バード ここから羽ばたくのレビュー・感想・評価
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やるせない日常だけど
どうにもならない、やるせない日常。
そのなかにある、愛に気づくのは難しい。
でも、そこに愛があるんだ。
そこには愛があったんだ。
そのことにジワジワ近づいていく感じが、なんとも心地よい。
不機嫌が、ちょっと笑顔に変化するさまか、なんとも言えない。
う〜ん、時間とともに染みてくるね〜
導き?
そこに愛があったとしても
なんとかなる。
レイトショーで観ましたが序盤は音楽が鳴りっぱなしでアッパーな流れにずっと惹き込まれていました。マンチェスターが舞台なのか。貧困とか家庭環境を扱った映画でしたが序盤のドリーミングな映像、音楽がとにかく良かったと思います。最後に流れた曲がやられました。リアルすぎるだろ、拒絶するほどに。
ここから羽ばたく
稀有な映画
最初は、なぜこんな映画を観なければいけないのかと思った
主人公の少女12歳のベイリーに扮するニキヤ・アダムズは大柄で、14歳どころか17歳位にもみえる。既にある程度、固まっているようで、ロンドンの下町言葉とも違うぶっきらぼうな英語を話す。アフリカからの移民系を思わせる風貌、シングル・ファーザー(バリー・コーガン)、異母兄と一緒に、郊外の労働者向けの集合住宅で暮らすが、彼女は彼らとも、今は別に暮らす母や異父姉妹の誰とも似ていない。毎日違う服を着て、バックやリュックを持って外出し、それが映画に出るための条件であったかのように、一瞬だけ楽しそうにする。学校に通っている様子も、もちろん働きに出ているわけでもない。食事や洗濯のお世話を誰がしているのかも不明。お金はないようだが。
ただ、バードと呼ばれる、明らかにヨーロッパ系の男(フランツ・ロゴフスキ)が出てきて、彼は「天使」だなと思った時、全体が寓話であると悟った。
ストーリーを述べるほどではないが、まだ20歳台の父親の再婚までの数日間と、バードが生き別れした父親と再会するところが描かれる。
少なくともブレグジットの頃まで、アフリカ系等の難民の最終的な行き先が英国であることは、いろいろな映画で見てきた。英国には、彼らを受け入れるだけの度量と制度や施設があるのだろう。たとえ最初は、どうにもならないにしても、潜在的な力を持つベイリーのような娘が、バードのような天使と出会った時、蘇って途轍もない力を得てゆく。オリンピックの時見るように、今や英国は、明らかな多民族国家である。
ベルギーや、パリ郊外を扱う映画で出てくる、難民系だけれど、どこか優美さを持つところが、この映画でも垣間見られると、もっとよかったが、それは無い物ねだりということか。
あとからジワジワ…
そして、ろくでなしどもはイエローを大合唱する
「バードここから羽ばたく」貧困とどうしようもない大人たち。その行き詰まりの世界で俯いて生きてた少女がバードと名乗るへんてこりんな人物との出会いから変わっていく姿を素晴らしい映像とスリリングなストーリーで描いたアンドレア・アーノルドの傑作。
アンドレア・アーノルドの視線はDV野郎を除いて、どうしようもない大人たちにも暖かく、貧困を生きる市井の人たちを肯定する。そのどうしょうもない大人を演じる、主人公の父役のバリーコーガンが秀逸でした、さすが。
一儲けをしようとする、バリーコーガンたちがガマガエルに酷い音楽を聴かせれば、金になるドラッグの内分泌液が出ると(バカ)、コールドプレイ「イエロー」を大音量でかけながら、大合唱するシーンが最高。お前ら大好きなんじゃん。
Yellow
日本の貧困事情とはまた異なるイギリスの貧困事情が描かれており、そんな中で暮らす少女をはじめとした周りの人物、そして突然現れたバードという男との交流がメインストーリーになっており、個人的には全体的なやかましさがマイナスにはなってしまいましたが、刺さる人にはしっかり刺さるんだろうなと思いました。
子供たちは学校に行かず、大人たちは働かず、という不思議な環境下で暮らす登場人物たちのありのままが描かれており、早い段階での出産や育児なんかもあったりと、非日常がこれでもかってくらい味わえます。
父親がどう転がしてもダメクソ親父で、時折お前のこと分かってるで?という優しげな顔を見せたりもするんですが、それを覆い隠すようなカスみたいな行動ばかりなので、そこへの嫌悪感が最後まで拭えず、なんか良い感じにまとめたラストも個人的には綺麗事にしすぎだろう…と怪訝な表情で観終える事になりました。
父親のセリフも個人的にはクソさを加速させるものになっており、決してコイツを善として扱っちゃダメだろうというモヤモヤが増しました。
バードとの出会いからグッとストーリーは動き出すんですが、ツギハギのようにストーリーが進んでいき、基本的に誰かしらが怒っているのでハチャメチャですし気分は良くないといった作りなのでモヤモヤします。
その点マイペースに歩いてくれるバードの存在がどんどん有難くなっていきました。
バードが名の通りの姿に変化する感じは「動物界」を思い出させるようなシーンでしたが、あちらの作品ほどカタルシスを感じるものでは無かったです。
ファンタジーさも序盤から中盤にかけて地に足ついたドロドロさを見せていたので悪い方にギャップが働いているようでした。
周りでの出来事を眺め体験していくという成長物語のはずではあるんですが、主人公含め成長を感じさせる要素も弱かったかなーと思いました。
暴力描写もガンガン映されるので苦手な方は要注意です。
作品内で流れる音楽は抜群に素晴らしく、監督の選曲の良さが光り輝いていました。
Coldplayの「Yellow」を全員で歌いながらドラッグカエルの体液を呼び起こすとかいう化学反応起きまくりのシーンは印象的でした。
カメラワークは良く言えば個性全開、悪く言えば見辛くてしゃーないものになっていました。
ざらついた映像やiPhone視点だったりと色々やってるんですが、観やすさなんて二の次と言わんばかりのグワングワンしたカメラワークなのでちと不親切だなぁと思ってしまいました。
まぁ好みでは無かったですが、要所要所に良い意味で気になるところはあったので、監督の次回作以降でまたどうなるのかというところは気になります。
鑑賞日 9/10
鑑賞時間 15:35〜17:35
生き物たちの詩的で自然な世界
バリー・コーガンがどんな演技をしてるのか気になって観たが、危ういシ...
バリー・コーガンがどんな演技をしてるのか気になって観たが、危ういシングルファザーを安定の好演
そんな父を持つ12歳の少女が厳しい環境の中をたくましく生きていくのだけど、現実と幻想が入り混じった不思議な話だった
繊細な映像美もあるけど、手振れが激しく観てるのが厳しいところもあった
階級社会のリアルと少女の夢
イギリスの労働者階級・貧困家庭の現実と神話的な幻想が交錯する不思議な余韻を残す映画だった。
貧困を描いた映画といえば、日本なら(作風はずいぶんちがうけれど)「万引き家族」「あんのこと」とかだろうか。この映画が撮られたイギリスだともっと色々な映画を思い出す。ケン・ローチとか「トレインスポッティング」とかが代表だろうか。イギリスは産業革命以来の社会階級が固定化されがちな社会でもあるから、伝統的に描かれる人々の物語なのかもしれない。日本だと家族の愛情の物語が一つの典型だけれど、イギリスの階級社会というのがこうした映画の系譜を作っているのだろうか。
舞台はイギリス、ロンドンの郊外。落書きだらけのアパートや低層アパート、街中に未開発の空き地も多数、そこに住む人には無縁のように街外れを横切る高速道路…、郊外の労働者階級の住む街である。アーノルド監督の出身地らしく、彼女の子供時代の思い出がかなり反映されているようだ。
映画のストーリーに分かりにくさはないのだが、手持ちの16ミリと登場人物が撮影した安いスマホの粗い画像で、最初はちょっと見にくさを感じた。物語では、現実ではあり得ない神話的、あるいは夢のような描写が入ってくるから、そこで少し混乱する。
しかし、それも含めて見終わってみると、ざらざらとした映像のせいか、現実の場面はリアルなノンフィクションのように感じるし、同時に夢のような描写も主観的で内面的なリアルなのだと納得させられる。おそらく、この監督独特の持ち味で、何作か見ればもっと慣れていくのだろう。
主人公は12歳の少女ベイリー。学校に行ってる描写もなく、まだ20代の父親も働いている描写はないが、これは演出上の省略であると同時に、その背後にはイギリスの実際の教育格差や失業のリアリティでもある。日本を含む先進諸国と同様、イギリスでも無職やその日暮らしの労働者、不登校も少なくないようだから、そうした現状を反映した設定なのだろう。
父親はコミュニケーションが苦手で、暴力の発作を抑えられず、しかし同時に家族や子供を愛している。警察や行政に頼るという発想はなく、またこの映画の中ではそうした制度は存在すらしていないようでもある。
ベイリーは父親が14歳の時の、最初の子供で、そこにその後の子供達と再婚相手の連れ子など、多くの子どもたちが兄弟として加わって、肩を寄せ合うように助け合って生きている。
学校に通っている子供は遠い存在で、地域のグレた少年たちと共に荒れた生活を送っている。ベイリーはすごくタフな現実を生きていて、それを救ってくれるのがスマホで取る写真。そして、空を飛ぶ鳥を眺めることだ。
そして、野原でうとうと眠ってしてしまい迎えた朝、そこで会うのがバードという名前の不思議な青年だ。父親を探しているという彼と共に、ベイリーは彼の父親を探し始めるのだが、見終わってみると、バードは本当に実在したのだろうか、彼の存在自体がベイリーのファンタジーだったのではないかと思ってしまう。どこからどこまでがリアルで、どこが空想なのかの境界が曖昧で、それがこの映画のわかりにくさでもあるし、でもずっと考えされられる魅力にもなっていると思う。
社会の底辺の厳しい現実を、時に激しくぶつかり合いながらも、肩を寄せ合うように生きる中で、思い出に残るような美しい時間も数々描かれる。現実も、人間関係も、自分自身も思うようにならないけれど、それを引き受けて生きていく人の弱さと強さの両方を描いた映画であった。
このリアルで同時に神話的な物語は、僕の心の中にも強い印象を残して、忘れられない一本になりそうである。
見たことがない映画。自然の造詣が美しく、この子が女の子ということは...
見たことがない映画。自然の造詣が美しく、この子が女の子ということは用をたそうとしたときに分かったのだけど、子どもっぽい父、兄、父の新しい相手といい、ほほ頼るもののない世界で、生理を迎え、バードと出会うことで彼女は大人になっていく。
それにしてもDVはむごい。
イギリスの階層別の住宅や地域も見える。
洗練された印象はないが、心に残る現代のおとぎ話
UKの最下層労働者階級の暮らしぶりが活写されます。貧困、子沢山、不衛生、虐待、閉塞感。
ちなみに長男ハンターの彼女の住まいは少し上層なのか、界隈にゴミ落ちてなかったですね。
手持ちカメラで臨場感が倍増。ただしブレも多いので、内容も含めて少し酔いそう。
ベイリーは父親の新しい結婚相手を好いてなかったけど、初潮を通じて何となくシスターフッドができるところがいい感じです。兄やまして父は出番ないですからね。この4日間でベイリーは心身ともにとても成長しました。
フランツ・ロゴフスキの神話に出てきそうなひょうひょうとした表情、まさに自由な鳥人。バリー・コーガンはいつも特異なキャラの若者役が多かったけど、今回父親役とは(そしておじいちゃんにも)!
でも本作この二人が絡むシーンがないんですよ!観たかったな独vsアイルランドの演技対決。いずれにしても只者ではない二人です。
人はどんな環境でもささやかな幸せを見つけることができる
イギリスの田舎街に暮らす12歳の少女ベイリーはシングル・ファーザーの父親と2歳年上の兄と一緒に暮らしていたが、何の前触れもなく父親がいきなり再婚相手を連れてきて、来週結婚式を挙げると告げられてショックを受ける。そんなとき、ベイリーは牧場で風変わりなバードと名乗る男と出会う。初めは警戒するものの、その雰囲気が気になって話をするうちに、バードは自分の両親を探していることを知り、手伝うことにしたのだが……。
貧しい田舎街の最底辺の人々の暮らしでは、生活の一部に暴力が組み込まれているかのようにDVは当たり前、結婚と離婚を繰り返し、「貧乏人の子沢山」と言われるように異父母兄弟が何人もいる。
でも、見ているだけでも心苦しくなってくるそんな暮らしの中でも、人はささやかな幸せを見出すことができる、ということを伝えたいんだろうな。
そして、いかにもヨーロッパらしいなと思ったのが、風来坊が何処からかやって来て希望をもたらして去っていくというモチーフ。それは現実かも知れないし、希望的感想に過ぎないのかも知れない。しかし、一縷の望みを何かに見出すことで現実に押し潰されずに何とか生きている、という人も少なくないのだろう。
ベイリーが撮ったスマホの映像なども多用しながら構成されるカメラワークでモキュメンタリー的なタッチになっていることも、現実感を増し、我々の世界と地続きにある日常生活を見せられている気分にさせることに寄与しているのだろう。
全49件中、1~20件目を表示
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