「コメディーっぽい内容の中にリアリティもあって、没入感がある」ANORA アノーラ ジュンヤさんの映画レビュー(感想・評価)
コメディーっぽい内容の中にリアリティもあって、没入感がある
この映画のショーン・ベイカー監督の前作「レッドロケット」もそうですが、男女の関係性のネジれや辛い部分を描いた後に、ドタバタ劇が入ってきて、最後は本心を曝け出した上で一つの方向性を示した終わり方がなんとも後味がいいです。
「24時間ホワイトチャペル」から突然ギャグパートに入った感じで、ある意味悪ノリしたような展開になって、カオスな会話劇になるのですが、合間合間のシリアスなシーンにぽろっと大事なホンネの台詞が挟んであるのがたまらない。
女の体の価値をよく理解していて、それをお金に変えていたアノーラは、資産家の息子に見初められて結婚まで漕ぎ着くが、根本の所では遊び楽しむための価値でしかなかった事に気付かされて傷ついてしまう。
一方で冴えない平凡な男で、さらに女好きでもないのでアノーラの価値を全く理解しないイゴールに、優しさを感じて泣いてしまう。
信じていた価値が実は重要なものではなかったので、ショックを受け傷ついてしまった。
だけどそんなものが無くても優しくしてくれる事を知って、嬉しくて泣いてしまった。
シーンとしたエンドロールでそんな事を考えさせられるいい映画でした。
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