「残酷な生と儚い死の狭間」ガール・ウィズ・ニードル ihatakaeightさんの映画レビュー(感想・評価)
残酷な生と儚い死の狭間
第一次世界大戦後デンマーク。縫製工場で働くカロリーネ。貧困にあえぐ彼女は、借家を追い出され、恋人に裏切られ、妊娠の中、絶望の淵にいた。そんな折、表向きは砂糖菓子店、裏は育児放棄された赤ん坊の養子縁組の仲介をしている女ダウマと出会う。カロリーネはダウマの仕事を手伝うにつれ、彼女の恐ろしい真実を知ってしまうのだった。
モノクロ画とディストーション音は、残酷な生と儚い死の狭間を観客に想起させる。現代の価値観で測られない残酷さがテーマで、救いがない。仏教でいうところの「無間地獄」だ。詳細は避けるが、当時の市井の人々の語られぬ真実とその語られぬ社会の綻びを誰が縫うのか、そして背負ってしまった「夜叉」を誰が救えるのか、観客に問いかける。
救いと言えるかわからないが、主人公カロリーネは善人ではない。おそらく当時の価値観でも結構な「ガタピシ」さんだと思う。おかげで感情移入が出来ず良かったかもしれない。
映画としての完成度は非常の高いと思いますが、テーマが重く、残念ながら鑑賞後のスッキリ感はありません。幕が下りた後の劇場からの「持ち帰り割引ポップコーン」のCMに救われる、そんな一本でした。
コメントする