「人間という生き物の難しさ」シビル・ウォー アメリカ最後の日 シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)
人間という生き物の難しさ
「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランドが監督・脚本で、今話題の作品であるし、間違いなく今年のアメリカ映画の代表作になるであろう作品であり、基本的にアメリカという国は5年か10年おき位にこんな感じの内政不安をテーマにした問題作を必ず作っているので、本作もそんな中の選ばれた1本なんだろうという予想の下で、とりあえず見ておこうという気持ちで鑑賞しました。
で鑑賞結果ですが、映画的には面白かったです。尺も短めでスッキリとした出来上がりになっていて、恐らく若い頃に見たら大絶賛していた様な種類の作品ですが、この歳になって上記した様に同じような種類の作品群を沢山見て来た人間からすると、この作品の源流にある「人間なんて所詮この程度の生き物」という諦観と同様の、後ろめたさと後味の悪さの方が強く残った気がしました。
そして、これはアメリカの危機というよりも“二大政党制”の多いアングロサクソン諸国ならどこにでも孕む内在した危機の様な気がしますね。
本作で示されている非人間的な残忍性などは別に戦争や紛争の時だけに表出するモノではなく、元々人間にある遺伝子レベルの特徴であるかのような描写が、この作品の持つ怖さの様な気がしました。それを言ったらお終いという位に冷徹に人間の本性を描きたかったのかなぁ。
でも、主人公というか狂言回しには報道カメラマンという職業にしたり、その中でもサミーというヒーロー的ジャーナリスト役を配置したりで、人間性も少し挟みながらもラストカットのフォトショットの皮肉を超えた人間性に対する諦観は複雑な気持ちにさせてくれます。
これがこの監督の特色なのかな?後味は決して良くないのだけど、反面本質を見せられて納得(諦め)させられる何処か気持ち良さも感じさせられました。
しかし反面教師として“二大政党制”の危うさを理解しても、アジア・中近東・東欧・中南米諸国に多い“一党独裁制”が良い訳でもなく、人間という生き物を管理制御する理想的な(政治)システムなんて存在しないのかも知れませんね。
日本の様に“二大政党制”でも“一党独裁制”でもない中途半端な国が、案外しぶとく平和を維持出来るのかも知れないとも少しだけ思いましたよ(爆)
でも後味が良くないと言いながらも本作にしても、少し前に見た超胸くそ映画の『ニューオーダー』の様な映画にしても、こんなことを発せられるメディアってもう映画しかないのかも知れないっという事も感じるし、こういうことを発せられない世界こそ本当に人類の終わりの日の様な気もする。