シビル・ウォー アメリカ最後の日のレビュー・感想・評価
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美しい米国で地獄の黙示録
IMAX先行上映で観賞しました。
全然、楽しい気分にならないロードムービーです。
既に有る程度、内戦で社会が機能していないニューヨークから話が始まります。
このため、今がいつで、内戦がいつから始まって、誰が何のため戦っているか分かりません。
この前提で、ジャーナリストが紛争の中心地を目指します。
この間に、いろんな『停泊地』にたどり着き、メインキャストそれぞれのゴールを迎えます。ゴールの情報がよく分からないことも含めて、地獄の黙示録に似ていると思いました。
道中は断続的に戦闘が続いているわけですが、7月頃の『アメリカ流れ者』での情報ではメインキャストはいつどこで発砲されるとか知らされていないらしく、基本てきに緊張を強いられ、音が鳴れば本当に驚いているようです。
戦争映画は戦闘員が付き物ですが、ジャーナリストの旅なので反撃することはありません。これっぽっちも、スカッとする所はないのです。
本国での興業成績が良かったのは、議事堂襲撃事件もあり、銃社会であることから、現実味があるからだと思われます。一方、福田村事件やマイスモールランドを見た上で、都知事や川口市でのことを考えると、我が国でも決して他人事ではないと思いました。内戦なので、核兵器を落とす様な話にはならず、小火器中心のだから一層感じます。
観賞時の心境としては、非戦闘員の映画だと『娘は戦場で生まれた』『マリウポリの20日間』に近いのですが、映画でよく見ていたり、実際に旅行したことがある米国が舞台だと、恐怖がより強くなります。
キルスティン・ダンストは、スパイダーマンのときは『?』と思っていましたが、ドラマ版『ファーゴ』シーズン2から本作へと、素敵な中年女性になっています。
スティーヴン・ヘンダーソンは顔を見るだけで癒やされます。
『エイリアン:ロムルス』に引き続きケイリー・スピーニーはいいですね。だんだん、顔が締まってきます。
あくまでも、A24作品なので万人向けのアクション大作の訳がありませんが、今年見ておく劇作品でしょう。特に、米国大統領前、我が国の総選挙前に。
他人事ではない
戦争の狂気は相手がどこの誰であろうと
狂気であり続けるんだなぁ。
アメリカ国内を二分する内戦が勃発、政府軍劣勢の中で2人のジャーナリストが大統領に直接インタビューするためにワシントンDCに向かう。
現地へ向かうための準備を進める中、クルーの一人である女性カメラマンのリーは、駆け出しのカメラマンのジェシーに出会い、彼女も同行したいと言う。
反対するリーをよそに、ジェシーはリーの相棒ジョエルに話をつけて同行することになる。
彼らにアドバイザー役のサミーを加えた4人のジャーナリストは、カリフォルニア、テキサス両州を中心とした同盟WFの最前線基地のあるシャーロットビルを目指して車を走らせる。
内戦に至った背景やそれぞれの勢力の有利不利は劇中の台詞の中から読み取る必要があるけど、それにしてもよくわからない。何故二分するに至ったのか、何故WF勢力がこれほどの軍力を持っているのか、諸外国の介入はあるのか無いのか、などなどほぼ解説くさいもなは無し。
でも、それは段々必要がない、意味を成さないものであることが理解できる。
そんな事はどうでもいい。今、目の前で国が二つに分かれて同じ国籍をもった者同士が戦闘を続けている。
その理不尽さ、無意味さに裏付けなど必要ないし意味を成さない。
ベテランカメラマンのリーは的確に状況を見、判断して時に慎重に、時に勇猛に進んで決定的な瞬間をフィルムに収める。
リーに憧れるジェシーは、その戦場のリアリティに圧倒されながらリーの一挙手一投足に学んでいく。
そしてクライマックスでのリーとジェシーの突入は、経験し尽くしたリーとまさに経験中のジェシーのコントラストを残酷に、鮮明に表現していく。
実際にあった戦争を描くとついつい実際のエピソードを追いかけるような形になるし、遠未来戦争にはリアリティが無い。
まさかのアメリカ国内の内戦という、そんなことあるかよ、と言いたいけど実は言い切れない微妙かつ絶妙なテーマを、いかにもありそうなエピソードを絡つつ、相手がどこの誰であろうと、戦争は人の心を壊していくものなのだと訴えかけてくる手法は斬新かつショッキングだ。
アメリカ国内ではさぞ居心地の悪い映画だっただろうことが想像できる。
出演者の中ではリー役のギルステン・ダンストの存在感が圧巻。ベテランらしい落ち着きと冷徹さを持ちつつ、駆け出しのジェシーに対する母親のような可愛さと心配をない混ぜにしたような感情、更には戦争に対する複雑な感情を殺しながらの取材などとても難しい感情が自然に表現されていて圧倒された。
相棒のジョエルや師匠のサミーも普段は軽口を叩きながら、命のやり取りをしそうな時の冷静かつ慎重な判断や果敢な行動に、その道のプロとしての矜持を感じさせられた。
ジェシーはもうその成長が…リーならずとも誇らしくなる。
若干ジャーナリズムを美化というか正義と捉えすぎているきらいはあるものの、余計なものを排除したまさに戦場を擬似体験できる秀作。
アメリカ人ならショックで3日間ぐらい寝込みそうだけど、日本人なら冷静に鑑賞できるはず。
万人には勧められない覚悟のいる作品、だけど観た方がいいと言いたい作品。
見慣れた日常風景のすぐ先にある「戦闘の光景」
内戦下のアメリカ合衆国。戦場カメラマンらが1台の車で首都ワシントンD.C.を目ざすという物語は、ロードムービーにありがちな一種の単調さをもって進むが、ここでふと思い浮かべたのが、河川哨戒艇で目的地を目ざす『地獄の黙示録』だった。
まず、ノンクレジット出演のジェシー・プレモンス扮する「赤メガネ男」が劇中随一の強烈なインパクトを放ち、まるで『地獄の黙示録』のキルゴア中佐のようだ。プレモンスの発する不穏な「問い」は関東大震災時の「十五円五十銭」を連想させるが、「正解」が全く読めないうえ、妙にリアルでもある。
またこの映画には、平時ならあり得ない「異質な光景」が、ごく当たり前のように次から次へと出てくる。
たとえば、高層ビル群の谷間を通勤者の自転車と武装車両が並走する“日常の一コマ”だとか、西部開拓史のように揚々と私刑執行する民兵、自らの所属すらあやふやなまま謎の狙撃者と対峙し続ける兵士たち、あるいは内戦なぞどこ吹く風のショップ店員、とかだ。
これら一連の光景が、かつて『地獄の黙示録』で見たシーン——ジャングル奥地に出現した狂乱のプレイメイト慰問ショー、フランス人入植者らの優雅な会食、闇夜の密林に向けて機銃乱射する米兵たちなどと、いつしかダブって見えてくるのだ。
さらに、火の粉舞い散る夜の森に車を走らせるシーンの美しさは、『地獄の黙示録』で機銃掃射のはぜた閃光が闇夜に映えるシーンにも相通ずる。
音楽面にもそれはうっすらと感じ取れる。
本作のサントラは、既存曲のヒップホップ、カントリー、ヘビメタ、エレクトロニック・ロックとオリジナルスコアのインスト曲から構成されているが、ラストに流れる「Dream Baby Dream」は、その声質や憑かれたような歌い回しにドアーズの「The End」の面影がちらついていないか。
また、議会議事堂を携帯式対戦車ミサイルで攻撃するシーンに流れるインスト曲も、どこか「The End」のイントロ部分みたいだ。
一方で、この映画が『地獄の黙示録』と決定的に違うところは、本作の主人公たちがジャーナリストであって、合法的殺人が認められた軍人ではないことだ。彼らは、いかなる状況下でも一方に与することなく冷徹に事実取材の姿勢を貫く。その使命感において国際赤十字や国境なき医師団などと立場を同じくすることが、本作から見てとれる。
主人公たちはストーリー上、「老賢者」「導師」「次代継承者」とでもいえそうな一種の師弟関係を形成し、機銃掃射の真っ只中へ身を投じてゆく——あたかもヨーダ、オビ=ワン、ルークのように。そんな彼らがたどる道筋は、鬱蒼とした熱帯雨林を蛇行する河川ではなく、市街戦が勃発する都市部や比較的ひらけた郊外を走る自動車道だ。
ここには、カーツ大佐のようなカリスマも存在せず、熱に浮かされたような物語のうねり、異郷の密林で展開される哲学的思索もない。ただあるのは、見慣れた日常生活と地続きの「戦闘状態」であり、それこそが本作イチバンの見どころなのかもしれない。
有事の「戦闘状態」とは、決して平時と無縁の非日常などではなく、今この瞬間の延長上にある。そこには精神麻痺した人間がゾロゾロ湧いてきて、理不尽で予測不能な暴力が日常茶飯事となる。そんな「見たくない、知ろうとしないリアル」を、映画は冷ややかに突きつけてくる。
補足:
1)音響面の優れた劇場——ドルビーシネマ、ドルビーアトモス、IMAXなどで鑑賞されることを強くオススメしたい。
2)今さらだが、ミズーリ州のニックネームが「the Show me State」というのは、本作で初めて知った。同州が舞台となった映画というと、『スリー・ビルボード』『ジェシー・ジェームズの暗殺』『ミズーリ・ブレイク』『アウトロー』など、ぱっと思いつくのだが…。いずれにせよ不用意に射殺されないために、この際しっかり覚えておこう(苦笑)。
3)戊辰戦争の時代に戦場カメラマンがいたら、どんな写真を遺しただろう…。
まさに今!という感じの作品
リアルに戦争を感じる
「撃つ」と「撮る」は同じ
アメリカでは大統領選が行われる年に、現職大統領もしくは次期大統領候補をリンクさせる作品が必ずと言っていいほど作られる。ドナルド・トランプの半生を描いた『ジ・アプレンティス』なんかはモロにそうで、本作もその系譜なのは明らかだが、ちょっと違うのは混沌や無秩序、人種対立といった今のアメリカが内包する要素をディストピアとして描いている点。そこにはハト派もタカ派も関係ないカオスが渦巻いている。
カメラマンは、目の前で死にそうになっている人物や、危ない目に遭っている人物を救えない。それをしてしまうと職務放棄になってしまうからだ。「目の前に起こった事を撮影する」のが生業だと、ベテランカメラマンのリーは若きカメラマンのジェシーに説く。それを踏まえたラストの顛末がシニカルすぎる。
「銃を撃つ」と「写真を撮る」は英語では「shoot」、つまり同じ単語。銃は人を殺められるがカメラにはその効果はない。が、時としてカメラには命以上のものを捉えるのだ。
寄せ集めを簡単に仕上げたアグリゲーション・フィルム
Lee: 300. For half a tank and two cans.
Pete: 300 buys you a sandwich.
We got ham... or cheese?
Lee: 300 Canadian.
Pete: ... Okay.
ガス・ステーションでの何気ないやり取り... 信頼性から国際決済通貨や基軸通貨として、世界で最も多く利用されている通貨グリーンバックス (greenbacks:俗称)が作中、映画の出だして、アメリカのインパクトのある惨状を物語っている。
VAMOS, STEELERS
ワシントンDCへ行くまでに彼らは迂回すると言っていたけど... 橋の横にかかれた手書きによる横断幕より... 2度の連覇を達成した唯一のチームPittsburgh Steelers、(略称: PIT)より
だからロード・フィルムってか?
ところでイギリスの新聞 "The Guardian" の電子版では、こんな事も
More than 40% of Americans think civil war likely
within a decade
彼らが知らないように日本人も
そして無関心なロンドン出身の監督は...
The director added that the journalist’s job is
to make other people ask questions — and
that “Civil War” is acting as that reporter,
provoking questions from the audience.
亜流モキュメンタリー・フィルムとしての存在が、人間の尊厳を憐れむ普遍的な心とそれとは真逆に極端なコンサバさが、ゴア表現で人を描き、人の残忍性を視聴者は直視できない。その振り切った左右の両極性をジャーナリズムのプロとして視聴者に伝える行為そのものが、彼らの感情や心の揺れ動きを一切かなぐり捨てた冷酷なほど冷徹さへと人間性を無くしていく過程をこの作品は、シンボライズしている。
全編を通じて作中の一つのタグラインとして主人公達の最終目的が達成された瞬間... 疑似モキュメンタリーとしての安直さがはき違えたプロパガンダへの違和感を生むシーンとなっている。
Joel: I need a quote.
Don't let... Don't let them kill me.
Joel: Yeah, that will do.
カルト至上主義を悪者にすることで反って彼らに快感を与える。この言葉を聞けばのお話...
Joel: There has to be some mistake.
We're American, right?
Soldier: Okay. What kind of American are you?
You don't know?
映画の本質として、黒か白か、右か左か、保守かリベラルかという次元ではない。そして、ある意味、その事が説得力と "box-office" の裏付けとなっている。なぜなら、本作は、自分たちと映画の主人公たちとの考え方がどれほど明確に漠然としていてパトリオティズムをくすぐり、内戦の危険性を楽しむだけに観客の注意を向けさせている為に!? でも製作者の無関心ぶりは浅はかで、まるで部外者から聞いたかのように感じられる。
臨場感のある銃撃戦
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