「変幻自在のジャンルミックス」サブスタンス クロネコの戯言さんの映画レビュー(感想・評価)
変幻自在のジャンルミックス
ぶん殴られたような感覚。
やはりエロ×ホラー×コメディの親和性の高さとその確実性を痛感した。
あのアップテンポの編集が小気味よく、引き付けられずっと見ていられる。
セリフを最小限に抑えつつ142分にも及ぶ映像作品を浴びせ続けられたような。
主人公の若さと美への渇望が我を忘れさせ、取り込まれていくというまあ既視感のあるストーリー・構成を見事に視覚的に映像で表現してみせた。心理的な葛藤もさることながら、自分自身の肉体が若くなりその代償として元の肉体が老化するなどというのではなく、人格を素にした個体が分裂するという設定がミソで、この点が大きく本作の魅力を格段に押し上げている。いわゆる「ドッペルゲンガー」とも異なる、フューチャーされるのはあくまでもルックス(若さと美貌)。地位や名誉はそれに付随する価値であり、より良いルックスこそが至上。
ラストに関しても、エンドはハッピーとバッドを問わずどちらにせよ上手く収めてくるのだろうなと思っていると大間違いだった。ここまで吹っ切れるとは。しかもそれが違和感なくある種のカタルシスとして笑いに昇華される心地良さ。ラストのラストでは始まりのマンホールにて消える始末。いや、上手いんかい!と笑 それはそれなりに上手くまとめてくるんかいという愛らしさ。決していやらしくない皮肉でキマッてる結末。
繰り返すように、エロもホラーもコメディもこれらの3要素は作り手のさじ加減でどれにも振り切ることができる。それはカットサイズ感だったりリアクションだったり音だったりと、いかようにもコロコロと緩急自在でジャンルを循環させられる。野球で例えるならキレキレのストレートとチェンジアップのみならずもう1球種決め球があればまあ一線級の投手になれる。ましてテンポがいいのだから間違いない。これは怪作快作。
恐れ入りました。
