エミリア・ペレスのレビュー・感想・評価
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LGBTQリーダーの苦悩
主役のトランスジェンダー俳優カルラ・ソフィア・ガスコンがその昔ツイッターでかました差別発言が明るみに出たせいで、オスカー最優秀作品賞をとりそこなったと言われている。イスラム教徒→「治療が必要な憎悪の根源」、警官に首を圧迫され死亡した黒人男性→「麻薬中毒者の詐欺師」とツイートしたのだとか。差別されていたものが差別する側に回るととんでもないレイシストに変わることはよく知られているが、ガスコンもまたその罠に嵌まったわけである。ハリウッドの宿敵トランプの「性別は男女のみ」発言に対抗する意味でアカデミー会員から本命視されていただけに、ゾーイ・サルダナの助演女優賞と歌曲賞のみというのは、寂しい結果と言わざるをえない。
デミアン・チャゼル監督『バビロン』やレオス・カラックス監督『アネット』などに比べると、ミュージカルとしては大分こなれていて、あまり違和感をおぼえなかった。オーディアールによれば「現実の世界で起こっていること」をフィクションやドキュメンタリー風に演出するよりもベターな方法論として“ミュージカル”を選択したとのこと。パリ五輪で元男性のトランスジェンダーボクサーが問題になったり、日本でも夫婦別姓制度が取り沙汰され話題になった“ジェンダー差別”をテーマとして扱うにあたって、『バービー』のようなまったくのフィクションにするのか、それとも『燃ゆる女の肖像』のような歴史上の人物タッチで描くのかを考えた時、より“おとぎ話”度の高いミュージカルにした方が(抵抗感なく)観客の心に刺さりやすく、トランピアンたちをあまり刺激しないですむ、という計算が働いたのかもしれない。
世界で最も危険な国の一つ“メキシコ”で、麻薬王として君臨していたマニタスから多額の報酬と引替に性転換医探索指令を受けた弁護士リタ(ゾーイ・ソルダノ)。マニタスが死んだと告げられた子持未亡人ジョジィ(セレーナ・ゴメス)。そして弁護士として成功したリタの前に再び現れたマニタス改めエミリア・ペレス(カルラ・ソフィア・ガスコン)。かつての罪滅ぼしのためエミリアがリタの協力を得てはじめた行方不明者探し運動で、エミリアが知り合った女性エピファニア。オーディアールによれば「変化をおそれず前進し続けた」女性4人の物語になっているそうだ。
エミリアの変化については説明するまでもないが、無能な男性弁護士のアシスタントに甘んじていた有能な女性弁護士リタの場合、闇の力を借りて表世界で大成功をおさめる。夫の性転換手術をなど知るよしもなかった(ちょっと鈍感すぎる)ジェシィは、エミリアの精神的束縛を脱し浮気相手と再婚する決意を固める。ドメバイ夫の暴力に苦しんでいたエピファニアは、エミリアから夫の死を聞かされ、エミリアとの同性愛?に目覚めるのである。それぞれの女性の苦悩が、“歌唱”という大変分かりやすい演出によって、ストレートにこちら側に伝わってくるのだ。
しかし、かつてフレンチ・ニュー・ノワールの巨匠としてならしたオーディアールは、幸福の絶頂にいたった女性たちをそのまま放置しておくわけがなく、ラストでは(ゴメスの唄の歌詞どおり)ちゃんと“崖下”に突き落とす。私は思うのである。オ◯マやマ◯ロン、ゼ◯ンスキーやゲ◯首相などLGBTQの疑いがある(元)指導者たちがなぜ左翼的政策に拘るくせに、(ネオコンや戦争屋の力を借りて)居丈高に振る舞いたがるのか。トランプやプーチンといったテステステロンビンビンの男性リーダーと対抗するためには、やはり“エミリア”という自分の内に眠る女性的な部分を封印する必要があったのではないか。だれにも売り渡したくない“私の人生や魂”を最後の最後まで隠し通す必要があったからではないだろうか。この映画もしかしたら、西側LGBTQリーダーたちの苦悩を裏テーマとして描いた奥深い作品なのかもしれませんね。
とても変
ロバート・ロドリゲス監督作品のようなメキシコで荒っぽい女たちが壮絶な撃ち合いをする映画かなと思って見たらまさかのミュージカルで驚く。主人公は弁護士だし、依頼人がカルテルのボスでなんと女になりたがっている。自分が死んだことにして妻子とも別れ、性転換に成功して女としての人生を歩みだす。
いつも思うのだけど、おじさんが女になってもおばさんだし、しかもこの主人公はごついおじさんだったのでどう見ても、『アキラ』で大活躍するみたいなごついおばさんだ。華奢な美魔女になるわけでなく、果たして納得いくのだろうか。そして性の趣向は元のままで男に抱かれるわけではなく彼女をつくる。自分とは隔たりがありすぎて気持ちがまったく追いつかない。
しかしそんなエミリアが子どもに会いたがる気持ちはとてもよく分かる。幼い息子に「パパと同じ匂いがする、パパ、パパ、パパ、パパ、パパ、パパ」と連呼され、それは人類が浴びる最上級の幸福の一つだと思うのだけど、息子はおばさんだと思っており、エミリアも実は自分がパパそのものであるとは告げない。なんという切なさだと心をむしられる。
元妻のジェシーの恋人がひどいボンクラで事態をどんどん悪くする。ジェシーも気の毒だ。
とても変で面白い。
心の性を生きること
なぜ麻薬王はエミリオになったのか?
麻薬王が性転換し、別人として新たな人生を歩もうとするストーリー。麻薬王(エミリオ)をはじめ、彼に協力する弁護士や元妻など、登場人物の誰にも共感しづらい。しかし、エミリオが誘拐され、物語が急展開する終盤は見ごたえがある。ただ、そもそもなぜ麻薬王はエミリオになりたかったのか、その動機が曖昧で腑に落ちない部分もある。
独自性の強いミュージカル!予想以上に歌う。 大勢で歌って踊るシーン...
新しいジャンル映画!
風のように駆け抜けたエミリアに併走した三人の女性、リタとジェシーとエピファニア。苦しみと辛さから自分と女達を解放したリタとエミリア。共感と愛を惜しみなく与えあったエミリアとエピファニア。ジェシーの愛、ジェシーへの愛に嘘はなかった。
こういうタイプのミュージカルが可能なんだ!と驚愕した。良くも悪くも自分が持っていたミュージカル=固定観念が気持ちよく壊れた。普通のミュージカルだと、待ってました!的な歌があってそれが終わると舞台であれば客は拍手する。でもこの映画には「待ってました」感がない。登場人物の思考と感情が歌になっただけで、観客が感じ思うことと同じ地平に置かれている。だから不自然さを感じなかった。スピード感ある進行で、歌詞は強烈に批判的で内省的。リタ演じるゾーイ・サルダナはクールで適役。
一人一人の絶望と再出発と希望の話で家族の話。社会上層の腐敗と貧困層。暴力を受け続ける女性。教育を受けられない人々。イスラエル=戦争批判。強弱つけて抑えの効いた脚本だったので、ごった煮感はなかった。初めて体験したタイプの映画。
おまけ
1)監督&脚本のジャック・オーディアールはジャン=ポール・ベルモンド主演の映画「プロフェッショナル」(1981)の脚本を父ミシェル・オーディアールと共同で執筆している。「プロフェッショナル」はベルモンドの映画の中でもとりわけ好きなので嬉しい。
2)何度も見たくなる映画で再度鑑賞。想像力をかき立ててくれる(2025.3.31.)。また見た。歌詞がいい(2025.4.3.)。
唯一無二、例えようのないタイプの映画
新鮮で刺激もあったが、映画としての完成度はどうかと思う。
ミュージカル映画は大好きだが、バイオレンス描写もそこそこあり、無慈悲で凶暴だった元麻薬王がいつ元に戻ってしまうのだろうかと思って観ている状況下で、合間にミュージカルが入ってしまうと話の腰を折るだけでなく、緊張感が削がれてしまうので早く先に進んでくれ!と叫びそうになった。
また感情表現が溢れてしまい歌って踊るはずが、その感情に全く共感出来ないのだからただ余計に感じるだけだった。
家族の安全のため腹を括って全てを捨てたのに、結局子供や奥さんと一緒に住みたいというのはストーリーとして面白く、同じ親として夫としても理解はできるが、本当の愛情があればほのめかすことさえ我慢ができるのではと思いながら観ていた。
アカデミー助演賞(主役ではないのねw)を獲ったゾーイ・サルダナはしなやかな肢体でダンスもキレており素晴らしい歌唱を見せ、海外俳優の奥の深さの様なものを見せつけられた感じがした。
セレーナ・ゴメスはああ言った役はピッタリハマっており凄く良かったと思った。
主演のカルラ・ソフィア・ガスゴンの存在感はエゲツなくw、秘めている狂気を抑えようとする、あと一歩で破裂しそうな危うさみたいなものをその佇まいと威圧感?で見事に表現し強烈なインパクトを残したと思う。
スペインのマツコデラックスw
救いや希望はどこに?
私の知ってる範囲だと、メキシコが舞台の映画って、いつも壮絶過ぎて暗澹たる気持ちになる。『ボーダーライン』の残像が強すぎるせいかもしれないけれど、この映画も結構ズッシリと重い。
受刑者は殺し屋ばかりで、万引きとか強盗は軽犯罪なんじゃないか、と勘違いしそうになる。
犯罪組織からの協力を断っただけで誘拐されたり殺されたり、がほとんど日常?
ネットで検索したら、メキシコでは、2022年の殺人事件発生率は10万人当たり約26件。
東京23区の人口が約985万人なので、23区内だけで、年間2,500人ぐらい殺されているというレベル感⁈
私にはそういう環境での日常生活がまったく想像できない。そこそこいい生活をするためには、犯罪組織の幹部クラス(中間管理職)になるか、公務員になって組織関係者から賄賂を貰うとかしか思い付かない。
弁護士のリタだって、初めは何らかの圧力を受けた公権力の下請けみたいな感じで仕事してたようでしたし。
社会的正義やそのために使われる財力(元手はともかくも)は、そのような絶望的な環境とは相性が悪いので、いずれ悪意ある者から狙われるのは宿命なのだと思うけれど、巧みな脚本がとても劇的なドラマに仕上げている。
それでも、救いや希望はあまり感じられなくて辛い映画です。
ミュージカル仕立ての最高級のエンタメ作品!
予告編を見ただけの状態で、観に行きました。
麻薬王が性転換する話がミュージカルに? という予告編が、そもそも面白そうで。
で、見始めると、すぐに画面に引き込まれてあっという間の130分。
面白かった!
設定からして荒唐無稽なんだけれど、そこにいろんな要素をブチ込んであって、鑑賞後にはいろいろ考えさせられる部分もありつつ、鑑賞中はノンストップでハマり込める演出の上手さ。それぞれの人物の心情が歌とダンスで存分に表わされている。
ラストは、クライム映画らしく銃撃戦からの衝撃の結末へ。
LGBTQの問題や、女性差別や人種差別の問題、DVの問題、麻薬汚染の問題から誘拐犯罪の話、汚職や法の正義の問題まで、テーマが多岐にわたっていて、考え始めるといろんな異論が聞こえてきそうな映画ですが、あえて「エンタメ」と割り切って評価するのがよいのかもしれません。そして、エンタメとしては最上級であることは間違いない。
よい映画でした。
事実はフィクションより...
ペコ&りゅうちぇるの麻薬カルテル版
麻薬カルテル映画にはずれなし
同時期のアノーラ、ブルータリストよりずっと面白い!
主演女優賞はこっちでしょ
甘くないラストもいいね
主人公はりゅうちぇるを見習えと
ゾーイとセレーナに酔いしれた
好き嫌いの判断を決めにくい作品
ミュージカル、多様性、トランスジェンダー、幸福追求権、クライムサスペンス、法廷闘争、善と悪、愛憎劇、因果応報...いろんな要素がてんこ盛り
作品の良し悪しどころか、自分自身の好き嫌いすら決めかねる、シンプルなストーリーながら色々難解で、複雑怪奇な映画です
(感想が整理できなくて、レビューを書き始めるまでに時間かかった〜)
かなり無理のあるトンデモ設定+ご都合主義の強引なストーリー展開もありつつ、しかし、登場人物の心の動きや葛藤などを丹念に描いているようでもあり。おまけにクオリティが高いんだか低いんだかよく分からない、バラツキの大きいミュージカル仕立て、と、かなり好みが分かれる映画でしょうね。ワタシはトータル好きですけど (トータルね。嫌いなところもいくつもあるけど)
一時はアカデミー賞を総なめか?みたいな様子もありましたが、正直そこまでか?という気もします。AnoraはAnoraで、確かに作品賞これで大丈夫?という気もしましたが、本作を見た後では、コレよりは相応しいのかな、というのが正直な感想です
主人公のエミリアは、悪人だったり善人だったり、色々な表情を見せますが、結局、かなりワガママな究極自己中人間なので、殆ど共感はできません。しかしそれがなければ、この複雑怪奇な世界、物語自体が生まれない訳で...
一つ感じたのは、スペイン語のミュージカル映画は好きにはなれない、ということ。情報が多すぎる。絵と音の調和が取れていないというか...。
音楽と、意味が殆ど分からず決して流暢とも言えないスペイン語の"音"と、字幕で目から入ってくる日本語の歌詞(の意味)と、結構バタつきのあるダンスと、登場人物の表情や演技など、多くの情報が一気に入ってきて、脳ミソの情報処理が追いつかない。結果、ミュージカルシーンを一つの芸術として全く楽しめないのでした
そのへんを加味して、マイナス1点でした
エミリア・ペレス(映画の記憶2025/3/28)
これがアノーラの対抗馬か、、、今年のアカデミー賞の方針が良くわかる。
作品に関しては、ベースのストーリーは良いよ。
どうやら小説ベースのテレビ映画らしい。
映像の作りに関しては正直しんどい。監督はミュージカル映画もっと観たほうが良い。まだ振り切ってるインド映画のが観やすい。唯一評価できるのは今生きてる私は死んでるも同然って意味でデスボトーン持ってきたのは良かったかな。(Will Rahmer的な)
主演もどっかで観たことあると思ってたドラムラインに出てたわ。
演技は当然磨きかかってるから演技はこっちのがいい。
セレーナ・ゴメスはハイスクールミュージカルの頃のキラキラ感はありません。そりゃそうか20年くらい経つしな。
もしかしたらミュージカルっぽい作りは間違いなんじゃないか?若干ロックやラップを感じたぞ?セリフと歌の混ぜ時間が長いからセリフも入って来にくいし、歌にいかないんかいって感じた。
多様性し過ぎていろんなこと盛り込みすぎて失敗パターンに感じた。とはいえストーリーに助けられたな。ドラムライン久々に見ようかな・・・
(個人的評価5.5点/10点中)
外側分厚く、中身が見えない。外側だけで楽しめるかどうか?
超斬新なミュージカル手法&自由に生きる!がテーマでビンゴ!
アカデミー賞12部門13ノミネートというとんでもない作品なのに、
受賞したのは助演女優賞と歌曲賞のみ。
鑑賞後は、作品賞を受賞していても全くおかしくない、そんな作品だと感じた。
予告を観る限りでは、ミュージカル仕立てとは全く認識していなかったため、
冒頭から面くらってしまった。
それが実にかっこいい。セリフからセリフに音程&リズムがつきはじめ、
歌唱&ダンスになっていくというグラデーションが実にクールで引き込まれた。
こういうミュージカル手法があったのか!と驚いた。この手法の先駆者になったと思う。
麻薬王マニタスがエミリア・ペレス(カルラ・ソフィア・ガスコン)になるという
LGBTQが根底にあるテーマなのかと思いきやそうではなく、
自分らしく生きるというのがテーマだと感じた。
罪を犯したマニタスが、エミリア・ペレスになることで善行を重ねていくものの、
やはり心は変えられなかった。
捨てたはずの妻と子どもたちへの愛情は不変であり、妻への嫉妬から妻が凶行に走り、
悲しい結末へと向かっていく。
エミリア・ペレスの子どもたちに向ける愛情表現は本当に温かい。
子どもたちはパパと同じ匂いがするという、するどさ。子どもにはわかっちゃうんですね。
ラスト近くでエミリア・ペレスが妻ジェシー(セレーナ・ゴメス)に、マニタスしか知らないことを語り
自分がマニタスだと間接的に告白するシーンにはグッときた。そのときのジェシーの反応も。
エミリア・ペレスとしては悔いのない人生を送ったのではないか。
彼女にとってはハッピーエンドだったのではないか。
そう自分では結論づけた。
秀逸なのは、物語の進行役であり実は主役なのではないかというリタ。
リタを演じ切ったゾーイ・サルダナは実に素晴らしかった。
演技はもちろんのこと、歌唱・ダンスいずれも彼女がいたから成り立った作品になっている。
アカデミー賞助演女優賞も納得。助演なのか!?というのは疑問だが。
エミリア・ペレスの「ビンゴ」というセリフがいちばん好き。
パンフレットも充実している感じ(未読なので)なので買ってよかった。
ミュージカルの弊害は
言葉が膨大になってしまう事。いつもの台詞量よりぐんと増えてしまうし、無言の間の効果も望めない。
教皇選挙シンドローム・・アタマから連打すると終盤の効果が薄れる、観客が馴染むのを考えると痛し痒し。
撮り方がキレキレで良かった。セリーナゴメスのカラオケはサービスか?
エミリアの最期はありがちだが、スカッとした。所詮反社らしい死に様。
アカデミー賞を取れた映画
因果は巡る
終わってまず感じたことは、因果は巡る。
麻薬組織が国の隅々まで根を下ろしているメキシコ社会の闇。エミリアの存在は、それに対する希望の光であって欲しいと思うが、一筋縄では行かない無力感も同時に感じる。
エミリア ・ペレスを演じたカルラ・ソフィア・ガスコン自身がトランスジェンダーでありながら、差別主義者であるという矛盾を抱えている。
だからこそ、マフィアの首領でありながら性転換をするというはちゃめちゃな人物を演じることができたのではないかと。
普通のセリフからシームレスにミュージカルへチェンジする斬新な演出には驚く。
それだけでなく、互いに異なる意見をハモリながら歌い上げるシーンもあり、ミュージカル好きの自分にはたまらない。
贖罪すればいいってもんじゃない。その気持ちを持っていながら迎えたラストは、呆然。
なんとも考えさられる物語でございます。
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