エミリア・ペレスのレビュー・感想・評価
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分類不能の痛快エンターテイメント。
メキシコの敏腕弁護士リタ(ゾーイ・サルダナ)は難事件をさばいて名声を獲得するが、その才能を利用しようと考えた麻薬カルテルに狙われてしまう。そして拉致され連れてゆかれたアジトで、組織の大物ボスと対面する。ごつい巨体に刺青だらけの身体、あらゆる悪事に手を染めてきた冷たい目。いったい何を要求されるのかと怯えるリタに、ボスは「性転換手術を受けて女として第二の人生を送りたい」と予想の斜め上をゆくことを言い出す。
そして組織の莫大な資金にささえられてリタは世界中をとびまわり、テルアビブでの性転換手術を手配する。手術は成功。男は「エミリア・ペレス」として生まれ変わり、妻(セレナ・ゴメス)と子供二人を棄てて新たな土地で暮らし始める。しかし数年たつと子供への思いが断ちきれず、かれらの「伯母」として共同生活を送りたいとまたリタに持ちかけてきて…。
この予測不能の物語が、あざやかな踊りと耳に残るメキシカン・メロディー全開で進行する痛快活劇です。「法廷犯罪スリラーLGBTQコメディ風味のスペイン語ミュージカル」と、まあ気持ちよいくらい全部盛り。
カンヌでの批評はあんまり良くなかったようだけど、カメラも編集も美術も照明も、すべてがきわめて周到に設計されているし、音楽もよくできている。ミュージカル映画の難所である「日常の世界から歌・踊りの世界への移行」も上手に処理されている。ミュージカル映画に、それ以上何を望むのか?
そしてエンディングの余韻は、ロシアの長大な小説のように悲劇性と祝祭感をないまぜにした見事なもの。そう、これは存分に人を楽しませながら寂しさも消えていない、古典的な童話なのです。
ゾーイ・サルダナにこんな才能があったなんてねえ。彼女はアカデミー女優賞候補にあがるんじゃないかな?
人類は3種類、男と女とオバサン!
無論、オバサンは男にあらず。かといって女の範疇でもない生き物!とは、野坂昭如の箴言だが、昨今の“多様性”なる言葉は、映画界においては単なるネタ切れの謂ではないか!パクリをオマージュというような。
今年も、そんなオバサンの映画ずいぶんありましたなあ。教○になったオバサン、若い男の犬になったオバサン、48歳で初体験→即妊娠したオバサン、レズだったと告白したオバサン、バカ息子を持つアメリカ大統領のオバサン.....
10年前なら、整形して別人になった麻薬王が、改心して善行をほどこすが、因果応報……ってな具合の、誰も食いつかない翻案に“多様性”をビルトイン! 『ホンモノの女優』を充てて、しかもミュージカル仕立てとは畏れ入る。全く何処へ行ってしまうやら、これが海の上なら、行先不明の航海は弁護士リタの羅針盤だけが頼りなのに、悪に染まってしまう危うさもみせたり、人情味たっぷりに寄り添ったり、揺れ動くが、最後まで”主役“であり続ける。助演女優賞は如何なものか!? どう観たって主演だよね。
気になったのは、嗅覚でのイメージ喚起に優れる全ての女性は”パパと同じ匂い“に即、反応します。“疑われる”こと間違いなしで、あの、いかつい肩幅や歩様もいただけない。まあ、身勝手な願望だけに終始したわけでもなく、少しは人様のお役に立ったので、あの死に様は犯した罪との相殺か。
オバサン、オバサンって連呼してると、石でも投げられそうなのでこの辺で失礼します。
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