリカ最後の日とかアメリカ分断とか
御大層な文言の割にそこはバックボーンでしかなくて
戦場ジャーナリストのお話
なのに戦場カメラマンについての話も薄い
冒頭ガススタと途中のイカれた奴くらいしかイベントもないし
最後もアドレナリン出てたって感じなんだろうけどあれでいいの?
MJが記者になったバース
主演のキルスティン・ダンストはサム・ライミ版『スパイダーマン』のヒロインMJ役です。
MJは映画では女優になりましたが、コミックやゲームではたくましい記者(報道カメラマン)として危険な現場に潜入したりもしていました。
必然的にこの映画の主人公リーにMJを重ねてしまいますよね。
リーはもうすっかりベテラン。スパイダーマン:ピーター・パーカーとは、恋人→結婚→離婚→パートナー、といった経緯を辿ったのではないかと察します。
彼譲りの使命感から、大統領にインタビューをし報じるための危険なロードムービーが始まります。
スパイダーマンは大混乱のニューヨークで人助けをしなければならないので、今回の旅には同行できませんでした…。
途中で訪れる町では、その都度、ドラマ『ウォーキングデッド』を思い起こさせるようなゾッとする体験をします。そういえばあのドラマでも、ゾンビより人間の方が厄介でした。この映画はゾンビモノじゃないのに、非常にショッキングな場面があります!
しかし僕が密かにこの映画で注視していたのは、
キルスティン・ダンストが、今後作られるでろうライミ版『スパイダーマン4』のヒロインとして続投するに値するか!? という点です!
MJは若い頃はビッチな面があり、ファンからも共感を得づらいキャラクターでした。しかしピーターが心に決めた相手である以上、僕は2人の仲を応援したい。『スパイダーマン4』にも是非キルスティンに続投してほしいんです!
ただ、〇ヒーローを恋人に持ち苦悩するという演技力、〇ヴィランにより危険な目に遭わされるというアクション面、〇そして美貌、MJ役に必要な要素は多く、キルスティンが今でもそれをキープできているかを確かめたかったんです。
そして結果は…
合格でした!
特に、中盤の穏やかな日常を送り続ける『トワイライトゾーン』の異世界のような町の洋服店で、グリーンのドレスを試着し鏡を見る場面、1粒だけ、誰にも気づかれないような涙の雫をこぼすという演技には、脱帽せざるを得ません!
『アメイジング・スパイダーマン』のヒロイン、グウェン役のエマ・ストーンは演技力もかわいさも健在ですが、グウェンのライバルとも言えるMJ役のキルスティン・ダンストもまた、名俳優としての道を歩き続けていたんですね。
内容の重さはもちろんですが、忘れられない映画となりそうです。
トランプ暗殺未遂事件が理解できる傑作
赤いサングラスをかけた兵士
「お前はどの種類のアメリカ人だ?」に対する答えとしては
老記者サミー
「出ていけば間違いなく殺される」が正解だと思います。
彼ら3人の兵士はほぼ無差別に邪魔くさい人々を殺していたので後始末が必要になったのでしょう。
後で銃弾や弾痕で自分たちの殺した証拠を隠蔽していた感じですね。
だから、あの3人は兵士ではなく殺人を楽しんでいた殺人鬼と解釈した方がいいと思います。
なので「香港」と答えたトニーは敵対国「中国人」と断じられて処刑されのですが
同盟国である「日本」と答えても処刑されていたでしょう。
この作品の冒頭でも無差別にミサイルで殺人をしていたので
政府軍の一部が劣勢になって無差別な殺人をするようになったのはわかります。
アメリカ映画で戦場での狂気を描く時は必ずヒーローがいて良い話で幕を閉じる事が多いですが
この監督はイギリスの近未来劇の巨匠であるアレックス・ガーランド監督なので一味違う味わいがありました。
特に注目すべきは検問所での狙撃の名手に狙われる所で丸ごとトランプ暗殺未遂事件でした。
トランプさん以外の一般人でも同じ状況になりやすいのが銃社会アメリカの現実でしょう。
IFだけどリアルな恐怖感
アメリカで内戦がもし起きたらという話が土台。
戦慄の血生臭い吐き気を催すほどの戦場風景。
いったいどういう理由で内戦状態になったのか?
想像するしかないが、戦争の恐怖感だけは充分すぎるほど伝わってきた。
以前アメリカの分断が深刻で内戦の可能性すらあるという
都市伝説めいた話を小耳に挟んでいた。そして今、大統領選真っ只中。
銃社会、人種差別、移民問題など見ているとありえなくもないよね?という
政治的な警鐘なのかもしれない。
戦場カメラマンに成長していくジェシーのどこまでもスクープを追う
後半シーン。顔が完全に変わっていたし戦争に取りつかれてるかのようで
リーの表情と対照的で興味深かった。
この映画、音が凄かった。BGMのチョイスも絶妙。
だからシリアスなんだけど音のお陰もあって最後まで一気に観れた気がした。
最低限の事前知識は必要か?
映画館で目にしていた本作品の予告編や、
作品タイトルから、アメリカが反乱勢力によって
政府転覆されるまでの物語が展開していくのかと思ったけど、
まさか戦場カメラマンの生き様や成長(?)のドキュメンタリーを
見させられるとは思わなかった。
非常に考えさせられる、いまアメリカとはいわなくても、
世界のどこで起きてもおかしくない事件が
描かれているのは考えさせられる。
ただ結末はいろんな意味で残酷で
戦場カメラマンを目指す小娘の軽率な行動で、
お世話になった人とかお手本とする人がみんな亡くなってしまうし、
これは安易にジャーナリズムの世界に飛び込むな、
という警鐘なのか、そこはどうにも捉えられなかった。
それにしてもいろんなところがR指定があるだけに、
グロい描写が多くて、そこは気をつけて鑑賞してもらいたい。
ポピュリズム、そして分断化のなれの果て。
そこに生まれるのは「人でなし」という物語。
鑑賞後に湧き上がる、悪寒がするほどの胸くそ悪さ。それは劇中で主人公の座をリーからやがてバトンタッチしていくジェシーのラスト、人でなしの達成感なりを見た事だけではない。この映画には荒唐無稽なおとぎ話と切って捨てられない、現実感がある。なんとも恐ろしいことだ。
現代社会への警鐘が本作のねらいだとするならば。本作の深層に流れる「現実感」そのものを利用し、我々の五臓六腑を締めつけてくることを想定したとでも言うのか。この作品そしてA24、悪ふざけが過ぎるではないか。
ただし、矛盾するようだが私は本作を微塵も否定しない。ハリウッド的な要素を排除し、ここまでリアルに描いたことには喝采を贈りたい。
① 現代社会から引きずりこむ現実感
② 戦場に引きずりこむようなリアル描写
そして
③ 人心の昇華と没落
唯一、本作で映画的であったこの部分が凄いのだ。
長年ファインダーで戦場というこの世の地獄を切り取ってきたリーは、弟子の登場により徐々に人の心を取り戻していく。一方で、この世の地獄をあまりに性急に取り込んでしまったジェシーは、やはり急激に人の心を失っていく。この二人のグラデーションはサミーの横死により交差したことを最期にまた、逆方向へと離れていく。
そう。ここに「分断」の原理を表現しているのだ。この脚本、凄まじいではないか。
①②③を内包した本作は、体験型シアターを超える四次元的な究極体験をもたらす。
しかしながらこの現実感。
どうか今だけ得られる体験であってほしい。
善き人を優先しない戦場
1. 大義が見えにくい戦争
宣伝は目にしたが、詳しい背景までは調べずに鑑賞したのが結果的に良かった。鑑賞後wiki等で、憲法違反の3期目を強行した大統領に抵抗する内戦(civil war)と了解したが、映画での説明は最低限で初見では詳細を把握できなかった。北米の内戦と言えば、1780年前後の独立戦争、1860年代の南北戦争は有名。どちらも大義名分が明確。特に北群の奴隷解放は大義として推しやすい。
本作の内戦も、大統領の暴走への抵抗という大義があったとしても、政府側の要人を裁判にかけず殺しまくる姿は、フランス革命より華かに野蛮。敵味方を確かめずに狙撃し合う兵士、丸腰の記者を香港出身だと撃ち殺す兵士に、軍の規律も統制も皆無。盗もうとした隣人を警察に任せず、半殺しにするガソリンスタンドの一般市民と変わらない。内戦は容姿で敵味方を判断しにくいし、兵士が非戦闘員になりすましている可能性もあるが、明らかに丸腰の相手を銃で威圧する兵士に正義は感じられない。もはや「北斗の拳」「Walking Dead」の世界。R指定に留める為に、敢えて描いていないが、恐らく多くの戦場同様にレイプも横行していそう。ただ事ここに至って、記者と名乗れば特別(透明人間)扱いしてもらえると期待しているジャーナリストにも、妙な選民思想を感じる。
🗽
2. 死の機会は平等に ~ 善い人が護られる訳じゃない
NYを旅立った主要人物の4名(Lee, Joel, Jessie & Sammy)の内、2名が死ぬ。最初は年老いたSammy。先に捕らえられた若いJessieを助けに向かったLeeとJoelまで陥った窮地を、車で兵士をなぎ倒して救うが、残っていた兵士の銃弾に倒れる。ラストでは、無鉄砲に飛び出したJessie を庇い、Leeがシークレットサービスの銃弾に倒れる。
2人に共通しているのは、若い仲間を救おうとした事。更には、そもそも若者の行動にリスクがあると指摘している事。Sammyは、Jessie らに銃を向ける兵士の説得を試みるLeeとJoelに危険だと警告している。非戦闘員の遺体を埋める汚れ仕事は市民にバレたくない筈で、記者にも目撃されたくない筈。そこにノコノコ出ていったら、救う処か一緒に埋められかねない。実際、香港出身者とは言え、Reutersの記者を殺した事を隠滅する為、全員殺されていたかも。
Leeも、防弾チョッキも黄色のベストも着ずに暴動を取材するJessie を諌めていたし、経筋不足の彼女がD.C.に向かうのに反対だった。終盤案の定、Jessie は拙速過ぎる行動をとり、庇ったLeeの死を招いた。
正しく忠告し、仲間を助けようとした2人が亡くなった。戦場では善い人を神が優先的に護ってもらえる訳じゃない。寧ろ、仲間を救う為にリスクを冒したのだから、そのリスクに見合った結果がもたらされただけなのかもしれない。東日本大震災の時に、中国人留学生を山まで避難させた男性が、妻も迎えに行くといって山を下りて津波に呑まれた。災害でも善き人を神が救ってはくれない。
⚔️
3. Leeは最後まで記者でいたのか?
恩師(mentor)のSummyの死に動揺したLeeは、Summyの遺体の写真を消し、D.C.の前線でたじろぎ、取材に後ろ向きになる。それでも、逃走する政府公用車に群がる兵士に、大統領は未だWhite houseに居ると断言し、再び勇ましく最前線に向かう。ただ本当は、この時点で Lee はもうScoop記者ではなかったのかもしれない。旅の途中で、Jessie は Lee に「私が撃たれる姿を貴方は撮る?」と尋ねた。Leeは曖昧に応えるが否定もしない。やはりScoop記者なら、何より記録を優先する筈。しかし、Sammy に救われた Lee は、実際には Jessie の救助を優先した。不用意に飛び出したのは Jessie の自己責任。その酬いは Jessie 自身が受けて然るべき。にもかかわらず、撃たれたのは救助のリスクを冒した Lee で、その姿を記録したのはJessie だった。
Jessie は大統領が撃たれる瞬間も、殺戮者のドヤ顔もScoopする。間違いなく生前の Lee 同様、多くの記者の羨望と嫉妬を浴びる伝説的な存在になった。そもそも、Leeの感が冴え渡らなければ、更にLee に護られなければ、Jessie はその場に居る筈もない。戦場で取材するなら先ず己を護れと新人を諭したLee自身が、恩師と同じく仲間の危機を傍観できなかった。戦場を透明人間として傍観し、記録できなきゃ記者失格なんだとしても、最後に Leeが「人間」でいた事を Jessie には語り継いで欲しい。
狂気の証拠
ラストに現像される1枚の写真。
死体を囲み誇らしげな笑みを浮かべる複数の兵士の写真。彼等は“英雄”なのか“殺戮者”なのか。
戦場カメラマンが記録するのは事象のみで、その判断は見るものに委ねられる。
強烈だった。
戦場の描写もそうだけど、戦禍を生産していく兵士達の心理とか。それらを第三者的な視点で追う戦場カメラマンの目線とか。
否応なしに巻き込まれる。
巻き込まれるが、戦争自体をどうこうできる事はない。ただ、記録し留めていく。
どんな理不尽も、どんな信念も。
戦場でのみ是とされる行為も。
シビルウォーは「内乱」と訳されるらしい。
一国が分断され、その国内で起こる戦争。
この世てで1番崇高で、1番関心を惹かれない戦争かもしれない。
作品中ではなんの利害があるのかまでは明かされない。作品が描くのは“戦時下”で、どちらに正義があるのか、何が原因だったのかも明かされはしない。ただ、内部から瓦解していく国の現状が描かれる。起こってしまった戦争の内情を描いていく。
前半、ソリッドな描写はあるものの、最前線以外は案外のどかだった。BGMにカントリーソングなんかが流れてたような気もする。
戦場にカメラマンになりたいと言う少女が道行に加わったり、同業者を出し抜いて大統領のインタビューを敢行するとか。なんだか拍子抜けを感じてた。
が、中盤以降はさすがはA24…。
人の狂気が克明に描かれていく。
牧場の一角で、無数の死体を埋めている兵士とか…生殺与奪の権限を1人1人が持つのだと思うと、そこに正気なんかが入り込む余地などない。
戦禍に介入する戦場カメラマンの宿命かとも思うが、よくそんな状況で続けられるなと身震いする。
が、前出の少女は覚醒する。
死地に立ち、命の在処を自覚する。戦場カメラマンの資質を発していく。
最前線にシーンが移ってからは息つく暇がない。
まさに命が消し飛んでいく。
フィクションではあるが、フィクションを意識しなかったのは元々あった戦場カメラマンという第三者的な視点が序盤からあったからだろうと思う。
ファインダー越しの視点が、普段目にするモニター越しの視点とダブっていく。作品に絡めとられていく瞬間をハッキリと感じる。
少女は最早、戦禍に取り憑かれてるかのようにシャッターを切っていく。
あと一歩、もう一歩、前へ。
死の境界線を更新していく。
危なっかしいが、そのテンションはよく分かる。
誰も踏み込めない領域の先頭に立つ快感。
そこに立ち続けるにたる命の輪郭。
その結果が、ラストの写真だ。
そのラストに至る直前に、少女と共にしていたベテランのカメラマンは銃弾に倒れる。
宿命とも思える。
その死体を放置し歩みを止めない彼女は、もう一人前の戦場カメラマンだった。
このベテランのカメラマンが担うところは興味深くて…ずーっと沈痛な表情をしている。戦場カメラマンを生業とするくらいだから数多の戦場を渡り歩いてきたのだろうし、有名なのだから成果もあげたのだろう。が、嫌そうなのだ。まぁ戦場なので楽しいはずもないのだけれど。
その彼女は最前線で怖気付いてる。直前の同僚の死が影響したわけでもないだろうと思う。覚醒しシャッターを切りまくる少女とは対照的にカメラを構えようともしない。正直、役立たずどころかお荷物なのだ。
こんな状態の女性がどうやって戦場カメラマンとしてやっていけるのだろう?
そう思ってたとこに突っ込んでくる大統領専用車。
その車に大統領が乗っていないと直感が働いた時、彼女の目の色が変わる。
カメラマンの嗅覚とでもいうのだろうか?少女の資質が覚醒し始めたのだとしたら、彼女は本能が覚醒したかのようだった。
迷う事なくホワイトハウス内に踏み込んでいく。
銃撃戦が始まっても乱射される銃撃の間隙を縫ってシャッターチャンスを拾いまくる。ベテランの勘というか、予測というか戦火を掻い潜ってきた経歴に嘘はないようだった。
そんな彼女が撃たれたのは、彼女の真似をしたのか、少女の勇足であったのか、少女が廊下を横切ろうとした時で、射手は彼女からは見えなかったはずなのに、躊躇なく彼女を庇おうとして撃たれる。
戦場カメラマンの性能というか本能を余すことなく伝えたエピソードだったように思う。
ラストの写真が語るものは何なのか。
銃弾に倒れたカメラマンは、自分達が記録する写真は「母国への警告だ」と言ってた。
理性で戦争が阻止できるなら、戦争なんさ起こりやしないんだろうな。
その顛末が、本作品だと思われる。
皆が好き勝手にやる戦争の恐ろしさ
常に銃口を突きつけられているような緊張感のある映画。鑑賞中、何度も銃声に驚いてビクッとなってしまいました。
何より国家間の戦争とは違う独特の不気味さが印象的でした。
戦闘をしているのがどの勢力なのかも、どんな正義があって戦っているのかもわからないまま主人公たちが理不尽で不透明な暴力に巻き込まれていきます。
中には明らかにどの勢力にも属さない人が銃を取り戦っていたり、内戦を見て見ぬ振りをしながら平和な生活をしている人達がいたり、一体感がなく皆が好き勝手にやる戦争の狂気が感じられました。
ラストはホワイトハウスの職員や大統領が命乞い虚しく西部同盟の兵士に問答無用で射殺され、大統領の遺体の周りを兵士たちが笑顔で取り囲む写真の一枚絵が映り、どこか明るい曲調のエンディングテーマが流れて終わり。
多少無能で国民から信頼されていない描写はあったとはいえ、大統領がここまで命を狙われているの理由が詳しくわからない中でのこのラストは狂気に感じられゾッと背筋が寒くなりました。
しかも、登場人物の一人が仄めかしていましたが、大統領が亡くなった後もおそらく内戦は続くのでしょう。
一番怖かったのは他の人も挙げていますが、やはり赤いサングラスをかけたレイシストに絡まれたシーンでしょう。
普段の生活の中で「こいつは話が通じないな」と感じさせる人間にはよく出会いますが、これこそが戦争の本質なのかなぁと思いました
よかった
けっこう面白かったのだけど、今時フィルム撮影のモノクロ写真に需要があるのだろうか。また戦争場面にドローンが全く活用されていない。現実を描く意図がそもそもなくて、ちょっと違う現実、ファンタジーとして描いているのではないだろうか。しかし、トランプ大統領が再選するようなことがあったらあり得る世界だ。
ホワイトハウスに突入する場面は緊張感があるものの、特にそれほど登場人物に魅力を感じず最後まで気持ちがあまり揺さぶられなかった。アジア人があっさり殺されるのは怖い。
今の世界、絶対起こりえないとは言えないシチュエーションとIMAXも手伝って
IMAXの大画面と臨場感あふれる音響が、アメリカ内戦という近未来的なシチュエーションをよりリアルに描き出しており、観る者を物語の世界へと引き込む。特に、静寂から突如始まる銃撃戦など、シーンの切り替えが見事で、緊張感を高める。
本作は、アメリカという強大な国が内戦に陥るという、決して現実離れした話ではない設定が特徴だ。過去の原住民との衝突の歴史を彷彿とさせ、アメリカ社会の闇を映し出すような側面も感じられる。しかし、物語の核は、国内紛争そのものよりも、若きジャーナリストの成長にある。
百戦錬磨のプロジャーナリストたちとの間で、彼女は戦火を潜り抜けながら、カメラを通して真実を記録していく。恐ろしい現実にも、悲惨な光景にも、レンズを向け続けなければならないジャーナリストの使命感と、その過酷さが描かれている。若さゆえの無謀な行動が招く悲劇は、どの職場でも起こりうる普遍的なテーマであり、観る者に考えさせられる。
特に気に入ったシーンだが、ジェシー・プレモンス演じる赤いサングラスのシーンはYoutubeなどの映画紹介ページでも観られるが、特に緊張感が出ていてよかった
彼は代役だったらしい
このシーンについてはYoutubeの”CIVIL WAR Interview | Director Alex Garland Breaks Down THAT Scene From Controversial Thriller”で述べられている
総評
映像美と緊迫感あふれるシーンは必見だが、ストーリーの奥深さはやや物足りない。ジャーナリストという職業に興味がある人や、近未来的なディストピアに興味がある人におすすめしたい。
映像技術の力によって、観る者を物語の世界に引き込むことに成功している作品だ。しかし、ストーリーそのものについては、若きジャーナリストの成長物語という点で、普遍的なテーマではあるものの、特に目新しい要素はない。
評価
映像:★★★★★(5点満点)
ストーリー:★★★☆☆(3点満点)
総合:★★★★☆(4点満点)
余談だが、109シネマズの3ポイント鑑賞券を利用したため、1900円で鑑賞できたのは地味にうれしい(1300円+IMAXレーザー鑑賞料金600円)
戦場でジェシーの心が変わっていく
前知識無しに見ました。アメリカが分断され内戦が起こっている世界。内戦の理由は描かずに、生々しい戦闘シーンに焦点を当てた作品。
銃殺シーン、血だらけの人、集められた死体、車に轢かれる人等、どぎつい場面が多く、気分がズンと重くなりました。人が簡単に殺されていきます。
途中退出する人もいたのですが、気持ちは理解できました。
銃や砲弾、ミサイルが支配するディストピアンワールド。戦争の恐ろしさが伝わってきます。
内戦とは別世界の、一見、静かで平和な街があり、レジの女性が「私達、関わらないようにしているの」と言うシーンも一種異様でした。
ロケットUSAやラブフィンガーズ等の選曲が素晴らしく、曲を使うタイミングもうまいです。戦争の狂気やどんよりとした重い雰囲気をさら深いものにしています。
戦場カメラマンになりたい23歳のジェシーという女性が登場人物の一人です。
戦場の緊迫した場面で、恐れおののいたり、泣いたりしていたのが、だんだん感覚が麻痺していき... 終盤のとあるシーンで変わってしまった彼女の心を象徴するシーンがあり、この映画の名場面だと思いました。
戦闘シーンで敵が潜んでいる場所を、ヘリや戦車がミサイルで破壊するシーンがあるのですが、兵士が見えないせいか、ゲームを見ているような感覚がありました。でも、人が人を銃殺するシーンは、痛々しく、残酷で、心が引き裂かれるような感覚を覚え、気持ちが滅入りました。
2回見る気がしない映画でしたが、見ておいて良かったとは思いました。でも、内容を知っていたら見に行かなかったと思います。
深みは無いが、銃撃戦は見る価値あり。
なぜ?という視点がないので
内戦で混乱したアメリカに放り出された状態で
しゃあないから登場人物たちの旅によくわからんけど
ついていくかぁって感じの映画でした。
?で始まり、で?って感じのお話。
アメリカ人ならおススメ。
軍事的、政治的リアリティが無さすぎて突っ込みが間に合わない
そもそもの背景となった説明も無く、各勢力の主張や状況がわからず、西部側(と思われる)主人公側の行動原理もはっきりとしない感じ。
以下、突っ込みどころ
・途中の戦闘シーンが小規模すぎ(建物の取り合い?)て、小競り合い程度
・燃えた森林を走り抜けるシーンが意味不明(ただの森林火災?)
・登場車両がほぼハンヴィー(軍隊規模がせいぜい連隊程度)
・市街地戦で超低空かつ近距離で攻撃する攻撃ヘリ(しかも反撃なし)
・味方がやられた後に登場して超近距離で砲撃する戦車(なぜ遠距離砲撃しないのか)
・たった5人に制圧されるホワイトハウス
・終盤、戦闘におびえるベテランリーと無双状態の新人ジェシー
・サミーが亡くなったときは取り乱してたのに、目の前で相棒にリーが撃たれても無視して進んだジョエル
・降伏交渉も無視し、なんの躊躇無く大統領を撃ち殺す現場兵士(ならず者集団ですか)
他にも色々出てくるけど、総じてモヤモヤが残る作品
全220件中、121~140件目を表示