「静謐さの中に見た微かな光」私たちが光と想うすべて ひでちゃぴんさんの映画レビュー(感想・評価)
静謐さの中に見た微かな光
舞台はインドのムンバイ。
主人公プラバは看護師をしていて仕事の同僚でルームメイトの
アヌのふたりを中心に描いている。
プラバは結婚していて夫はドイツで働いているらしいが、
どうにもその縛られっぷりが見ていて痛々しい。
インドの文化の一端を、あらためて認識することとなった。
アヌは明るい性格で、今どきの女性と言えるだろう。
それゆえ彼女の生きづらさを様々な場面で感じるのだ。
特に男性とのコミュニケーションについては、周囲が閉鎖的な考えをしているため
息苦しさが観客である私にも伝わってきた。
場をラトナギリに移してから、少しばかりの自由さをアヌの行動から感じ取ることができるし、
私の好きなシーンである、おばさんとのアヌとのインドの楽曲にのって踊るシーンにおける
アヌの表情はこちらまで明るくしてくれる。
一方、プラバは海岸に打ち上げられた男性を胸骨圧迫と人工呼吸で蘇生させたことから
その男性を夫と間違えられるわけだが、
夫と見立てての男性との会話は、現実世界における夫に対する気持ちが率直に出たのだろうと思う。
決別したいとの思いが。
プラバはムンバイにいたときには考えられなかったであろう、意識変革が起きる。
アヌと彼氏を祝福するのだ。
そのシーンがカラフルに彩られた電球に照らされ、これがタイトルの“光”とオーバーラップし、
きっと希望の光なのだろうと思った。
じんわり心に沁み入る良作だ。
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