エミリア・ペレスのレビュー・感想・評価
全231件中、121~140件目を表示
デスマーチはエンディングに向けて加速する
ポエトリーみたいな台詞回しから繋がるミュージカルパートは「突然歌い出す問題」をクリアしているように見えてそうでもないんだけど、セットみたいなところでやってみたり街中でやってみたり明暗分けてみたりでまあ飽きずには見られる奇想天外のストーリー。
多分出てくるキャラクターに全く感情移入できなくて怒ってる人もいると思うけど、かなり無茶めな展開とか行動に一貫性が無くてその時の欲望と衝動に素直に従っちゃう感じとかがギリシャ神話みたいなスケール感だなって思いながら見てました。
わりと低めのレビュー多いけど、ニューススタンド前で袋被せられて拉致られてから観客もずっとジェットコースターに乗せられてるようなもんだからエミリアたんの感情の浮き沈みに合わせて続く激しいアップダウンに身を任せて観てみて。あとセレーナ・ゴメスかわいいからそれだけでいいよ。もっと歌わせてもよかったかもだけどさ。
ということで4月もファーストデー制覇したぜ!
それではハバナイスムービー!
テーマと構成が斬新🦆
ジャンルのごった煮映画
メキシコの麻薬戦争をベースに、ジェンダーレスや貧困問題といった社会派的なメッセージ、更には友情ドラマ、ホームドラマの要素を挟みつつ、全体をミュージカル仕立てにするというかなり凝った作りの作品である。
フランスの小説(未読)の映画化ということだが、果たしてこの異色の作風は原作に拠ったものなのか、それとも映画独自のものなのかは分からない。いずれにせよ、今まで余り観たことがないタイプの作品で面白く鑑賞した。
ただ、純粋にミュージカル映画として観た場合、正直物足りなさを覚えた。映像的に華やかというわけではないし、歌唱力やダンスの実力に長けたキャストが揃っているわけでもない。果たしてミュージカルにした狙いとは何だったのか…という疑問を持ってしまった。
敢えて言えば、リタを演じたゾーイ・サルダナの歌唱シーンは概ね素晴らしいと思った。序盤の下町のフラッシュモブ風の群舞、中盤のエミリアの演説をバックに歌い踊るシーンは、彼女の身体能力の高さが十分に伺える。
物語はエミリアとリタの友情を軸に据えながら、エミリアの数奇な運命がドラマチックに綴られていく。
何と言っても、元麻薬王のトランスジェンダーというエミリアのキャラクターが出色で、数多あるギャング映画の中でもこれだけユニークなキャラは見たことがない。
演じるカルラ・ソフィア・ガスコンの造形も見事で、とてもエミリア=マニタスには見えなかった。後で知ったが、彼女は実際にトランスジェンダーの俳優ということである。
映画はエミリアとリタの絆が育まれていくパートと、元麻薬王としての贖罪、元夫、元父親としての苦悩を描くエミリアのパートで構成されている。
個人的に見応えを感じたのは後者の方で、新しい自分に生まれ変わって人生をやり直そうとするエミリアの現実に抗う姿に惹きつけられた。全ては自ら招いた結果であり、因果のドラマという解釈ができる。
一つ残念だったのは、マニタスが女性=エミリアになるまでのドラマを伏したことである。きっとここにも彼女の葛藤はあったはずである。それがしっかりとプレマイズされていれば更に感動的なドラマになっただろう。
監督、脚本を務めたのはジャック・オーディアール。社会派からサスペンス、恋愛ドラマまで幅広いジャンルを撮る名匠であるが、おそらくミュージカルは今回が初めてではないだろうか。ある種ジャンルのごった煮映画であり、これまでの集大成的な作品になっているように思った。
演出で特に印象に残ったのは2点。
一つは、マニタスの妻ジェシーがカラオケで歌うシーンである。恋人と楽しそうにデュエットするのだが、バックにサイケデリックな残像が重なり大変刺激的な映像となっている。
もう一つは、クライマックスで自動車が暴走するシーンである。ここはちょっと変わった撮り方をしていてオフビートなユーモアが感じられた。
メキシコ発!トランスジェンダーの麻薬王、奇想天外な人生末路劇~歌って踊れ!~
ココまで来ると最早この世の終わり、世も末であるかな。
(ラップ風に♬)
ヘイ、へイ、ヘイ、 ムッシュ セニョ-ル、セニョリータ・・・
俺はメキシコの麻薬王、そしてトランスジェンダの麻薬王、
~ヨウ・ヨウ・ヨウ~
ある組織に狙われてるぅ、死んだ事にしてるぅ
他国で いぇ~、 性転換手術する いぇ~、 女になるぅ いぇ~
かみさん、子供らには内緒~ とってもかわいそう~
川にいるのはカワウソ~
マジ言えねぇ 家もネぇ~
暫く逢えねぇ~ 雲隠れするねぇ~♬
家族は心配~、オレも皆を心配~ 胸にはおっぱい~♩
女になる気持ちで一杯~ ♬
スイスの奥地で暮らす~♬ 嫌になるまでクラス~
ほとぼり冷めたら逃げるっす~
オーeye! ア-eye! 無ェー家! ♬
~ズン ~ずん ~ZUN~ ♬
----------
あ~ アフォらしい。(´д`)
自分初 ラップ調で語るレビュ-を書こうとしたのだがな・・・・
普通に書くわ。(;^ω^)
と言う訳で、「エミリア・ペレス」見たっすYO!
チラシ見たかな? あれ真ん中 ハートやと思ってたけど
映画観て これ違うって分かったわ。
誰かも書いてたが 女性器を模してるらしい。確かにそんなデザイン。
(@_@;) エグイなぁ。
先に出ている人達やな。
コレ!
監督(フランス):ジャック・オーディアール氏(代表作:パリ13区など)
-------メインの出てる人達------
・エミリア・ペレス(マニタス、メキシコ麻薬王)役 主演:カルラ・ソフィア・ガスコンさん (トランスジェンダー俳優だそうだ)
・リタ・モラ・カストロ(弁護士)役:ゾーイ・サルダナさん
・ジェシー・デル・モンテ(マニタスの妻)役:セレーナ・ゴメスさん
---------------
流石メキシカン・・・
す、すまねぇ 誰一人 あんまり存ぜぬわぁ (@_@;) (;^ω^)
あ? 唯一 サルダナさんだけ 知ってるかも
「アバター」のネイティリ役らしい・・・あの頃青かったw それと、
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のガモーラ役で有名。
松鶴家千とせ状態っすわぁ (´-ω-`)
”わかるかなぁ、わかんねぇだろうなぁ・・・”
話展開:
-------------
メキシコ麻薬カルテルのリーダのマニタスが実はトランスジェンダで
自分は他組織に狙われてて命が危ない、家族も危ない 状況。
ある時 ある裁判の訴訟担当したリタ弁護士を知り拉致る。
とあるトラックの車内で出会う二人。
そして オレを女にしろと脅迫?協力要請? 2億の報酬だと交渉する。
悩むリタだったが彼の言う通り 世界中で安全なスイスで手術場所に医者、家族が隠れ生活する家に、本人が離れて数年隠れる家など 色々手配を行い 高額報酬を手にする。
そして 数年後・・・
リタは 偶然に”エミリア・ペレス”と名乗る女性に出会う。
この女性が なななんと 麻薬王マニタスの性転換後の彼だった (@_@;)
誰も知らない 仕組まれた出会い、
非常に困惑するが、彼女(エミリア)は妻のジェシ-とその家族を呼び戻し
一緒に暮らす方法を提案して来る。
協力する義務は無いのだが、なぜか女性と成った彼の願いを拒む事が出来ず受け入れる。やがて 妻と子供二人をスイスのド田舎から呼び戻し 正体がバレないように一緒に暮らす~ って展開。 (中々ハチャメチャだが面白い。)
夫が彼女に成ってる事情を全く知らない妻ジェシ-。既に夫は数年前に殺害されたと聞かされていた。
だから 一緒に暮らエミリアを疑う事も無いし、やがて 心惹かれる男性が妻の前に現れる・・・。
ここで エミリアは豹変!! 自分以外の男の元へ近づく妻へ暴力を。
なんか オカシナ展開に、 見ていてこれは傑作!!
果たして、最後に車に乗る3人~ エミリアと、妻と、彼氏の運命は・・・。
---------------
メキシカンの国で、こんなヤバい組織の社会背景観で
歌って踊っての 時々ミュ-ジカル風。
しかも ジェンダー扱ってて。妻と子供の愛ある家庭を描きつつ
行方不明や孤児救援活動貢献もしてて。
(行方不明の原因は麻薬王のあんたのせいで人々がそうなった節もあったでしょ。何を正義ぶって救援活動しているのか分けわからんよネ。そこは憤るわさ)
という 超ごっちゃ煮スト-リ。 ハハハですよ。
でも最後まで見ていて 一つ言えるのは
シッカリとした ”愛” がそこには有って、それだけは確か。
だから 総てを許せる心境に陥るのだと感じます。
中々メキシコ(スペイン語)ってのが耳が慣れないですけども
必見の価値ありかな。
後で知ったけどSNSでの発言で大損こいたみたいw。
あの調子でしゃべっちゃったのね。許してあげてと思うね。
興味津々のアナタ
今なら 劇場で
一緒に輪に入れますよ~ 急げGO!!
怪作ミュージカル
本年度アカデミー賞最有力候補だったにもかかわらず主演俳優の過去の失言で一気に候補作から転げ落ちたのが残念で仕方ない怪作だった
ミュージカル先進国アメリカでは こんな重たい社会派映画ですらミュージカル仕立てにできるのか、と驚愕する
よくもこの物語をミュージカル仕立てにしようと思ったものだ
もう1本の候補作「ウィキッド」は王道のブロードウェイミュージカルだが、今作が舞台化される時は話題騒然のトニー賞受賞作になることだろう
映画にまぶされるミュージカル部分の歌声は心の奥から湧き出る叫びのようで刺さりまくるのが凄い
メキシコの麻薬カルテルのマフィアのボスがトランスジェンダーで女になるために全てを捨てるなんて設定からすで度肝を抜かれるけど、そんな意表をついた設定に負けない衝撃的な映画だった
灯りは消えないように
先の読めない展開で、暴力や不正に対する想いをミュージカルで表現するところも面白く、歌とダンスも楽しめましたし、行方不明事件多発の社会問題も印象深いです。
アカデミー助演女優賞を受賞した弁護士役のゾーイ・サルダナのミュージカルシーンは見応えがあり、どちらかというと彼女が主演なのではとも思いましたが。
ストーリーとしては、悪行を重ねた人物が別人となって人生をやり直して改心する、しかし過去の因縁から逃れられない、といった寓話のような話になっているかと感じました。
善い行いをして人々の希望の光になっていたのに、結局威圧的な言動や暴力を繰り返してしまう。
心が変わるかどうかというやり取りもありましたが、根本では過去の暴力的な考えから変わることが出来なかったというところがやるせないです。
それでも、その善行によって希望を持った人々がいたことも事実で、その希望の灯りは消さないようにという想いも伝わります。
善行で大きな社会貢献をして信奉されている人物が、実は悪逆非道な過去を持っていたら、という見方にもなる話で。
もし過去がバレたら、昨今のキャンセルカルチャーで善行の社会貢献活動も批判されて潰されてしまいそうですが。
人間は多面的なものですし、善行は善行で評価すべきだと思いますが、過去が隠されたまま信奉されているというのもそれはそれで複雑な印象です。
その流れで考えると、エミリア役のカルラ・ソフィア・ガスコンが過去の言動で炎上してしまった件は、何だかシンクロしているなと。
麻薬カルテルのボスがトランスジェンダーだったらというギャップ感は面白いですが、考えてみると手術後はトランスジェンダーの件については特に触れず、ストーリー的にトランスジェンダーでなくてもよいような気も。
身内にも絶対バレない全くの別人になるための設定として、トランスジェンダーを使っているようにも感じてしまいました。
おはよう一直線に感謝
休日にいつもの映画館で
予告編を観ていたが
麻薬王が女性に という筋に
オラの脳内がコメディと勝手に解釈して
たぶん趣味じゃないとリスト外にしていた
毎朝聞いているラジオで紹介されていて
シリアスものだと ん?ならば観るしかない
オラの凝り固まった固定観念でこの設定はコメディと
ちょい前の日本とかアメリカだったらありえたと思う
任侠学園とか主婦極道的な…
そんな軽くて凝り固まったオラを打ちのめす重厚な筋
エンタメとして完璧 全く飽きなかった 脱帽
弁護士はアバターの人だっけ?
テーブルに飛び乗って歌うシーンは超クールだ
監督は君と歩く世界の人か 好きな映画だ
マリオンコティヤールは好きな女優だ
冒頭の制作会社クレジット多すぎ
いっちょ噛みどんだけ
マイナス0.5はいかにもアカデミー賞だのカンヌだのを
獲りにいくような内容にあえての苦言みたいな感じ
多様性 トランスジェンダー 同性愛 麻薬カルテル
親子愛 ミュージカル
ここまでてんこ盛りにする必要はないかと…
あと2時間超えで膀胱が限界だったので…
この作品に導いてくれたおはよう一直線に感謝!
今日で終了してしまったのだけど
短調のミュージカル作品
オーディアール作品の多くには、
基本的な定型がある。
登場人物は過酷、
あるいはユニークな状況に放り込まれ、
肉体的な傷、精神的な傷を描くことが多い、
そしてそのフィジカリティとメンタリティの交錯によって、
ストーリーを成り立たせるというパターンだ。
しかし、どうしても多くの作品で、
その身体性と精神性をストーリーに馴染ませるのに苦労している印象が強い、
それでも、キャストの演技からは監督の狙いが感じられるので、
かろうじて好感を持てる・・という作品が多い。
オーディアールの作品には、常に何らかの力が働いている、
それは、物語が意図的に感情の振幅を求めているからだ。
(キャストの演技力のおかげともいえる)
今作は、オーディアールが前作のモノクロと同様、
少し手法を変えてきた。
抽象度を少しだけ上げ、
言いたいことをセリフや設定に馴染ませるという力技、
ミュージカルを駆使しているという点だ。
これは単に技術的な工夫ではなく、
感情の表現においても挑戦的なアプローチを採っている。
しかし、
その楽曲の数々は伝統的な「ミュージカル」で採用される【長調】ではなく、
【短調】で構成されている。
短調のミュージカル作品は、
多くなく、
見慣れない印象があるが、
近作だと、
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
大珍品、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や、
古くは意外だが、『シェルブールの雨傘』といった作品にも見られる手法だ。
この形式は好きな人には大きく響く一方で、
合わない人には訴えかけにくいだろう。
本作で合わない人々の理由は、
短調に加えて、
やはりその身体性、精神性がシナリオ内で十分に着地していない点にあるのではないだろうか。
物語の進行が抽象的であるため、
観客は感情的なつながりを見失いがちで、
キャラクターの心情が視覚的に伝わりにくい。
それどころか、
後半にはシェイクスピア風のシーンが加わることで、
更に物語の焦点がぼやけ、
うまくまとまりきれていない印象を受ける。
オーディアールにとって、
身体性精神性のシンクロを具体化できる、
格好の設定のはずの、
この「エミリア」というキャラクターの性転換が、
本当は中心に置かれるべきテーマなのに、
と、疑問を抱かせる。
フィジカル・メンタルの交差点において、
思い切りよく結実させることができなかった点が残念である。
ただし、
つぶやくように唄うシークエンスは良過ぎた、短調のミュージカルは大好物。
何かと風変りだが、楽しめた
キャスティング重視で作品を選ぶ俺にとっては、全くキャスティングに惹かれるものはなかったが、予告編を観て設定に興味を引かれた。麻薬王が性転換して「女に生まれかわりたい」って??
性転換後何したか知りたくて観賞。
【物語】
リタはメキシコの優秀な弁護士だったが、報酬には恵まれず、苦しい生活を送っていた。あるとき、謎の電話を受けて指定場所に向かうと、その場で拉致されてしまう。 連れ去られた先で会わされたのは麻薬カルテルを率いるマニタスだった。リタは彼から思いもよらぬ依頼を受ける。
マニタスは妻子ある中年の男性だったが、残りの人生を性転換をして女性として生きたいと吐露する。そして手術と手術後の新生活の手配を高額な報酬を条件に依頼する。リタは依頼を引き受け、世界を飛び回って執刀医と性転換後の生活拠点を手配し、マニタスを失踪させた上で、敵対勢力に殺されたと見せかけ、“マニタス”を抹消することに成功する。
数年後、高額報酬を受け取り弁護士人生が好転し、イギリスで新しいスタートを切ったリタの前に、かつてのマニタスがエミリア・ペレスという女性として現れ、新たな依頼を持ち掛ける。
【感想】
冒頭でいきなり歌い出し、踊り出したのには驚いた。シリアスな作品だと思って観ていたので。全編ミュージカルみたいな、あるいはインド映画みたいな作風なのかと思ったら、そうでも無かった。中盤以降はそんなシーンは無く、なぜ序盤だけ、ああいう演出なのかは謎。
観終わると、むしろ「モデルとなる実話があるの?」と思わされるリアリティー溢れる作品だった。が、帰ってネットで調べた限りでは実在モデルは無く、完全なフィクションのようだ。
メキシコって国は映画くらいでしか知らないのだが、映画で出て来る描写はいつも危険な裏社会。特に麻薬取引がらみで舞台となることが多く、治安が悪いのが常だ。実際そうなのか? そう言えば劇中でもメキシコの行方不明者の数は数十万人単位であることが話されていたので、リタがされたような拉致・監禁・誘拐は日常茶飯事なのかも知れない。そんな緊迫感も十分感じられる演出。
ストーリー展開も退屈しなかった。興味の有った性転換後の展開も「そっち行くのか・・・」という感じで意外性もあったし、終盤に差し掛かる頃には「元麻薬王が幸せなまま終わるのか?」気になって来たが、納得の結末だった。
役者で言うと、マニタス役がちょっとビックリ。性転換前後で役者を変えているのかと思ったが、一人で演じていたとは。 でも、役者本人がトランスジェンダーだと知って納得。
作風がハリウッドっぽく無いし、英語でも無いのでメキシコ制作なのかと思ったが、フランス・ベルギー制作と知ってもっと驚いた。 なぜ、メキシコ舞台にこのフィクションを制作しようと思ったのだろうか?
実話でないならフランスが舞台でも成り立ちそうなんだけど、物騒なイメージを出すのにメキシコ???
映画と現実の繋がりについて思う
メキシコのマフィアのボスであるマニタス(カルラ・ソフィア・ガスコン)が、実は性同一性障害であり、性別適合手術を企図したところからお話が始まりました。マニタスは、何故か弁護士のリタ(ゾーイ・サルダナ)を雇い、手術に向けた医者捜しなどを任せる。これがお話の本題かと思ったら、リタの準備はスムーズに進み、手術そのものも無事終了。リタは多額の報酬を得てイギリスの上流階級相手に仕事をするイケてる弁護士になる。本題はそこから始まりました。
女性になったマニタスは、エミリア・ペレスと改名し、リタの前に現れる。マフィアのボスという地位や妻子など、大事なものを捨てて性別適合手術を受けたはずが、我が子への未練は断ちがたかったようで、それが後々の悲劇に繋がっていきました。
見所としては、実際に性別適合手術を受けたカルラ・ソフィア・ガスコンの、自らの人生を地で行く役柄を演じたところ。そして何と言ってもカッコ良かったのは、敏腕弁護士であるリタを演じたゾーイ・ザルダナのクールな演技。”性同一性障害”を扱っているので、そうした意味でのメッセージ性が強い作品なのかと思っていましたが、エミリア自身は自らその悩みを乗り越えてあっさりと女性になったので、むしろ作品として伝えたい話ではなく、その点は意外でした。結果、完全な娯楽作品になっていて、また端々に差し込まれたミュージカル調のリズムも心地よく、ストーリー的に最後は悲劇的な部分もあったものの、それはそれでしょうがないと思えるものだったので、ひと言”面白い作品”だったと思いました。
最後に本作の内容とは直接関係ありませんが、エミリアを演じたカルラ・ソフィア・ガスコンの舌禍について。彼女は過去、イスラム嫌悪や人種差別、アカデミー賞における多様性への批判、そして当時すでに本作での共演が決まっていたセレーナ・ゴメス(マニタスの妻ジェシーとして出演)に対するヘイトをツイート(現X)していたことが今年1月下旬に発覚したとか。本人はそのことを謝罪したものの、有力視されていた米国アカデミー賞の作品賞の賞レースでも、評価が一転した模様。
そう言えば、先日観た「教皇選挙」では、教皇の座を狙う”保守派”のテデスコ枢機卿が、イスラム嫌悪や人種差別発言をしてました。この辺りは件のガスコンのツイートと被るもの。
一方で「教皇選挙」では、最終的にリベラル派のベニテス枢機卿が教皇に選出されましたが、彼もメキシコ人という設定でした。しかもベニテス枢機卿は両性具有。内容が全く異なる本作と「教皇選挙」ですが、性的マイノリティ(と言って良いのか分からないけど)を題材にしていたり、メキシコが登場していたりと、テーマは全く異なりながらも、何かと重なる部分が多いことに驚きがあった次第です。いずれにしても、現実の世界と映画の世界は、有機的に繋がっているという証拠なのでしょうね。
そんな訳で、本作の評価は★4.2とします。
謎の半信半疑
さて、本作『エミリア・ペレス』と言えば避けて通れない、主演女優のカルラ・ソフィア・ガスコンに関するスキャンダル。一時は作品自体の評価に対する影響が心配されましたが、発覚後(さらにはカルラのリアクションに対する再炎上後)にもゾーイ・サルダナは賞レースを勝ち続け、第97回アカデミー賞において助演女優賞を受賞。大変素晴らしいスピーチを披露してくれたことも相まって、絶対に見逃せない作品として期待していました。
と言うことで、今回も極力情報を入れないで劇場鑑賞まで漕ぎ着けた私。実際に観始めると、授賞式などでチラホラと見ていた作品中のシーンから想像していた内容とは大分違っていて、序盤は正直戸惑いを感じながらの鑑賞。そして前半のクライマックス、なるほど!カルラ・ソフィア・ガスコン起用はこういう意図だったのか!!と解る「本作最大のギミック」に震え、そしてまたその演技の出来が素晴らしかったからこそ、彼女がした「過去の差別的なツイート」をとても残念に感じました。
一方のゾーイ・サルダナ、スクリーンタイムは一番長い上にストーリーから言っても彼女が「主演」と言ってもいい役どころであるリタ。スクリーン越しにもヒシヒシと伝わるゾーイの気迫が凄く、リタに対してエミリア(カルラ・ソフィア・ガスコン)に引けを取らない存在感を感じられるからこそ、ストーリーの終盤の展開に対する納得度が高まります。アカデミー賞において歌曲賞に輝いた“El Mal”のシーンなど、ゾーイが賞レースを席捲した理由が解る演技は必見です。
そして、今回も「いい意味で裏切られた」のがジャック・オーディアール監督(脚本、製作)。私、何故かジャック・オーディアールの作品に対し、鑑賞前に観る予告編や作品紹介のサムネイルなどから毎回「ややネガティブ」な印象を持ってしまうのですが、実際に観終われば必ず好印象。毎作品、様々なテーマを全く違うアプローチで見せてくれる表現力はオリジナリティに溢れ、唯一無二な作品性で驚かせてくれるジャック・オーディアール監督。そろそろこの「謎の半信半疑」をやめては、と思いつつ、結局それ込みで楽しんでいることもあるのかもしれません。監督、これからも応援しています!
見事なミュージカル演出! 物語は?
『エミリア・ペレス』は、ミュージカル演出と映像美で多くの観客を魅了した。だが、観終えた後、私の中に残ったのは高揚感ではなく、ある種の倫理的な違和感だった。
それは、「赦し」についての物語であるかのように装いながら、実のところ“赦される”ことの本質を描いていない、という違和感だ。
まず触れておきたいのは、映像と演出の見事さだ。ミュージカルパートと現実パートの融合、群像の動きと構成、色彩、音楽、振付——どれもが極めて高い完成度で、美術と演出の職人技に圧倒される。
しかし、映像と音楽、演技の美しさとは裏腹に、物語の焦点はなかなか定まらず、登場人物に感情移入しにくい。主人公が「元麻薬王」だったという設定が物語の中心にあるにもかかわらず、その過去の描写は極めて曖昧で、「なぜこの人は変わろうとしたのか?」という内面の葛藤がほとんど描かれない。
物語は、男性として生きてきた麻薬王が、性転換手術を経て女性“エミリア・ペレス”として生き直す姿を描く。そこには、「自分らしく生きる」という強いテーマがある。劇中でも「自分の声に従って生きたい。それで崖から落ちても、それは自分の崖なのだから」といった歌詞が繰り返される。
だが、私はこう問いたくなる。
「自分が変わることで罪の償いは終わるのか」と。
ここで、ふと自分自身の倫理観を振り返る。
「犯罪者は罰せられるべき」「過去の罪は改心だけでは帳消しにできない」——そんな考えが、自分の中に染みついている。
だがそれは、いま私たちが生きる“現代社会の倫理”によって構成された価値観でもある。
そしてこの映画は、そうした現代倫理の前で、あまりにあっさりと「赦し」を与えすぎているように見える。
エミリア・ペレスは名前も性別も姿も変えた。けれど、過去に殺人や恐怖で支配してきた人物としての記憶や判断基準、あるいは“生き残るためにタフで非情でなければならなかった”という内面の軌跡は、果たしてどこに描かれていたのだろうか。
その部分を描かずに“新しい自分”を肯定的に提示されると、まるで「罪の漂白」が行われたような印象を受けてしまう。
別人の体と名前を手に入れても、人の自己同一性は継続している。生きる動機も、後悔も、過去も、変化しながら続いている。だから過去は、完全には消せない。
『エミリア・ペレス』は、変化を肯定する物語であると同時に、赦しの構造をめぐって観客に問いを残す物語でもある。その問いにどう答えるかは、観る者それぞれの倫理観に委ねられている。
私にとっては、それが「赦しを与えるには、まず罪を引き受ける姿勢が必要だ」という、ごく当たり前だが見落とされがちな事実だった。
奇抜なミュージカル
予備知識無しで鑑賞。
ボスのいいように使われ、弁護士として認められることのないリタ。そこに、メキシコの麻薬王カルテルのボス、マニタスから女性への性転換をして、新たな人生を送る計画遂行を依頼されます。
リタの完璧な計画によりマニタスは姿を消すことに成功。
数年後、イギリスでエミリアとしてリタの前に現れます。そして今度は家族と共にメキシコで住めるように手配をすることを依頼します。元妻、子供達に女性エミリアとなった(父親)の生活が始まります。というのが要約したあらすじです。奇抜なミュージカルと感じるのは、ミュージカルになるタイミングが微妙であることです。歌い手が感情を込めて歌うというより、どこか愚痴を吐き出していたり、メロディラインが無くリズムに合わせて語るような歌となっています。話が進むと「ここで歌?」というタイミングにはやや興醒めでした。人間、性別が変わり、立場が変わり、環境が変われば、色々心変わりはするものです。しかし、エミリアはいいとこ取りをしようとしています。女性としての幸せを求め、男性だった頃の家族も求め、元妻の愛も求めます。そして、弁護士のリタまでも拘束してしまいます。結局、違う人生が送れるチャンスがありながらも、心の本質は変われない。という事なのかもしれません。
奇抜なミュージカルのお陰で、衝撃的なラストではありますが刺激は強く感じませんでした。フランス映画のできる技かもしれません。
もっとそれぞれの心の内面を掘り下げてほしかった
作品としての発想も、主要キャストの面々の演技もとても良かったと思います。
面白かっただけに、何故彼女は(彼は)その行動に至ったのか、その決断の時期は何時だったのか?そこがはっきり認識できるシーンがあると更に深みが増したような気がします。
エミリアは何故メキシコへ戻ろうとしたのか?子供たちへ注ぐ愛は父としてか母としてか?行方不明者(逝去者)を探す事業へ駆り立てた動機は?
リタは巨万の富を手に入れロンドンで成功していたのに、メキシコでエミリアを手伝うことになったのは?(彼女の場合お金と名声が動機だったかもしれませんが)
痕二人の女性ジェシーとエピファニアにしてももっと葛藤や心離れを描いてくれたら没入できたのにと思います。
後は、結局どこかで裏社会と繋がっているのだから、エミリアもジェシーも素性がばれて早晩消されそうなはずなのにそうでもない、メキシコってどんな国なんだろうとも思ってしまいました。
でも、ミュージカル仕立ても含め素敵な悪品に仕上がっていたと思います。
内容・音楽・質、全て期待以上でした
ずっと前から音楽に惹かれて幾度もサントラを聴き続けて、早くゾーイ・サルダナを─と期待していた作品でした。
正直、性的マイノリティを扱った作品にはうんざりするくらい雑多なところを感じる昨今、ちょっとこの作品は違うぞと感じさせてくれて、しかも半ばミュージカルということもあって、かなり興味をそそられたわけで、なおかつあのガモーラが─なんて言ったら酷いレッテルなんでしょうけど、しっかりと最優秀を勝ち取ったわけだから、もう期待値はマックスだったわけです。
聴き馴染みあるメロディーから始まって、ああやっぱいいとなって、歌詞の字幕とかをしっかり確認すると非常に濃くて意義深い作品であることがよく分かったし、それでいてなおかつ壮大でエンタメでハラハラドキドキの展開、感動もするし非常に楽しい作品でした。しかもゾーイ・サルダナ・・・素晴らしい!泣ける!演技・ダンス・歌唱力すべて最高です。
内容とか演技・音楽もそうなんですが、音楽やリズムを存分に生かした台詞回しとか絵つなぎがこれまた絶妙で、細かな演出まで完璧だった印象で、自分の中では作品賞も監督賞も最優秀はこれでしょう!てな思いで、感傷的に観賞・・・って感じです。
全231件中、121~140件目を表示