がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン : インタビュー
「スクール・オブ・ロック」でダメ男と子供たちの交流をおかしくも熱く描いたリチャード・リンクレイター監督が、今度は音楽を野球に変えて、あの名作「がんばれ!ベアーズ」をリメイクした。どのような思いでこのプロジェクトに臨んだのか? その心境を聞いてみた。
リチャード・リンクレイター監督インタビュー
「僕は野球の奨学金で大学に行くつもりだったんだよ!」
聞き手:渡辺麻紀
――オリジナルとほぼ同じなので驚きました。
「なぜなら、そのオリジナルが素晴らしいからだよ。よくできた物語にわざわざ手を入れる必要はないだろ? 僕は今回、このリメイクは演劇と同じだというアプローチを取ったんだ。例えば『欲望という名の電車』を公演する場合、舞台監督はオリジナル通りにする。それと一緒だと考えたわけだ。ただ、現代風にアレンジした部分もあるし、主人公のコーチをビリー・ボブ・ソーントンが演じたことで、ビリー・ボブライズ(ビリー・ボブ化)した部分はあるよ」
――それは「女」ですね!
「そうそう。ビリー・ボブにはセクシーな雰囲気があり、いつも女性を狙っているような感じがする。少なくともオリジナルのウォルター・マッソーよりはね(笑)。だから今回、ストリッパーが応援に来たり、チームのお母さんと寝ちゃったり……そんな遊びをちょっと入れてみたんだ」
――あなた自身に野球の経験はあるのですか?
「実はヒューストンの高校野球で大活躍していたんだ。自慢するわけじゃないけど、足がとても速くて盗塁100回という記録を持っている。野球の奨学金で大学に行くつもりだったんだが、心臓が悪いことがわかって野球を断念し、180度ちがう映画に方向転換したんだよ。テキサス出身だからなのか、映画監督になるより野球選手のほうがまだリアリティがあったくらいでね(笑)」
――それじゃあ、このリメイクの話が来たら大喜びだった?
「そう! もう最高に楽しい仕事になったんだ。映画会社は『スクール・オブ・ロック』と同じスタジオで、僕がコメディもできるし子供の扱いも上手いというので、この話を持ちかけてきた。で、僕が『実は野球も大好きで……』と話すと彼らもびっくりしていたよ(笑)」
――では、野球好きのあなたが考えるいい野球映画の条件とは?
「まずグラウンドが中心であること。そこでどんなプレーが描かれ、それがどうストーリーに組み込まれているか。『さよならゲーム』『ナチュラル』『エイトメン・アウト』、そして『くたばれ!ヤンキーズ』等がその条件を満たしていると思う。あ、もちろん『がんばれ!ベアーズ』もね」
――あなたの撮る映画はバラエティに富んでいます。それは文武両道なバックグラウンドも影響しているのでしょうか?
「そうかもしれないね。僕が映画監督になろうと思ったのは大人になってから。つまりそれは、大人の視点で映画を考えられるということだから、ひとつのジャンルに留まっていないのかもね。それに僕自身、さまざまなことに興味を持っていて、そんな僕を表現するためにはやっぱり100種類くらい映画を作らなきゃいけないと思っている。もしかしたら自分の人生の目的は、自分をいかに表現できるかというプロジェクトなのかもしれない。そして、できるならそれを楽しみながら作っていきたいと思っている。その点でも『がんばれ!ベアーズ/ニュー・シーズン』は僕の大好きな映画と野球が合体した、最高に楽しい経験になったね」