バード ここから羽ばたくのレビュー・感想・評価
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洗練された印象はないが、心に残る現代のおとぎ話
UKの最下層労働者階級の暮らしぶりが活写されます。貧困、子沢山、不衛生、虐待、閉塞感。
ちなみに長男ハンターの彼女の住まいは少し上層なのか、界隈にゴミ落ちてなかったですね。
手持ちカメラで臨場感が倍増。ただしブレも多いので、内容も含めて少し酔いそう。
ベイリーは父親の新しい結婚相手を好いてなかったけど、初潮を通じて何となくシスターフッドができるところがいい感じです。兄やまして父は出番ないですからね。この4日間でベイリーは心身ともにとても成長しました。
フランツ・ロゴフスキの神話に出てきそうなひょうひょうとした表情、まさに自由な鳥人。バリー・コーガンはいつも特異なキャラの若者役が多かったけど、今回父親役とは(そしておじいちゃんにも)!
でも本作この二人が絡むシーンがないんですよ!観たかったな独vsアイルランドの演技対決。いずれにしても只者ではない二人です。
人はどんな環境でもささやかな幸せを見つけることができる
イギリスの田舎街に暮らす12歳の少女ベイリーはシングル・ファーザーの父親と2歳年上の兄と一緒に暮らしていたが、何の前触れもなく父親がいきなり再婚相手を連れてきて、来週結婚式を挙げると告げられてショックを受ける。そんなとき、ベイリーは牧場で風変わりなバードと名乗る男と出会う。初めは警戒するものの、その雰囲気が気になって話をするうちに、バードは自分の両親を探していることを知り、手伝うことにしたのだが……。
貧しい田舎街の最底辺の人々の暮らしでは、生活の一部に暴力が組み込まれているかのようにDVは当たり前、結婚と離婚を繰り返し、「貧乏人の子沢山」と言われるように異父母兄弟が何人もいる。
でも、見ているだけでも心苦しくなってくるそんな暮らしの中でも、人はささやかな幸せを見出すことができる、ということを伝えたいんだろうな。
そして、いかにもヨーロッパらしいなと思ったのが、風来坊が何処からかやって来て希望をもたらして去っていくというモチーフ。それは現実かも知れないし、希望的感想に過ぎないのかも知れない。しかし、一縷の望みを何かに見出すことで現実に押し潰されずに何とか生きている、という人も少なくないのだろう。
ベイリーが撮ったスマホの映像なども多用しながら構成されるカメラワークでモキュメンタリー的なタッチになっていることも、現実感を増し、我々の世界と地続きにある日常生活を見せられている気分にさせることに寄与しているのだろう。
ほんわかだけでは飲み込めない
戸惑いと戸惑いと戸惑いと希望の120分
タイトルとバリー・コーガンが出演すること以外、何も知らずに拝見。
最初はベイリーを男だと思ってたし、さらには女性だとわかった後も12歳と思えず、バグの元カノで、バグが新しい女を連れてきて怒ってるものだとばかり……。
その後、発作的に髪を切り、カチコミを撮影し、野宿後に野ションした後、奇妙な男と出会う……。
いやあ、序盤は「一体何を見せられてるんだ」との戦いで、物語の概要が見えてくるまで1時間くらいかかっていたと思います。
映画のタイトルでもあり、頻繁に映される鳥の姿と奇妙な男の「バード」。俳優の外見や時折見せる鳥っぽい仕草も相まって、「最後は『動物界』的な展開になったりして……」という根拠のない予想が当たる頃には、すっかりお話に取り込まれていました……要所要所の細かい映像表現はピンとこないことも多かったですし、「ベイリーの母親一家はこの先どう暮らしていくんだろう?」とか「結局、あのダメ親父の下でベイリーは暮らすのか」みたいな細かな疑問点もないではないです。
とはいえ唯一無二な作品であることに間違いはないですね。
手ブレ映像に酔い、バリー・キョーガンの圧巻演技にしびれる
アンドレア・アーノルド監督作は初めて。
まず最初に断っておくが、手ブレ映像でキャメラ酔いする人は要注意である。ドキュメンタリータッチを狙ってか、主に手持ち撮影によって撮られた本作は、ともかく全編にわたって手ブレがひどい(※撮影監督は、『わたしは、ダニエル・ブレイク』『哀れなるものたち』『カモン カモン』ほか数々の名作を手がけるロビー・ライアン)。そのせいで終始、めまい、生あくび、かすかな吐き気に悩まされ、ホント参った。内容自体は決して悪くないのに…。
そういうわけで、過去に『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『アデル、ブルーは熱い色』『エゴイスト』『ナミビアの砂漠』などで手ブレ酔いの経験がある人は、くれぐれもご用心のほどを(自分の場合、ショーン・ベイカーやキャスリン・ビグロー作品の手持ち撮影はなぜか平気なんだけど…)。
そんな本作だが、鑑賞直後に「本作から“遠いようで近い”映画」として思い浮かんだのが、ケン・ローチ監督の何本かの現代劇、そしてショーン・ベイカー監督の『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』だ。
巨匠ケン・ローチは長年、イギリス社会が抱える貧困と格差の問題に真正面から切り込んできたが、本作のアーノルド監督は、同国の貧困層のリアルをローチとは全く異なるアプローチで切り取って見せる。それは、シビアな現実と孤独な少女が抱くファンタジーとをミックスさせるという手法だ。
また『フロリダ・プロジェクト』の方は、シングルマザーと暮らす6歳の少女を中心にアメリカの貧困層の日常が描かれ、ラストは幼い彼女が現実逃避して憧れのディズニー・ワールド行きを夢想するショットで終わっていた。対する本作の方は、イギリスの下町でシングルファーザーと暮らす12歳の少女の目を通して、彼女が直面する苛酷な生活環境と夢かうつつか分からない事象とが、ないまぜになって描かれる。
この、12歳の主人公が現実の裂け目にかいま見る“魔法のような事象”が、とてもユニークで魅力的だ。それは、主人公の身近にいる多様な動物——カモメ、ヒキガエル、ヘビ、馬、ハチ、蝶、カラス、犬、キツネなど——が引き金となって立ち昇ってくる。
たとえば、タイトル・ロールである謎の男バードは、ときにカラス、カモメのように“鳥男”と化す。映画的には『ベルリン・天使の詩』『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』にも一脈通ずるようなキャラとして存在するのだが。
また映画終盤で、結婚パーティー会場からバードが“飛び去った”と入れ替わりに、一匹のキツネが会場へ紛れ込んでくる。それを見た主人公の瞳孔が変容するシーンは、主人公がキツネと化すことを予感させ、この先クソみたいな世の中をしなやかに、したたかに生き抜いていくだろう——と仄かな希望を観客に抱かせる。
こういった主人公のファンタジーをしかと支えるのが、荒んだ暮らしを捉える濃密な日常描写のリアリティだ。その描き方はけっして暗く悲惨一辺倒なばかりではなく、折々に明るさやユーモアを感じさせてくれるのがイイ。それには役者たちの巧みな演技や挿入歌の数々が大きく寄与しているところもあるだろう——たとえば、バリー・キョーガンがヒキガエルに“くそダサい音楽”を聴かせて、幻覚作用のある体液を分泌させようとする(?)とか。あるいは、彼がパーティー会場で友人2人をバックダンサーに従えて隠し芸ダンス(!)を披露するのだが、それが最高にダサいとか(笑)。
そんな出演者たちのアンサンブルは、本作いちばんの見どころでもある。まず、主役に大抜擢されたニキヤ・アダムズは、相米慎二監督『お引越し』の主人公と同じく、繊細な年頃を見事に体現している。その彼女にからむ二人がまた絶妙。謎の風来坊バードを演じるフランツ・ロゴフスキはクセのある発声を活かし、一瞬にしてタダ者ではないと悟らせる。そして、しょうもないシングルファーザーを演じるバリー・キョーガンの圧倒的存在感といったら! 全身クセの塊のよう(笑)。なんでも彼は『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』のローマ皇帝カラカラ役を蹴って、インディ系の本作に出演を決めたのだとか。さすが“我が道を往く”キョーガンにハズレ無し!と確信できた一作でもあった。
少女から女性に一歩踏み出すベイリーの「かけがえのない4日間」
カンヌ出品作品で、米国映画レビューサイトでも評価が高い本作。映画.comのサムネイル画像を一見した印象では正直「微妙かな?」とネガティブに感じつつも、観逃せない俳優の一人であるバリー・キョーガンが出てるし、『アメリカン・ハニー』も観たら結局大好きだったし、今作もアンドレア・アーノルド監督を信じて劇場鑑賞を決定。今回も前情報なし(トレーラーも未見)で、新宿ピカデリーにて貯まったポイントを利用して鑑賞です。
まず本作、「複雑な家族構成」を把握するのになかなか苦労するのですが、その全てと日常的に接点を持っていて中間的な存在であるベイリー(ニキヤ・アダムズ)と言う12歳の少女/女性が本作の主人公。父親・バグ(バリー・キョーガン)の下で異母兄・ハンター(ジェイソン・ブダ)と同居をしていますが、父から突然の再婚宣言と同時に“父の女”とその連れ子が押し掛けてきたことに反抗します。とは言え、離れて暮らす母と弟妹の元にも“母の男”が居座っていて行く当てがありません。また、日中も2歳上のハンターは年頃になりガールフレンドと過ごしたり、仲間と徒党を組んでビジランテ(自警団)を気取っていたり、金魚の糞のように妹が付きまとうことをあまりよく思っていないため、こっそり兄たちのビジランテ活動の後をつけるベイリー。ところが、パトカーのサイレンがきっかけで一目散にその場を離れざるを得なくなって人気のない草原へ逃げ込み、そのままそこで一晩野宿することになります。すると翌朝、何とも言えない雰囲気と共にベイリーの目の前に現れるバード(フランツ・ロゴフスキ)と名乗る男性。警戒しつつも何故か抗えずにバードに引き込まれ、話を聞くうちに彼に協力することを約束するベイリー。そこから“ベイリー&バード”の友情の物語が始まります。
12歳のベイリーは環境や身体の変化など、少女から女性に変わりつつある年頃。自我も強くなって父の横暴に抵抗しつつも、目配りが出来て自分なりの倫理観も持っており、何より自分の家族を愛しています。また、独りでいるときは鳥や動物、虫など生き物に興味を惹かれ、気になればスマホで動画を撮ることが趣味。そんなベイリーだからこそ出会うこととなるバードは、誰にでも見える存在でありつつ、誰の目にも止まらない存在で、ベイリー自身バードに「言い表しようのない何か」を感じています。
そして二人の出会いからの別れるまでの僅か4日間は、ベイリーが精神的にも大人への一歩を踏み出すきっかけとなるかけがえのない時間。終盤のシーンは涙を誘われ、ベイリーの人生に幸多からんことを願って温かい気持ちになれます。拍手を送りたくなる一本。いやぁ、やっぱ観て良かったわ。
優しいバードと出会った孤独な少女の成長
巡って巡るめくるめく英国の奇譚・・・でもないか。
バリー・コーガンの最新の姿を観れてよかったとする
何となくバリーコーガンが出ていれば傑作なんだったりするんじゃないかと思って見たのだけどそんなことはなかった。
イギリスの世情から浮かび上がる閉塞感とダークネスなムードとカルチャーに、意外とまんざらでもなく『君たちはどう生きるか』とでもいうように翼を持った謎のイマジナリーフレンドのような男が現れる。
バードというと自分たち世代は『バーディ』というイギリスのアラン・パーカーの傑作青春映画があったのでどうも期待したりしてしまったが、むしろそれをもう一度見たくなった。
ただ、バリー・コーガンのイカれ父っぷりはよかった。あと親子キックボードの疾走感か。
伝書烏
まともとはいえない環境下で暮らす12歳の少女の前に、家族を捜しているという様子のおかしな「バード」と名乗る男が現れ交流する話。
カエルを持った電動キックボード野郎とニケツして、自宅と思しき所に着いたら結婚式がーと始まって行く。
登場人物の背景も関係性もわからないまま話しが展開していきどういうこと?父親って?と思っていたら、更に登場人物が増えて非常に判り難い序盤。
やさぐれベイリーの前にバードが現れメモに記された場所を聞かれて…。
てか、本当の父親なんですね。
子供は学校に行っている様子がみえないし、大人は誰もまともに仕事してる様にみえないし、一応血縁への最低限の家族愛みたいなものは感じるけれど、本当に愛があるならまともな仕事しろやと感じる自分には、悪い話しじゃないんだけどね…というぐらいにしか感じられなかった。
そして「バード」要ります?
しかもそんなオチって…(´・ω・`)
という感じ。
途中まではやや後悔気味で、 労働階級のイギリス英語の勉強になったか...
途中まではやや後悔気味で、
労働階級のイギリス英語の勉強になったからいいかなって程度だったけど
見終わったらなんだか、すっごく良い
後半でガンガン来るので、
よく分からないともし思っても、
それまで待ってて欲しい
子供に親は選べない
親ガチャって確実にある。
厳格で四角四面に生真面目みたいな父親も嫌だけど、
不真面目や無責任を自由と履き違えてるDQNな父親もイヤぁ😆
劣悪と迄は云えないモノの、底辺近い環境で養育されてる13才のヒロインが、何の因果か偶然か…偶々知り合った不思議な雰囲気の青年との4日間の出来事を経て少し大人になる噺。
つか、少し『動物界』味のある展開…表現?は、隠喩や暗喩だったのかな?🤔
それとも若さ故の柔軟さで、そんな事も多分ある!的なノリと勢いだったのか?
虫にしろ動物にしろ…羽持ちの飛べる存在に強く惹かれているヒロイン…
でも、彼女もまた14才くらいで近所の不良…これまた15〜6の未成年と、デキ婚しそうって示唆が表れていて、
結局…ガキがガキを産んで、
底辺から脱却出来ない悪循環の輪廻…謂わば鳥籠からは逃れられない可能性が多分にあって、モヤモヤしたのは否めません🙇♂️
見事!音楽と動物の使い方が上手い!
賛否は分かれそうな作品。少女ベイリーは複雑な家庭環境だが、シングルファーザー父バグと謎の男バードのサポートで成長する青春物語。フランツ・ロゴフスキー・バリー・コーガン、ニキヤ・アダムスの演技が素晴らしかった。一番評価したいのは音楽と動物の使い方。この使い方が上手い!バリー・コーガンはイニシェリン島の精霊以来2回目だが、相変わらず明るいし、ユーモアがある演技を見せてくれた。見事。
やはりカンヌが絡むと
キャスティングが好みで見たら・・・
楽しみ俳優の二人、バリー・コーガンとフランツ・ロゴフスキが映画の中で関わる箇所がゼロでびっくり!でもよかった!主役の女の子ベイリー役含めてキャスティングがとてもいい映画だった。そして映像が素晴らしい!スマホサイズ、手持ちカメラ、自然光。自分が全くもって疎い分野なので良さやかっこよさやオマージュが全然わからなかったのが音楽!本当に残念。でも想像を超えた映画だった!ここ最近、女性監督の映画が素晴らしい。いい映画だな、尖っているな、と思うと監督が女性であることに気がつく。
鳥が怖いので、BIRDというタイトルに怖じ気づいたが今更ヒッチコックではない!と信じて大丈夫だった。12才のベイリーは孤独といっていい。スマホが彼女にとって大事。自分を守るためでもあるけれど、鳥や虫やいろんな動物を動画で映す。場合によっては人間も映す。特に兄(まだ14才)のハンターとその友達が、DV父親から暴力を振るわれている子ども達のための自警団を結成してから、そういうハラスメント男の様子も映す。ベイリーは動画をインスタとかYouTubeにあげない。自分のベッドの壁に空飛ぶ鳥の映像を写して見てる。鳥を愛するベイリーは鳥に助けられ愛と優しさを知ることになる。
ベイリーの父親バグはバリー・コーガンが演じる。この人が父親役~!と思ったが、娘のベイリーを大事にするいいパパだ。全身タトゥー、14才で子どもが生まれ一度離婚して、これから二度目の結婚をする、30才になるかならないかだ。娘の方がよほど大人、いつまでたっても子どもでガキである父親なのだ。それをコーガンが演じることで、説得力が生まれ、キュートで、友達たくさんいて、仕事してなくて、いい奴だ。バリー・コーガン、上手いなあ。
主人公のベイリーが素晴らしい。目がどんどん変わっていく。大人になる、戸惑う、空を見上げる。監督はよくこんな女の子を見つけたものだ!アンドレア・アーノルド監督の映画に出会えて、間に合ってよかった!彼女の映画はショーン・ベイカー監督の映画と通じる。貧しい、見捨てられてる、でも幸せに生きる方法を知っている子ども達と若い人達の世界。
才気溢れる作品だが、違和感が拭えない
才気は感じるがセンスを感じられない。
閉塞感、虚無感、苛立ちがヒシヒシと伝わってくる作品世界が少女ベイリーを通じてストレートに描かれていて、ズシッと引き込まれる。
ただ、ぶつ切り感が強く構成やバランスの悪さを感じ居心地、見心地が悪い。
象徴的に挿し込まれる鳥が飛ぶシーンなどは、あまりにも使い方に工夫が無く下手過ぎるし、やたらとカットバックでインサートされる過去シーンはただただ映画のリズムを悪くしているだけでセンスを感じない。
致命的に違和感を感じるのは、謎の男バードの扱い方だ。
タイトルバックだからといって、やたら強調する必要はないが、あまりに中途半端な描き方で、この殺伐とした世界の何かにも、思春期の少女が感じる何かにもなり得ていない。
ただのアクセントとして作品に放り込まれたキャラクターにしか思えないのが残念でしかない。
詩とファンタジーとクズな生活
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