劇場公開日 2024年10月4日

「歴史的傑作であり渾身の警告」シビル・ウォー アメリカ最後の日 ぱんちょさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0歴史的傑作であり渾身の警告

2024年10月4日
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鑑賞方法:映画館

かなり期待してたんだが、その期待をも上回る歴史的傑作来た!
現代に蔓延る分断の行き着く先にあるのがどんな地獄なのか、我々にとっても近しいアメリカを舞台に見せる地獄巡り。我々にとっての「神曲 地獄編」であり「地獄の黙示録」だが、戦場を巡りきっているベテラン3人に同行する観客は若きカメラマン ジェシーに感情移入出来る親切設計でもある。
そして、我々が訪れたことがあったり、ニュースや映画、ドラマなどで慣れ親しんだアメリカの光景のなかで行われる内戦…
マンハッタンの街中で星条旗を掲げて行われる自爆テロ、普通の大学らしき建物での銃撃戦、普通の農場に埋められる無数の死体、カレッジフットボール場の難民キャンプ、見知らぬ国で行われていた内戦とはこういうことだったのだな、と気付かされ震えてくる…
そしてワシントンD.C.包囲戦の迫力たるや…
ドラマで見慣れたホワイトハウスを高く囲うバリケードとそれを撃つ戦車、突入する軍隊、xxと写真を撮る兵士たち。いつかどこかで見た内戦の光景…
こんな世界にしてはならない、というアレックス・ガーランドの叫びが聞こえてくるよう。特に、アレの最後の台詞が出色。

音響が特に素晴らしかった。銃声のショッキングさ、無音、ポップミュージック、最大限の効果であり得べき世界を「体験」させられた。
今度の大統領選でトランプが選ばれても、選ばれなくてもこの未来に辿り着きかねないことが本当に恐ろしい。

演者も皆素晴らしい。初めてキルステン・ダンストを良い役者だと思った。また、特に素晴らしかったのはジェシーを演じたケイリー・スピーニーの段々と変わってゆく顔付きと、普通のアメリカ人をやらせたら右に出るもののないジェシー・プレモンスの『What kind of American, are you ?』。

どんな国だって分断が進めばああなる可能性があるんだ、という渾身の警告。

ぱんちょ
ぱんちょさんのコメント
2024年10月10日

あらためて。
国家間の戦争は正規軍同士によって行われるし、本来は国際法に縛られる。たとえは、捕虜を虐殺したり拷問してはならない、など。
いっぽうで内戦は参加者が不明確だし法の規制が一切働かないためな残虐化しやすい。それは各国の内戦から既に明らかになっている。
大学での処刑とか、農場の穴の中とか、あれはイマジネーションの産物ではなくて、実際の歴史に基づいている。それを意識的に怖い…

ぱんちょ
ぱんちょさんのコメント
2024年10月5日

再見
ジェシー・プレモンスのシーン、「落ち着いて、クリアな英語で答えるんだ」って言ってて、まさに『福田村事件』。つまり日本でも同じことは起きていたし今後も起きうるということ…

ぱんちょ
ぱんちょさんのコメント
2024年10月4日

そして本作に対する最高の副読本がこちら。
歴史上の内戦がどういう条件の下で始まるのかをを分析した書籍。

バーバラ・F・ウォルター著
「アメリカは内戦に向かうのか」

ぱんちょ