「人類不変の悩みを描いた現代の寓話」サブスタンス REXさんの映画レビュー(感想・評価)
人類不変の悩みを描いた現代の寓話
とんでもなくかなりぶっ飛んだラストは、映画へのオマージュがあふれていた。
ある程度予測した通りに話は進み、あれ?まだ続くの?と感じ始めてラスト30分。やられたー!と思いました。まさかの!あの名曲がここで!確かに新たな何かが生まれちゃったけど!
そして悲しみと怒りの血しぶき!
これってキ○リー?
ここまできわどい演出をしたのは、あまりにもそのまま終わると痛々しすぎるからだろうか。ジャンルはホラーとはいえ、同じ女性故に、形容しがたい苦みが胸に残った。
映像は斬新でスタイリッシュなミュージックビデオのようでありながら、一週間ごとに入れ替わらなければならないという不条理な制約やルールを破り身を滅ぼす顛末は、古今東西のおとぎ話や寓話に共通するものがあって、古典的な印象も残した。
老いていく自分と向き合えず、追いかけてくる若き日の栄光にしがみつく。
覚えてもいないイケてない同級生からの、泥水に落ちた電話番号の切れ端に一度は救いを求めるも、結局そんな自分も許せない。
そんなエリザベスが陥っている状態は、仏教では執着といい、かなり醜い心理の一つだけれども、誰しもが歳を重ねると大なり小なり同じような苦しみを味わうだろうし、どちらかというとエリザベスに歳が近い自分も、彼女を笑い飛ばすことはできない。
スーを取り巻くステレオタイプの男性たちや、若い女性の上澄みだけを搾り取り、使い捨てにする業界への批判も盛り込まれているが、それはハリウッドだけではなく、社会全体にはびこるルッキズム批判でもあるだろう。
しかし結局は、エリザベスが、今の自分を好きになることができないことが一番の原因なんだな。スーも、目の届かない場所へエリザベスを隠し、常にエリザベスの存在を恐れている。老いと向き合い、今の自分を受け入れ、前を向くこと。
それは永遠の難題なんじゃないだろうか。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。