ガール・ウィズ・ニードルのレビュー・感想・評価
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歪んだ坂道に背筋が凍り付きます
映画館で知り合った方からお誘いを受けて試写会に行って参りました。
もはや正気の沙汰じゃありません。
映画自体が凶器です。(褒め言葉)
人によっては刺し殺されるような衝撃を受けてしまうと思います。
描写に関してはドギツイ表現はほとんどないのですが、白黒映像で綴られる「悪意」を感じ取った人にはかなり衝撃的な作品になるのではないでしょうか。
とはいえ、上映後のインタビューで監督も答えていましたが、映像を白黒にし、ドイツ表現主義の作品を参考にしてセットを歪ませ、果てはお伽話からも着想を得るなど、現実と映画の中の虚構にきちんと境界線を設けています。
それを感じ取れた人ならば本作の映像が持つ説得力を存分に味わう事ができたのではないでしょうか。
濃淡のみを追求したシーンなどは目を見張る出来映えでした。
勿論、ロケーションの選び方も秀逸。
中でもダウマーの菓子店に向かう坂道がとんでもない!
左右に歪んでいる石畳みの坂道が観る者に不安を与えてきます。
ダウマーが乳母車を押して下っていくシーンでは恐怖すら覚えます。
乳母車が下るというだけで「戦艦ポチョムキン」も頭を過り、更に背筋が凍りました。
導入直後、主人公を共感できない人物として描いた点も良かったです。
子供に「ネズミが出る」と言って脅し、負傷兵の夫に「出ていけ」と叫ぶ姿から「自分勝手な主人公だ」という考えが頭の中で増殖してしまうのですが、ある事をきっかけに彼女の中で変化が起こり、ラストシーンへと集約されていきます。
救いがない実話を虚構として描き、綺麗に纏めた見事なラストシーンだったと思います。
貧困と尊厳
今の自分なら色々言えるが、同じ立場だったらどうだろうか・・・。
主人公は貧困、無教養、世間知らずの3拍子が揃った23才の未亡人?
晩年のアルパチーノ(まだご存命だけど)を思わす風貌だけど、あちらでは美人なのかな。
闇で養子斡旋をしている女性は主人公女性の面倒まで見るなど、心底困っている人を助け正しいことをしていると考えているが、裁判であの女性を責めた母親たちが多かったことの方がより驚かされる。
主人公同様に面倒見れきれなかったから預けたのではないのか。
ただ本作に登場する女性たち皆を一様に責める事はできず、モヤモヤした感じで映画館を出る、そんな映画でした。
またモノクロってあんなに清潔感がなく見えるものなのかと何となく思いました。
子を生すことが女にとっての罪業となるのか?
夢に出る。
正しいことをした
合わなかった。この美しく撮影された陰鬱な寓話にハマらなかった。期待していた作品とまるで違った。(社会的に搾取される職業としての)お針子たちが消えていって社会における女性の立場の弱さや構造上の問題を突きつける作品かな…なんて思っていたら、早々に替わるし全然違った。ただ、象徴的なファーストシーンから強烈に引きのある画が続き、心に棲み着きそうなこと請け合い。
"裕福で善良な人々"。縫製工場長の金持ち坊っちゃんに旦那、そして口の裂けた赤ちゃんと、男性キャラの肉体的損傷や欠損、障害といった要素(=サーカスという見世物"バケモノ")はどういうことだろうか?なぜ消す必要があったのだろうか?戦時下・戦後と、出兵により男性が減ったであろう時代=女性にもさらなる負担がかかった時代において望まれぬ命。日々生きるのでやっと精一杯で、他の命にまで責任取れないかもしれない。目障りに思って命を奪おうとまでしたり。ただ、それでも…。
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【鑑賞前期待コメント】
この第一次世界大戦後のデンマークを舞台にしたゴシック・ミステリーは、独特な雰囲気に呑まれるような予告だけでも目が離せず興味をそそられる!白黒映像美の撮影に美術、音楽・音響と期待。そして、タイトル通り、歴史的に女性のイメージが強いお針子という職業の主人公からして、きっと広く観られるべき社会性が本作にはあると確信している。
「あんな悲惨な時代だったから仕方がない」で済ませてしまって良いのだろうか?
最初の頃は、誰が主人公で、どんな話なのかがよく分からない。
やがて、勤め先の御曹司の子供を身籠り、戦争から傷痍軍人として帰還した夫に「出て行け」と言い放つ女性が、主人公であると分かるのだが、余りに自己中心的な振る舞いのせいで、中々感情移入することができない。
案の定、御曹司から捨てられた主人公が、サーカスの見世物になっている夫とよりを戻し、出産した子供を養子の仲介者に託すところで、ようやく、どんな話なのかが分かってくるものの、ここまで、プロローグとしては長過ぎるのて、もう少しテンポ良く描けなかったものかと思ってしまった。
物語のポイントとなる養子の仲介にしても、「闇」でやっていて、しかも、子供を預ける側から手数料を徴収している時点で、その実態が容易に想像できてしまい、それが明らかになっても、さほど驚きを感じなかった。
ここでも、案の定、悪事がバレて、乳児たちを殺めた犯人は逮捕され、裁判にかけられるのだが、その一方で、主人公に何のお咎めもないことには、どこか釈然としないものを感じざるを得ない。
例え、知らなかったとは言え、主人公は、乳児の殺人に明確に関与していた訳だし、麻酔薬のせいで意識が朦朧としていたのだとしても、主犯の女性と共に、1人の乳児を死に至らしめたのも確かなのである。
「子供は宝だから絶対に手放すな」と言っていた主人公の夫が、終盤、子供を手放したことを「それが一番だ」と言ったことにも、今一つ納得することができず、ここは、身勝手な主人公を非難するような一言があっても良かったのではないかと思ってしまった。
悲惨な物語の末に、主人公が、同居していた少女を養子として引き取るラストからは、仄かな希望が感じられて後味は良いのだが、その一方で、「あんな時代だから仕方がなかった」という理屈で、主人公のすべてが許されてしまったかのようにもなっており、「本当に、それでいいの?」という疑問も残った。
映像美に呆然とする2時間
夫は戦場へ行った
モノクロといい、第一次大戦といい、かつての名作を彷彿させられました。カロリーネが帰って来た夫に向かって、「出て行け!ここから出て行け!」と怒鳴り散らしたのは、これから始まろうとする、救われる人生の為(私はそう思いますが)なのが、癒されの想いを持ちました。
…にしても、路上合体とは
65点ぐらい。オープニングが1番いい。
主人公目線でドキドキする傑作
戦争に直接参加しなかった戦争犠牲者
第1次世界大戦の終戦直前のデンマーク・コペンハーゲンで、夫が戦争に出たまま1年以上連絡が無く、針子として働きながら、貧困生活を送っていた女性カロリーネは、夫が死んだと思い、新たな恋をし、会社の社長と結婚を約束した。お腹に赤ちゃんを抱えて、社長の母親に承諾をもらいに行ったところ反対され、彼は母親の言いなりになり彼女を捨てた。そんな時、公衆浴場でダウマという女性と出会った。ダウマは表向きはお菓子屋を経営していたが、その裏で秘密の養子縁組機関を運営していて、貧しい母親たちが望まない子どもを里親に託す手伝いをしていた。かろりーは、出産後赤ちゃんをダウマに預け、我が子が里親に出された後、ダウマの家に住み込みで乳母として働くことになった。彼女はダウマに親しみを感じていたのだが、ダウマの行っていた里親に関する恐ろしい真実を知り・・・さてどうなる、というという話。
実話ベースとの事で、どこの国でも戦争未亡人(後で未亡人じゃ無いことがわかったが)は生きるために大変だったんだろうと思った。
貧困から抜け出そうとして、玉の輿に乗ろうとした事を責めることは出来ないな、とも思った。
公衆浴場での針を持ち込んでのシーンは迫力あり、とてもカラーでは見れないだろうと思った。
カロリーネ役のビク・カルメン・ソンネもダウマ役のトリーヌ・ディルホムも必要なら裸体を披露するという姿勢は素晴らしかった。
しかし、戦争は勝っても負けても悲劇しか生まないのだろうとあらためて思った。
何とも言えない映画
モノクロームの社会派ドラマ
モノクロームの映像で綴られる見ごたえある社会派ドラマ。
白黒の画面から、生活にあえぐ庶民の苦しい生活にリアルさがにじみ出る。
戦争で男性達は徴兵にとられ、女たちの働く工場は軍服を縫製する。
(一応、工場勤務なのに家賃滞納を続けてしまう主人公は、借金? ホント何に使っているんだろう?)そこら辺不思議には思うけれど、家を失い追い詰められた主人公が、さらに絶望の底に落とされる。
やっと帰ってきた夫への態度も、優しくもあり酷くもあり、揺れ動く心模様が、これまたリアル。
自分の苦境から、中年女性にすがりつき、歪んだ共依存が引き起こす、不協和音アンサンブル。
女性たちも、美しく見える瞬間も有り、不潔さが際立って見える瞬間も有る。
逃げ場のない世界の絶望の中で、ラストに少しだけ光が見えた。
北欧ミステリーの新たな1作
闇の中にある微かな光
《試写会にて鑑賞》
舞台は第一次世界大戦後のデンマーク。
コントラストの強い美しいモノクロ映像で描かれた
北欧ゴシックミステリーをしっかりと目に焼きつけました。
幸福から絶望へ。心を突き刺す作品。
傍観者ではいられない。
100年前の堕胎方法がまさかの…。
貧困と男性優位社会は、
現代の社会問題にも通じるものがありました。
直接的な描写はなくとも
ひとつひとつが生々しく痛々しい。
ホラー好きとしては個人的にとても好きな作風でした。
ラストは弱めでしたが濃密な123分でした。
俳優さんの目の演じ方が見事で
ダイレクトに感情が伝わってきました。
心理的恐怖を煽る音響、美術、画角、カメラワークが完璧。
本日はありがとうございました。
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