劇場公開日 2025年7月25日

「鑑賞後に感じる深い余韻でとんでもない名作を観たのではないかと感じさせる一品」私たちが光と想うすべて Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 鑑賞後に感じる深い余韻でとんでもない名作を観たのではないかと感じさせる一品

2025年7月29日
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鑑賞方法:映画館

この映画、鑑賞後感が非常に良くてちょっとびっくりしました。映画を観ている最中にはそれほどでもなかったのですが、エンドロールをぼーっと眺めていると、あー、今日は本当にいい映画を観たなぁという満足感に全身が包まれてゆきます。晩ご飯の後に飲んだ一杯のお茶のようにこの作品の持つ滋味が五臓六腑にしみわたり、まあ人生ままならないこともいろいろあるけど、明日からも生きてゆくかという気分にさせてくれます。

主な登場人物は看護師の同僚で住処をシェアしているプラバ(演: カニ•クスルティ)とアヌ(演: ディビヤ•プラバ)の二人、そして彼女たちの勤める病院でまかないの仕事をしていたけど、住まいの立ち退きを要求されて郷里の海辺の村に帰ることになったパルヴァティ(演: チャヤ•カダム)。この女性3人を中心に物語は進みますが、前半を引っ張るのはムンバイの街です。ムンバイはインド最大の都市で人口2000万弱とのことでケタ違いの大都会。この映画では特にその夜の喧騒をよく捉えています。また、ムンバイを走る電車の捉え方が秀逸です。夜のムンバイを走る、東京で言えば京浜東北線か東海道線のように都会の中心と郊外を結ぶ電車。警笛を鳴らしながらガタンゴトンと走る、外から見たロングショットもいいですが、中の様子を撮したショットもいい。大都会の電車には人がたくさん乗っていてもなんともいえない寂寥感と哀愁があると思うのですが、これはインドでも日本でも同じなんだと感じました。

その電車に乗って、異教徒の恋人の住む街へその恋人に会いに行こうとするアヌ(ヒンズー教徒でしょうね)。彼女は「スパイになった気分」と言い、店でムスリム女性が身につけるブルカ(例の全身を覆うあれですね)を購入し、それに着替えて電車に乗ります。色は黒で外からは目の部分しか見えませんでした(結局、事情があってその日は会えなかったんですけど)。異教徒と恋愛をするというのはこういうことなのだ、それを簡潔に映像で表現していて見事でした。

郷里の海辺の村に帰ることになったパルヴァティ。プラバとアヌもその海辺の村へと旅行します。前半のムンバイの喧騒とは打って変わって後半は海辺の村の幻想的なシーンが続きます。そのコントラストがいいです。特に秀逸なのが終盤に登場する浜辺に建てられた「海の家」の紛い物みたいなふた部屋続きの横長の掘立て小屋みたいなお店。その小屋の前にテーブルや椅子が並べられて飲み物が提供されるような感じのお店なのですが、インド洋からの強風であっという間に飛ばされそうな造りです。でも夜に電飾を施されるとなぜか美しい。郷愁も感じます。メインの3人の女性とアヌの恋人が夜、その店に集うのですが、なぜか目頭が熱くなりました。この先、この人たちの身の上にいろいろなことが起こるでしょう。思い通りに進まないことのほうが多いかもしれません。でもどうか、今日よりはよくなる明日を信じて前進してほしいと心から願いました。

本当にとんでもない名作なのかもしれません。

Freddie3v
Mさんのコメント
2025年8月2日

「なぜか目頭が熱くなりました」全く同感です。
ラストシーン、よかったです。

M
ひろちゃんのカレシさんのコメント
2025年8月2日

お邪魔します。
登場人物達を応援したくなる作品だと思いました。

ひろちゃんのカレシ
あんちゃんさんのコメント
2025年8月2日

共感ありがとうございました。監督がインドではロマンスは政治だって話していたようです。背筋が一本入っているということでしょうか。折り目正しい作品でした。

あんちゃん