「一歩間違えれば死ぬ」シビル・ウォー アメリカ最後の日 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
一歩間違えれば死ぬ
ハピネットファントム・スタジオの宣伝に相当力が入っているようで、最近、ブラウザのポップアップ広告に本作のトレーラーが出続けてやや「鬱陶しいな」と言う印象をもちつつ(勿論、観ずに最短で消しますが)、町山さんもラジオで早い時期に本作を取り上げていましたし(勿論、まだ聴いていませんが)、A24作品ということもあり観逃す手はありません。有料アップグレードせずに出来るだけいい条件で観ようと、TOHOシネマズ日比谷のSCREEN1をチョイス。ただ、小雨そぼ降る平日午前中の回、会員サービスデイの割に大きなシアターはやや寂しい客入りです。
独創的なアイディアでオリジナリティに溢れる作品を世に送り出すアレックス・ガーランド監督。前作『MEN 同じ顔の男たち』はなかなかぶっ飛んでいましたが、本作は「もしこれが現実に起こったら…」と言うリアリティが感じられる世界において、そこに生きる人間の所業に恐怖で打ち震える作品となっています。
若きカメラマン・ジェシー(ケイリー・スピーニー)の成長譚をロードムービーで見せる作品性自体は古典的ですが、ポイントポイントに差し込まれる音楽と幻想的なシーンはそれまでの緊張感とのギャップが印象的。それぞれの立場やキャラクター性でジェシーのメンターとなっていく3人の先輩、リー(キルステン・ダンスト)、ジェエル(ワグネル・モウラ)、サミー(スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン)は、「一歩間違えれば死ぬ」という究極な状況でジェシーを救い、教えることで短期間にみるみる変わっていくジェーシーの様が見られます。中でも、喋らずとも雄弁な様子で絶対的な存在感のキルステン・ダンストはやはり素晴らしい。そして、実生活ではキルステンのパートナーであるジェシー・プレモンスが、今回も相当にヤバい雰囲気を醸し出していて最高です。
ちなみにレイティングはPG12ですが、内容が内容だけに直接的な表現も多くまあまあ注意が必要。また、鑑賞前は大統領選とパッケージで紹介されている印象がありましたが、なんなら、経緯や背景を思い切って端折っていてポリティカルな話は殆どありません。上映時間も109分とタイトにまとめられており、無駄に思えるシーンは一切なく見応え充分。そして、先に進むにつれ逃げ場がなくなっていく状況は、やはり逃げ場のない映画館で観るのが絶対お勧め。是非、覚悟をもって挑んでください。