「見事なラストシーン」ANORA アノーラ TRINITYさんの映画レビュー(感想・評価)
見事なラストシーン
今年のアカデミー賞で最優秀作品賞&監督賞&主演女優賞&脚本賞&編集賞の5部門を制した「アノーラ」
大金持ちに見初められた娼婦が右葉曲折した結果幸せになる令和のプリティウーマン的なシンデレラスーリーを想像してたら、なにこれ、全然違う!令和のシンデレラにはやはり厳しいリアルな現実ですか
世相を反映しちゃって夢物語なんて甘々なストーリーなんか受け入れられないって事ですね
過去はほとんど語られないけど多分移民のシングルマザーの貧困家庭育ちのストリッパー、アノーラちゃんの泥沼人生
23歳の若さで男をみる目なんてないアノーラちゃんは、どう見ても駄目男案件の金持ちドラ息子とノリのベガス婚しちゃう
信じてない表情に現れる夢と希望と愛を感じさせるアノーラの巧みな芝居が素晴らしい
案の定の展開で2人のおままごと結婚を邪魔する父親の手下達の登場
彼らのデタラメさが予想外で笑っちゃうレベルの無茶苦茶かげん
これがあちらの国での倫理感のリアルなんでしょうね
映画でしか見たことないけど世間にのさばっているロシアの金持ちと手下達はこんな風に傲慢で無法地帯さながらの行動をとりそう
付き従う手下もみんな嫌なヤツ
なんて杓子定規じゃないキャラクター設定もリアルでほのぼの笑っちゃう後半戦
ここは法治国家アメリカだぞ!
なんてツッコミ入れたくなるほどめちゃくちゃな行動をとりまくるし、若者に説教しだす辺りがもうね、笑いねらってますよね?
強いアノーラが男を信じてハチャメチャに戦う姿も好感もっちゃうし、キャラクター設定と脚本の捻りが凄く効いていて魅力満載
昨年のアカデミー賞の大作オッペンハイマー
歴史に残る殺戮兵器を生み出した科学者の苦悩に比べるとやはりインディペンデント系だけにスケール感の小さい物語
だけどそこにはストリップダンサーの受ける差別と権力者の傲慢さが簡単に人を踏みにじる様コミカルに描き出したのは凄い
かすかに見えた愛の光を掴み取り、偽りの幸福からまたどん底に舞い戻るアノーラの感情の起承転結の見事さ
ラストシーンのアノーラの行動
独りぼっちで戦っていたアノーラに唯一味方してくれた彼
優しさのお返しに、強がるアノーラのあげられるものの悲しさ
娼婦扱いされるたびに「私は娼婦じゃない!」と強がっていた小さなプライドが砕け散る瞬間
全てが集約されているラストシーン
突きつけられた現実に心の堤防が決壊した瞬間
お見事です
2人はこの後どうなるの?
そんなの関係ねー!
夢なんかないよ!の無音エンドロールですね、はい
私ここでゴリゴリヒップホップなエンドロールが聞きたかったです
色んな味のするスルメ映画でした