「救いなどない冷徹な反戦映画」シビル・ウォー アメリカ最後の日 アベちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
救いなどない冷徹な反戦映画
アメリカは昔も今も豊かな国である。特にこの20年位の間に起こったIT及びAI の技術革新とそのビジネスの進化は圧倒的であり結果、国のGDPを押し上げ、1人あたり賃金も大幅に高め多くの人々が更に豊かになった。しかし全ての人に富は行き渡る訳ではなく凋落する産業も多々あり、こぼれ落ちる人々も増えている。
そのような中、ラストベルト地帯の伝統的産業に従事している人々や移民に仕事を奪われた人々を味方につけ、白人至上主義を声高にアピールし復活を目論むトランプ元大統領。
この映画は、まさに今、もしトラが実現しこの先、彼が憲法修正第22条を違反し3期目に就任し更にFBIまで解体しファシズム政権を作ったら、内戦は起きアメリカは悲惨な国に成り下がってしまう。という話である。
誰もが激しい戦闘シーンがどんどん出てくると映画と思っていただろうが、従軍カメラマンたちが大統領のインタビューをとる為にワシントンを目指すロードムービーだった。ガソリンスタンドを占拠する輩、JCペニーの駐車場に落下しているヘリコプター、見えない敵と睨み合いを続ける狙撃兵、戦争に背を向け日常を守っている街もあった。虐殺を続け死体を穴に埋めるアナーキーな赤いサングラス野郎とのギリギリの神経戦を経て、反政府軍はホワイトハウスを襲撃し大統領を追い詰め殺害する。そしてそれらをニコンの古いカメラで撮る。ラストはその白黒フィルムが現像されていく画像であった。そこに救いは何もない。憎しみは憎しみを生み、果てなき戦闘が続いていくのだろう。
このレビューを書いている(2024年10月12日レビュー記入)最中「日本被団協」がノーベル平和賞を受賞した。核兵器廃絶を70年近く訴え続けた功績が世界に認められた瞬間である。この映画は内戦なので核に関する話はないが、内戦の先に他国との戦争があれば核の脅威(核保有国は核の抑止力なる詭弁を論じる)が主題となるだろう。核兵器廃絶は全く見えてこない世界であるがこのノーベル賞受賞が世界平和へ近づく一歩であってもらいたい。
「怖い」という気持ちを生み出して、観た人にあらためて考えさせる、映画の力というか役割を感じさせる映画でしたね。俺は、観て感じることしかできず、行動はないのですが、それでも「(楽しくなく共感もできなくても)観なければならない映画というものがある」とだけは思っています。