劇場公開日 2025年9月5日

「最初は、なぜこんな映画を観なければいけないのかと思った」バード ここから羽ばたく 詠み人知らずさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 最初は、なぜこんな映画を観なければいけないのかと思った

2025年9月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主人公の少女12歳のベイリーに扮するニキヤ・アダムズは大柄で、14歳どころか17歳位にもみえる。既にある程度、固まっているようで、ロンドンの下町言葉とも違うぶっきらぼうな英語を話す。アフリカからの移民系を思わせる風貌、シングル・ファーザー(バリー・コーガン)、異母兄と一緒に、郊外の労働者向けの集合住宅で暮らすが、彼女は彼らとも、今は別に暮らす母や異父姉妹の誰とも似ていない。毎日違う服を着て、バックやリュックを持って外出し、それが映画に出るための条件であったかのように、一瞬だけ楽しそうにする。学校に通っている様子も、もちろん働きに出ているわけでもない。食事や洗濯のお世話を誰がしているのかも不明。お金はないようだが。

ただ、バードと呼ばれる、明らかにヨーロッパ系の男(フランツ・ロゴフスキ)が出てきて、彼は「天使」だなと思った時、全体が寓話であると悟った。
ストーリーを述べるほどではないが、まだ20歳台の父親の再婚までの数日間と、バードが生き別れした父親と再会するところが描かれる。

少なくともブレグジットの頃まで、アフリカ系等の難民の最終的な行き先が英国であることは、いろいろな映画で見てきた。英国には、彼らを受け入れるだけの度量と制度や施設があるのだろう。たとえ最初は、どうにもならないにしても、潜在的な力を持つベイリーのような娘が、バードのような天使と出会った時、蘇って途轍もない力を得てゆく。オリンピックの時見るように、今や英国は、明らかな多民族国家である。

ベルギーや、パリ郊外を扱う映画で出てくる、難民系だけれど、どこか優美さを持つところが、この映画でも垣間見られると、もっとよかったが、それは無い物ねだりということか。

詠み人知らず