「遂にショーンベイカーの時代が来た」ANORA アノーラ ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
遂にショーンベイカーの時代が来た
確かにショーン・ベイカーの突き抜けた一作になった。この人にとってはセックスがほぼハグしたり抱擁したりキスしたりダンスしたりと等価で出てくるのでエロいというより笑ってしまうのが毎度のこと。その中では伝え聞いていたプリティウーマン的シンデレラストーリーをどうやるのかと思っていると前半で確かにそのようなポイントに向かって真っ直ぐにハッピーストーリーを爆進させ、ベガスの結婚まで駆け上がる。となると、どう崩れていくのかと思うと、ここからが怒涛の面白さだった。
イタリアンマフィアものはたくさん観てるがロシアの富豪一族って設定も面白く、ロシアから親がやってくるタイムラグ、それまでになんとかしようとするアメリカにいるそっち系のお目付け役3バカトリオが本当に面白く、出てきた瞬間愛せる勝手なキャラクターっぷりがいい。まさかのお姫様を置いて逃走を始める王子と、豪邸内のグダグダプロレスの後、王子を見つけ出すために街を右往左往する姫と泥棒みたいな珍道中がアルトマンかと思うくらいのセリフのダブらせでこの辺りの騒乱ぷりが圧倒的。更に裁判、親の登場、ともうてんこ盛りのカオスっぷり。途中から王子の影が消え、代わりに目立ってくる朴訥な、しかし目がやたらチャーミングな男とそうなるだろうという流れの中でのラストまで、かなり冴えに冴えた現代のおとぎ話、みたいな映画だった。
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