「現代の黙示録」シビル・ウォー アメリカ最後の日 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
現代の黙示録
「シビルウォー (Civil War)」とは内戦の意も、
アメリカ国内では19世紀の「南北戦争」を指す場合が多いと聞く。
本作の舞台は近未来のアメリカ。
大統領の専横に、多くの州が合衆国から離脱し独立を表明、
内戦に突入する。
しかし、単純な二項対立でないことも
事態をややこしくする。
「政府軍」とテキサス・カリフォルニアを中心とした「西部勢力(WF)」、
更にはオクラホマからフロリダにかけての「フロリダ連合」。
後者二つは「政府軍」を追い詰めるも、
単純な合従ではどうやらなさそう。
「戦場カメラマン」の『リー(キルスティン・ダンスト)』と
ジャーナリストの『ジョエル(ヴァグネル・モウラ)』は
大統領の独占インタビューをものすべく
陥落間近の「ホワイトハウス」をニューヨークから車で目指す。
そこに老齢の記者『サミー(スティーヴン・ヘンダーソン)』と
駆け出しの写真家『ジェシー(ケイリー・スピーニー)』も加わる。
本作はその四人が体験する内戦の実際。
アメリカは建国以来、二百五十年に渡り
他国に蹂躙されたことはない。
また内戦も、百六十年は経験していない。
他国を攻撃したり、内戦に介入することはあれど、
自国内でのそれは忘却の彼方。
ではそれが身近で実際に起こった時に
人々はどう行動するのか。
世界の基軸通貨であるはずの弗は価値を失い、
他国の貨幣が信用される始末。
自警団よろしく武器を手に、隣り近所との諍いはエスカレーション、
日頃の憤懣が噴き出す。
また、ある者は私兵と化し、
外見や出身州の違いとの勝手な理由で
容易に殺戮を繰り返す。
我関せずと日和見を決め込む州。
一致団結し、普段の暮らしを維持するため
治安を固める町もある。
対峙しているのが誰かも、
敵か味方なのかも解らぬのに
相手が倒れるまで互いに狙撃を繰り返す兵士。
一体、誰にために、何のために闘っているのか。
市民同士の争いは、その理由さえもあやふやに。
最年少の「マグナム・フォト」として名を馳せた『リー』も
今まで撮って来たのは他国の惨劇。
それが自国内で起こり、身近な関係者にも理不尽な暴力が及んだ時に
果たし今まで通りの心理状態でカメラをシュートすることができるのか。
そうした体験をしながら、四人は
「ワシントンD.C.」へと進むのだが、
はて、この図式は過去に観たことがあるぞと思い至る。
〔地獄の黙示録(1979年)〕で
『カーツ』の「王国」を目指し
『ウィラード』が「ヌング川」を遡上するのと近似ではないか。
だとしたら終局も・・・・。
昨今のアメリカの分断を反映した、
起こりうる未来の映像化との見方もできようが、
紛争地帯では現実に起きていることが
幾つも描かれている。
全ての人間の奥底に恐怖と闇が巣食っていることを
如実に指し示す。